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酸素ボンベのお客様

数年前に来店された80歳のご主人様と75歳の奥様の仲良しご夫婦。

ご主人様の加入してた保険が満期で終わってしまい
医療保険だけでも少しかけようかなと来店。

今の保険は三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)だと入院は日数の制限がなくて無制限なんですよと言うと

『えらい気前のいい世の中になったな!』
とご主人様は笑っておられた。

1年後の初夏。

奥様から連絡があり
『廣瀬さん、主人が肺がんになったの。
歳も歳だけど出来る治療はしてみようってなったの。』

ご高齢だし進行は遅いのかな
治療して負担かからないかな
でもあんなに生命力溢れる方だし大丈夫かな…と陰ながら心配と応援をしていた。

1ヶ月後
退院し自宅療養しながら通院治療になったと
聞きホッとしていた。

3ヶ月後
また奥様から連絡があり
『がんの治療は良好なのにそれが原因なのか次は心不全なっちゃってまた入院したの!』

1つの病気を治す際、併発して別の病気になることもあるので心配していたけど
大丈夫かなぁとまたも不安が募る日々。

年末の挨拶も兼ねて奥様に連絡してみると
ご主人様が電話口に出られて

『年末年始、一時帰宅出来ることになったんだよ!わし、酸素ボンベつけて廣瀬さんに会いに行こうかな!
いいか?酸素ボンベと一緒でも!』

さすがに笑ってしまいました。

『お会いしたいし、そのお姿も見たいですけど、雪も降ってますし、想像だけで大変そうなので酸素ボンベなく動けるようになったら会いに来てください。』とお伝えし、

『そうやな!すっ転んだら大変やからな!』
と笑い合って年を越した。

年を越してからは
一時帰宅も出来なくなり
入院は100日を越えて
定期的に保険金請求の確認を奥様としていた。

そろそろ請求の確認かな?と思っていた頃に
奥様から連絡があり

『廣瀬さーーん!昨日主人亡くなっちゃった、亡くなっちゃったの。
覚悟してたけど、いなくなっちゃった。
もういなくなっちゃったの。』

この連絡は本当に毎回心がえぐられます。
奥様は泣きながら言葉を続けられた。

『こないだもね、もう春だし酸素ボンベつきでも会いに行こうかなって言ってたのに急に悪くなっちゃった。
あのね、最初にがんとか心臓の病気だとずっと入院しても保険金出るんですよって教えてくれたでしょ。
あのお陰でこんなに長く入院してたのにずっとお金貰えたの。
本当に助かったの。
それを2人で良かったね、ありがたいねって話してて、主人本当に感謝してたの。
ありがとうね。』

その言葉に涙が止まらなくて
電話口で頷くしか出来なくて
ありがとうを言って貰えることにただただ感謝でした。

酸素ボンベでも元気に動こうとしたお客様の精神力は本当に尊敬する強さでした。

二人三脚で頑張ってこられたご夫婦の愛も素敵だし
大変な中でも感謝の心を忘れない姿勢
心に刻ませて頂きました。

後にも先にも酸素ボンベつきで会いに来こうとしてくれた方はあのお客様だけです。

孫のように可愛がってくれて

『女性1人で仕事して子育てしてすごいね、頑張れな!』

と応援してくれて本当にありがとうございました!

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