【後編】プロサッカーガチ勢の友人が応援しているクラブの試合を初めて観戦した話
※この記事は、「プロサッカーガチ勢の友人と初めてプロサッカーを観戦した話」の続編となります。
国立での初観戦から2日後の10月6日・夜。
実はどうしても現地で観たいサッカーの試合が2日後に予定されており、
またその試合と全く同じ対戦カードになるリーグ戦も同月に予定されていたため、わたしはどちらの試合チケットを取るかどうかで数時間悩んでいた。
忘れられない記憶
話は、誰もが忘れがたい2020年にさかのぼる。
わたしはスポーツ配信サービスのDAZN(ダゾーン)を使い、
3年後にフットサルへ誘ってくれることになる”プロサッカーガチ勢”の友人(詳細は以下の過去記事を参照)が昔からのファンだというサッカークラブ、川崎フロンターレの試合をリアルタイムで観ることが増えた。
そしてすぐ、鬼木達監督率いるフロンターレの虜になった。
当時のフロンターレは、先のカタールワールドカップで大きな話題を呼んだ三笘薫(現:ブライトン)がプロ1年目、いわゆる”4-3-3”フォーメーションの左ウイングでスタメンに定着した頃。彼が左サイドからのドリブルで”無双”状態だったと記憶している。
また中盤に目を向ければ守田英正(現:スポルティングCP)が主に中盤3センターの真ん中でアンカーとして、そして田中碧(現:フォルトゥナ・デュッセルドルフ)が同じく中盤の右IH(インサイドハーフ)としてプレーしていた。旗手怜央(現:セルティック)も、毎度スタメンに名を連ねていたわけではないものの複数ポジションをこなすマルチプレーヤーとして活躍していたのだから、この頃の選手層は非常に恐ろしいものだった。
そして当時、フロンターレの左CB(センターバック)にはもちろん主将の谷口彰悟(現:アル・ラーヤンSC)が君臨しており、そしてこの年はフロンターレの”バンディエラ”である中村憲剛の現役ラストイヤーだった。
この顔触れに何となく懐かしさを感じるのは、わたしだけではないはずだ。
惹かれたポイント
それにしても、どうしてわたしがフロンターレに惹かれ、
試合をリアルタイムで観ることが増えたのか。
その理由は至極当然、「日本国内で他のクラブにないと思うほどハイレベルなポゼッションサッカー」を展開しているということと、「それを可能にする各選手の基本技術、戦術理解度の高さ」というところにあった。
試合を観ていると、中盤でフロンターレの選手がボールを保持し、前線の選手にボールを運んでチャンスメイクしていくシーンが印象深い。
しかも滅茶苦茶ボールタッチが丁寧というか、とにかく上手い。
パスの受け方。
ボールを受ける場所と置き所。
パスの強弱。
緩急。
そして選手同士の距離感。
見どころは他にもあるだろうが、注目すべき点が多すぎて言語化できない。
わたしの語彙力では『上手い』や『凄い』としか言えないくらいの超絶技巧。とにかくそのすべてが面白く衝撃的だったことを今でもよく覚えているのだが、その超絶技巧の数々を堪能していると、ボールは左サイドのタッチライン際で待つ三笘薫へ渡っていくのだ。
彼が緩急鋭いドリブルで切り込んでいく様は非常に痛快なもので、ゲーマーの方々向けに言えば、もはや”チート”だった。
この年、フロンターレはJ1でリーグ優勝を果たした。
そしてこの年はわたしの中で間違いなく、サッカーの見方・考え方が大きく変わった年になった。
どうしても現地で観たい
時を2023年10月6日の夜に戻そう。
どうしても現地で観たい試合が2日後にあり、またその試合と全く同じ対戦カードになるリーグ戦も同月に予定されているので、どちらの試合にするかで数時間悩んでいた。
その試合が行われるのは、「等々力陸上競技場」。
わたしが3年前にサッカーの見方・考え方を大きく変えるほど虜になったフロンターレのホームスタジアムだ。
つまりわたしは、ついにフロンターレの試合を
現地で観戦しようとしていたのである。
試合の背景
直近の試合はフロンターレのホームゲームで間違いないが、この試合は通常行われるJ1のリーグ戦ではなく、国内カップ戦「天皇杯」の準決勝として行われることになっていた。
相手は国内リーグカップ戦のルヴァンカップでも準決勝まで勝ち進んでおり(注:試合前時点。その後は同大会で決勝に進み、11月4日に行われた決勝では浦和レッズを2-1で破って初優勝を果たした)、J1でもフロンターレと順位争いの真っ只中にあるアビスパ福岡。
