私のおじいちゃん

このところ毎週末実家に帰っている。

実家には電車で1時間程度。

前までは1ヶ月に1回程度だったのだけど、最近はよく帰る。

理由は、1つ。

祖父がファイナルステージに進んだからである。

何か大病があるわけではない。

でももうめっきり食べない。全く食べないのだ。

昔からお酒が大好きだった祖父の、最近の唯一の栄養源は、氷結のシチリアレモン味。

こんな状況になっても酒を飲んでいるのがなんとも祖父らしい。水もダメ、お茶もダメ、氷結なら良いと言った具合で、氷結をちびちびちびちび飲んでいる。


「延命はしないでくれ」それだけが祖父の希望で、

それを守るべく、だけど痛い思い、苦しい思い、寂しい思いはさせないように家族で(主に母だけれど)祖父の家に行っている。


祖父は、海外を飛び回る仕事をしており、55くらいに退職。

そこから大学に通ったり、図書館に行ったり、カルチャー教室に行ったり、ジムに通ったり、

ゴルフに行ったり、旅行に行ったり、とにかくびっくりするほどアクティブでかっこよかった。

好きな時間に酒を飲み、好きな勉強をして、体を鍛える。

こんなに自分を律して頑張れる身内がいると思うだけで、私の自慢だった。

それがおじいちゃんということも私の自慢だった。

元気が無くなったのは昨年末くらいから。


物よりも心の豊かさが大事、お金の使い方は体験と教育に使うべき、

そんな考えを持っている人で、祖父がそれを直接伝えてきたというよりは

言葉や態度でそれを家族全員が知っている。

だからこそ「おじいちゃんは墓は要らないと思う。」

「おじいちゃんはこういうのを求めていないと思う。」というのを

おじいちゃんの周りの人たち皆が共通項として知っている。

無口で不器用で、他人からは怖がれがちな祖父だけど、

子供たち孫たちを愛情深く育ててくれたことは泣きそうなほど伝わっている。


最近、祖父の家から帰って来た後はいつも泣いてしまう。

というのも、祖父の家では元気に努めるようにしているけれど、

家族皆が泣きそうなのをがまんしているのがひしひし伝わる。

みんなおじいちゃんを笑かそうと、
どうにか楽しい雰囲気に持っていくのだけど明日にはおじいちゃんがいないかもしれないという悲しみと切なさでなんだか笑いながら泣いてしまうになる。

ふと気を緩めると泣きそうになるのでトイレに行く。
しれっと泣いてしれっと涙を拭うときもある。

几帳面で真面目な祖父は毎日手帳をつけていたので、

もう何にも予定なんてないのに、病院の先生が来てくれる日を

逐一手帳に書いていることとか、

なかなかベッドから起きれないのだけど、

私たちが遊びにいくとがんばって起きて、

おしゃべりしたりしてくれるとことか

最後に手を触るとぎゅっと握手をして「またきなね」と言うこととか、

そういうおじいちゃんらしさを見ると、ぐっと涙が出そうになる。

そして書いている今も涙が出てくる。


そういう時にいつも思い出すのは、

祖父がいつも言っていた「ぽっくり逝きたい。もうこの世に未練はない」と言っていたこと。

その言葉を思い出すだけで「でもおじいちゃんにとってはこれで良いんだ」

と思って気持ちが幾分楽になる。

ここ一年かけてゆっくりゆっくり弱ってきた祖父を見て、
ここ1ヶ月で急激に弱ってきた祖父を見て、
覚悟はできていたつもりなのに、
実際にいなくなるのだと思うと心が張り裂けそうでたまらない。


おじいちゃんの、ファイナルステージ、
どうかどうかおじいちゃんが痛い思い、
苦しい思い、悲しい思いをしませんように。
したとしても、最小限で済みますように。

私はそれをただただ願うこと、
会える時になるべく会うことしかできないけれど
それが最後のおじい孝行だと思う。


上記を書いたのがついこの前。
今日6/17に、祖父が亡くなりました。

びっくりするほど悲しくて、
胸は引きちぎられそうだし、
泣きたくなくても涙が出てきて大変だったけど、

今落ち着いて一息つくと、
変な言い方だけど
存在していない方がよりおじいちゃんを近くに感じるなと思う。

おじいちゃんはもともと形あるものを
信じていなかったから、だからかもしれないけれどおじいちゃんマインドが自分にあるから大丈夫と思えている。

これからも思い出して沢山泣くだろうし
会いたいと思う時も沢山あるだろうけれど
亡くなったおじいちゃんをみた瞬間に
「もうこの体にはおじいちゃんはいないな」と思った。

沢山お喋りして沢山優しくしてくれてありがとう。
次会ったらまた美味しいもの沢山食べようね。
旅行の思い出話も沢山しようね。

おじいちゃんが、
時々思い出してね、と言っていた。
思い出すから大丈夫よ。
また会えるのを楽しみにしています。

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