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EXPAREL(長時間持続型局所麻酔薬)について

今回はExparelについて書いてみたいと思います。

このExparelですが、アメリカ口腔外科専門医のオフィスに勤務するようになって初めて歯科臨床で扱う経験をしました。

まず、そもそも

「Exparelってなに?」

という話ですが、これは

「アミド型局所麻酔薬であるビプバカインを主成分とした長時間持続型麻酔薬」

です。

術後すぐに軟組織に注入する方法で使用されます。

特殊な二重膜構造を持ち、長時間かけて持続的に麻酔薬を放出するという特殊な性質を持つ製品で、その効果は最大で3日程度も持続します。

外科手術後の炎症は術後3日までの不快感が最も強いことから、このExparelを使用することでオピオイド系鎮痛剤の使用を回避できるという目的でアメリカで開発された経緯があります。

実際の臨床では患者様に

Long-lasting numbing medication

という表現で説明がなされています。

私の勤務する病院での価格は、1症例につき250ドル程度になります。

アメリカでの仕入れ値は1瓶10mlで、かつ10本入りの箱で2,000ドルなので、1瓶あたり200ドルになります。

症例によって術野の広さは異なるので一概には言えませんが、平均して3ml程度使用するとしたら、まぁ、妥当な価格設定だと思います。

アメリカではオピオイド濫用による死亡者数が年々増加しており大きな社会問題となっています。
これには"epidemic"という表現が用いられているほどで、アメリカ社会に蔓延するオピオイド汚染の深刻さを感じます。

このテーマについては次回以降に改めて書いてみたいとは思っていますが、とりあえず臨床では

「オピオイド系鎮痛剤の使用を回避しながら痛みのコントロールが可能です。」

という説明をすると、8割方の患者様が使用を希望されます。

このあたりも日本とは大きく違う点だと感じています。

この記事を書くにあたってExparelの日本での使用状況について調べてみたところ、まだ日本では未認可で医師の判断による個人輸入のみ可能であるとのことでした。

そしてその価格はなんと!

同じ1箱で

「80万円!!!」

10ml入りの1瓶が8万円という計算になります。
だとしたら、1症例あたり3ml使用するとして、原価から考えると最低6万円程度はチャージしないと利益が出ないことになるのか、、、。

関税の料金等もあるので一概には言えませんが、こんなところにも円安の影響がじわじわと現れてきているのかな、とふと考えてしまいました。

今回はこれで終わりです。

お読みいただきありがとうございました。



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