そしてこの試合の12日後には、代表戦による中断期間を挟んで再開初戦となるJ1・第30節にて今回と全く同じ対戦カードが組まれていたのだ。
「これ(8日)を逃すと、代表ウィーク(インターナショナルマッチウィーク)がある。同じ相手だけど、リーグ戦(の再開)はしばらく先だもんな」
そう考えたわたしは、国立の熱狂が冷めやらぬうちに現地でフロンターレのサッカーを十分に味わうべく、2日後にホーム・等々力で行われる天皇杯準決勝のチケットを取った。
ともに国立へ行ったばかりの友人には数時間後に報告を入れ、そして返事が来た。
『等々力来るの!?』
だいぶ驚いた様子だった。
いざ当日
そして、迎えた10月8日。
今回は、駅で集合することなくそれぞれで等々力へ向かう。
というのも、友人はバックスタンド北側1階の角にあるフロンターレ応援席、通称「Gゾーン」と呼ばれる応援エリアの常連だ。
勿論その試合も友人はGゾーンで観戦することにしていたため、今回は試合前にスタジアム内のコンコースで合流して少し話すことになった。
先にわたしが着いたようなので、ひとまずスタジアム前のフロンパークと呼ばれる広場のようなスペースでスタジアムグルメのシュラスコを購入してすぐ実食。あまりにもすぐ食べたため写真はないが、とても美味しかった。
そして10番ゲートから入場し、自席(バックスタンド南側2階)へ到着。
しばらくスタンドを眺めていると友人から連絡が入り、1階Gゾーン付近のコンコースに向かった。
友人『久しぶり!!』
わたし『早すぎやろ、4日前やで?』
わたし『良いスタジアムだね〜』
友人『いやいやいやいや!全然そんな事ない!』
わたし『相手は勢いあるって聞いてるけど、勝ちたいね〜〜!!!』
なんてやり取りから20分くらい立ち話というか、サッカー系の世間話ばかりした記憶がある。
前日の夜に行われたイングランド・プレミアリーグの試合にて、途中出場のMFスコット・マクトミネイが終了間際に2得点を決めて勝利したマンチェスター・ユナイテッドについても触れた(余談だが両者は以前からユナイテッドも応援しており、前夜にXでトレンド入りするほど大きく話題になったニュースだったので流石にトピックとしたのである)。
『試合が終わってしばらくしたら、またここで合流して一緒に帰ろう』
という約束をしたところで、わたし達はそれぞれの座席へ帰っていった。
そしてあっという間にウォーミングアップを終え、いざ試合。
先に断っておくが、先の国立で観た試合ほど詳細な戦術分析をするつもりはない。というか、もう分析しようがなかったので分析をやめ、1ヶ月くらい経ってから感想としてまとめている(後述)。
ただそれだとさすがに記事としては心許ないので、一応内容をまとめる。
試合経過
フォーメーションはフロンターレが4-3-3(おなじみの4-1-2-3型)、アビスパが3-4-2-1でスタート。
前半5分、フロンターレ右IH脇坂泰斗の左コーナーキックから左CB山村和也が頭で合わせ、フロンターレがいきなり先制する。
同40分、フロンターレがペナルティキックを獲得。キッカーのCFレアンドロ・ダミアンが真ん中に蹴るも、アビスパGK村上昌謙の好セーブでゴールならず。
同42分、フロンターレのスローインをアビスパが右サイドの高い位置でカットしてショートカウンターに持ち込み、最後は左シャドーの金森健志が流し込んで同点に追いつく。
前半は1-1で終了。
後半8分、フロンターレはクリアボールのこぼれ球をペナルティエリア手前左からアンカーの橘田健人が左足ダイレクトボレーで合わせ、エリア内で相手に当たってからゴールに吸い込まれ勝ち越し(スーパーゴール)。
後半25分、ボールをキャッチしたフロンターレGKチョン・ソンリョンが高いパントキックを相手ディフェンスラインの背後に送ると、うまく抜け出した左ウイングのマルシーニョが飛び出してきた村上の頭上を越えるループシュートを決めて3点目(またスーパーゴール、アシストはソンリョン)。
後半36分、再びフロンターレ脇坂の左コーナーから今度はダミアンが頭で合わせ4点目(喜びを爆発させたダミアンが思わずユニフォームどころか、おそらくGPS系の計測機器が入ってそうなインナーまで脱いでしまいイエローカードを頂戴した。2枚脱いでもカードは1枚らしい)。
