見出し画像

役割配分、大丈夫ですか?~人生の役割から考えるキャリア~


「人は生涯、変容を続ける生き物だ」



自分は一体、何者なのか。


現在に至るまで、そう問うた回数は計り知れない。

そして今後も、繰り返し考え続けるのであろう。

アイデンティティは

一度確立して終わるものではなく、
拡散と統合を繰り返すのだ。



自分自身について、うまく捉えられなくなる現象
「※アイデンティティ・クライシス」

※アイデンティティを喪失した状態のこと。
人が自己の役割、存在意義、目標などを見いだせず混乱を生じたり、心理的な危機に陥ったりすることを伴う。


一般的に思春期〜成人にかけて頻発する
若者特有の課題だと思われてきた。

だがむしろ、自我が成熟し終わったと思われる30〜40代において、構造的に発生する"中年期に不可避のキャリア課題"でもあることが分かっているそうだ。

大人が”自分"を見失う理由。
その原因は、生活、職場や家庭における役割が複層的になって、自分を構成する変数が増えるからでしょう。

中年期以降アイデンティティをうまく再統合できないと「仕事か、家庭か」「子育てか介護か」「マネージャーか、プレイヤーか」のような
二者択一的な思考に陥り、アイデンティティ難民に陥りがちになってしまいます。


私たちが多種多様な役割を果たし、生涯に渡り満たされた仕事実感・生活実感を得られるためのヒントを、理論を用いながらともに考えていければ幸いです。

ライフキャリアレインボーとは


D.E.スーパーは、「キャリアとは生涯過程を通して、ある人によって演じられる諸役割(ライフロール)の組み合わせと連続」と述べました。

出典元『文部科学省』第1章
キャリア教育とは何か


従来のキャリアプランニングは「労働者」としての視点のみでしたが、
労働者に限定せず、人生において果たす様々な役割の将来設計を組み合わせた初の概念ということで、当時は画期的な理論に違いなかったと思案します。

ライフキャリアレインボーは、5つのライフステージと8種類のライフロールで表されます。


①5つのライフステージ

1.成長段階(0歳~14歳)
家庭や学校での経験を通して、「自分はどのような人なのか」を考えたり、働く意味を理解したり、仕事への関心が高まったりする時期。

2.模索段階(15歳~24歳)
学校生活やアルバイト、就職、余暇活動などで試行錯誤をすることを通して、自分自身の興味や関心を模索し、特定の職業に絞り込んでいく時期

3.確立段階(25歳~44歳)
前半は、実際に仕事をする中で自分の適性や能力について試行錯誤を繰り返す時期。後半は、キャリアビジョンが明確になり、自分の適性や能力を生かしながら専門性を高め、キャリアを確立する時期。

4.維持段階(45歳~64歳)
仕事での役割や地位は確立され、安定志向が高まります。今までのキャリアを維持することや、さらなるスキルや知識を習得する時期だと言われています。この時期の最後には引退後のセカンドライフの計画を立て始めます。

5.解放段階(64歳~)
精神的・肉体的な衰えから職業活動から引退する時期。地域活動や趣味を楽しみ、家族との時間を過ごすなど、セカンドライフを充実させることが新たな課題。


②8つの役割(ライフロール)

「ライフロール」は、私たちが人生において担っている「役割」のことです。

スーパーはこの役割を以下の8つ、定義しています。

 ●子供
  親との関係における自分
 ●学生
  学ぶ立場にいるとき
 ●余暇人
  趣味や遊びを楽しむ時間
 ●市民
  社会を構成する一員として社会に貢献する活動
 ●労働者
  本業・副業・アルバイトを含む仕事をしている期間
 ●家庭人
  親元を離れたときからはじまる役割
 ●配偶者
  夫、妻としての役割(事実婚も含む)
 ●親
  自身の子どもが生まれたときからはじまる役割


これらの役割を全部を経験する人もいれば、
一部だけ経験する人、これ以外の役割を経験する人など様々。
役割は重複したり、比重が増えたり、状況や環境に応じて変化していきますが、人はそれぞれのライフロールを上手に配分しながら人生を過ごします。

多くの方は社会に出ると、職業人の割合が大部分を占めますが、その役割を演じてばかりで他の役割を疎かにすると、不幸を招くケースもあるわけです。。。


今後どの役割にどれだけの時間を投じるか、
全体としての調和を考えることが求められますね!

ワークの記入方法


前述した通り「ライフステージ」と「ライフロール」の二つの軸でライフキャリアを考えます。
ワークシートを活用すると思考が明快になります📝

出典元:厚生労働省『平成 29 年度労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業』ジョブ・カード様式1作成ワークシート


①現状を把握する

まず現状を把握しましょう。


1.それぞれの役割別に、自分が今どのような活動をしているか具体的に記入します。

2.各役割について、どれくらい時間やエネルギーを使っているかを考え、合計で100%になるように振り分けます。

======================
<30歳女性(会社員、既婚、子ども一人)の例>

①職業人 30%  会社で働く
②親   30% 子どもを養育する
③家庭人 20%  家事全般を行う
④配偶者 10%  妻としての役割を果たす
④子ども 5%  実家に帰省して両親と会う
⑤余暇人 3%   休日に友人とランチする
⑥市民  2%  子どものPTA活動に参加する

======================

②過去を振り返る

次に過去を振り返ります。

例示のシートにはありませんが、
現在の左に過去何年前かの列を追加すると良いでしょう。

追加したら現状把握と同様、各役割別に
「1.具体的な活動」「2.時間やエネルギーの内訳」がわかるように記載します。


③将来を考える

最後に将来について考えます。

将来想定される役割やありたい姿から理想的な姿を考え、具体的に記入します。可能であれば達成時期は明確にしましょう。

それまでの具体的なプランが立てやすくなります。



人は生涯、役割を変えながら発達し続ける。


だからこそ、今の自分を見失わないように
自己の役割、存在意義、目標を定期的にモニタリングし、数字で可視化することも大切ですし
同時に将来のありたい姿から逆算して、軌道修正していくこと
が必要なのです。


長い人生を楽しく意義あるものとするために、

自分自身の手で、思うように彩溢れるライフキャリアレインボーを描いてみてはいかがでしょうか?



あなたの「生涯の虹(レインボー)」にエールを!

いいなと思ったら応援しよう!