後半45+6分、アビスパが自陣からロングボールを送り、頭で前線へそらす。これを鶴野怜樹が収め、エリア手前中央から左足ミドル。ボールはチョン・ソンリョンの手前でバウンドしてゴールに吸い込まれ、アビスパが1点を返したものの、直後にタイムアップの笛。
4-2で試合終了となり、川崎フロンターレは柏レイソルの待つ天皇杯決勝(12月9日・国立競技場)へと駒を進めた。
感想
ここからは、わたしが抱いたこの試合におけるフロンターレへの感想・最近よく試合を観る海外クラブとの違いを、友人との帰り道(またはSNSのダイレクトメッセージ)で語った内容を交えて綴っていく。
まず、現地で観たフロンターレについての感想を以下3点にまとめてみた。
とにかく選手同士の距離感がよく、ボールを蹴るときの力加減が絶妙。力が強すぎることはほとんどなく、本当に微調整が効いているイメージ。
相手が近くにいて後ろ向き(自陣ゴール方向)でパスを受けてもその場で相手選手を背負うようにターンして方向を変え、ボールを失うことなくディフェンスをかわしていくシーンが何度もあった。橘田ホントすげえ。
中盤の狭いスペースでも、細かくパスをつないで局面を打開できる。パスを受ける選手の身体の向き、ボールタッチの位置といったひとつひとつの技術やそこに向ける意識がとても高く、サッカーボールの扱い方ならいつでも日本一だろうと感じるほど。個人的には守備も含め上手いと思ったプレーにはなるべく拍手を送りたいが、すべてに拍手しきれないほど連続的に拍手するべきプレーが多く、試合時間に対する見応えがすごい。プロ野球・埼玉西武ライオンズの源田壮亮によるグラブさばきをずっと観ている時と同じくらいの見応えがあり、橘田も脇坂も瀬古も頼りになりすぎる(余談だが、後日公式Xが投稿した”瀬古”ムの頼りになる感は凄すぎ)。
ここからは、最近よく観る海外クラブとの違いについて。
わたしが最近よくチェックしているドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンは、”ラングニック系”のドイツ人監督トーマス・トゥヘルが率いている。
トゥヘルは、わたしがパリ・サンジェルマンを応援し始めた頃に同クラブの監督を務めていた人物であり、選手を別ポジションにコンバート(魔改造)するのが得意な監督というイメージが強い。
サッカーの監督としてはペップ・グアルディオラやユルゲン・クロップ、そして鬼木達と同じく、わたしが大変気に入っている監督のひとりだ。
前置きが長くなってしまった。
そのトゥヘルが率いるバイエルンの見どころは、ボランチのヨズア・キミッヒや生え抜きセカンドトップのトーマス・ミュラー、それに新加入のマルチプレーヤーであるコンラッド・ライマーに同じく新加入のCFハリー・ケインなど、フロンターレと同じく各選手の頭脳の良さ(専門的に言うところでの”サッカーIQ”の高さ)が目立つところだ。
ただフロンターレと決定的に違うのは、左SBのアルフォンソ・デイヴィスや、両ウイングをこなすキングスレー・コマンなど足の速さを武器とした高い身体能力を持つメンバーも多く主力としてプレーしている点と、”世界中でGKというポジションの必須項目を変えた男”ことマヌエル・ノイアーの存在である。
今回の観戦を通じてバイエルンとフロンターレ両者のサッカースタイルについて改めて考えてみると、
「バイエルンのサッカーはフロンターレと同じようにボールを保持するタイプのサッカーであることは共通しているものの、実際に行われているサッカーの内容としては正直なところ対極に位置しているのではないか」
という感想を持つことができた。
あとがき
今回初めて現地観戦したフロンターレの試合において、わたしはここで文章に書ききれないほどの感動や衝撃を受けた。
もはや感想はとどまることを知らないが、この記事を有料にしたくないので割愛する。
そういえば天皇杯決勝のチケット抽選申し込みが始まっているので、忘れずに申し込まなくては…。
自分が行けるかどうかは別として、毎年行けるとも限らない決勝。
もうチケット代の高額さはこの際どうでもいいと考えている。
高い席でも良いから、現地で観たいというのが本心だ。
この記事の執筆時点ではルヴァンカップ決勝の試合映像をまだ観ていないが、それにしても今考えるとあの天皇杯準決勝は勝てて良かったかもな…。