VOCALOID調声Tips【基礎編】

こんにちは。
ボカロベタ打ち撲滅実行委員会会長を務めております志茉理寿です。

以前こちらの記事にてボカロ調声に本当に役立つ動画や書籍などを紹介しましたが、今回は実際に自分が意識していることなんかを書いていこうと思います。

私のことをご存じでない方はまずはこちらを聞いてから、当記事を参考にするべきか否かを判断していただくのが良いかと思います。

1.適切なキーを設定する

VOCALOIDは機械の声なんだからどんな高音だって出せる、なんて考えるのは大きな間違いです。

音声ライブラリ(キャラクター)によっても変わってきますが、それぞれ得意な音域というものがあり、そこから大きく外れてしまうとどんなに完璧なエディットを施しても残念な歌になってしまいます。
試しに、自分でうまくエディットできた!と感じる箇所のキーを±5くらいズラして聞き比べてみてください。同じ配列、同じピッチ波形のはずが「あれ?なんかさっきと違う?」と感じることでしょう。
逆に、もっと探っていくと「なんかうまく聞こえる!?」となる部分が必ずあるはずです。
このポイントを探して曲のキーを変えていくのが最初のステップとなります。
(そうは言っても、まずは大まかに決めるだけで大丈夫です。DTMなのですから、後からいつだって変えられます。)

歌に合わせて曲全体を変えるなんてバカらしい、と感じるかもしれません。しかし、有名なアーティストだって自分の歌いやすい音域を理解した上でそれに合う適切なキーを見つけて曲を作っているわけですし、機械であっても同じことです。だって元々は人間の声なのですから。

2.エフェクトを見直す

EQやコンプレッサーなど、使用するエフェクトによって歌い方が変わったように感じられることがあります。

ボーカロイドはよく「平坦な声だ」なんて言われたりしますよね。
確かにピッチだけ見れば波形がただまっすぐ横に伸びているだけのようですが、ダイナミクス(音の強弱)の観点から言えば、実は平坦どころか超不安定だったりします。
常に音量がうねうねしているので、音が小さくなる部分が相対的に聞き取りにくくなり、結果的に活舌が悪いように感じられてしまいます。
人間の声であってもこのダイナミクスの調整はほぼ必須と言ってよく、コンプレッサーを使用し処理されます。
ボーカロイドは素の状態でのこの不安定さが顕著であるため、このコンプレッサーを普通より強めにかけた方が効果があると言われています。

周波数分布に関しても同じことが言えます。
素の状態だとボワボワした成分が目立っており、人間の声に比べると特に超高域成分が不足しがち(隠れていて聞こえていない?)です。
これらはEQで補正するべきところですが、自分は通常のEQに加えて、上でも述べた不足しがちな超高域を補うためのエキサイターや特殊なEQを施しています。

このように、聞こえていなかった部分を聞こえるようにする作業がうまくできれば、ボーカロイドのポテンシャルが最大限発揮され、まるでキャラクターが目の前で歌っているような迫力を出すことも可能になります。

以上が前置きで(長い)、言いたいことはただ一つ。

こんな難しいことなんて考えなくていいので、iZotope社のNecterを使いましょう。

Necterとはボーカルに特化したエフェクトプラグインで、EQやコンプ、エキサイター等をAIが自動で調整し適用してくれる冗談みたいなツールです。
上で書いたような工程がほぼこれ一つで完了します。
人間のボーカルに使用する場合は賛否両論あるようなのですが、ボーカロイドに使用した場合の相性が凄まじく、「なんだこのヘタ○ソ!!」なんて叫びたくなるようなデータも(よく自分でエディットしながら叫んでます)これをかけるだけでなんかいい感じになります。(ちなみに自分の楽曲ほぼ全てで使用されています。)
これ本当にお勧めです。

3.余計なことはしない


そろそろちゃんとしたテクニックの話をしてくれよ!なんて声も聞こえてきそうなところで、こんな見出しを付けちゃいました。
よくYoutubeの解説動画で30分くらい長々とパラメータを弄って説明しているのを見かけますが、たぶん曲に混ぜたら聞こえなくなるような些細な違いしか生まれないため、その30分を使って夕飯のカレーを作ることをお勧めします。
また、自己流のノート分割を多用してみても、ピッチパラメータでビブラートを描いてみても、多くの場合逆に音痴になってしまっているのではないでしょうか?
それもそのはず、ボカロが”平坦”であるということはつまり「ピッチが殆どまっすぐ安定している」ということですから、元々ぴったり合っているものに手を加えた結果音程がズレてしまうのは当たり前です。
自分も局所的に見ればベタ打ちになっているところなんかが結構あります。

そもそも以前の記事(面倒くさい?うるさい!いいから見ろ!)を含めここまで読んでくださっている方々は既に上位10%相当のエディットの方法を知っているわけですから、今更ヘンなことをしなくても「上手い」と言われるようなレベルに達しているはず…

以上、【基礎編】として書きたいことはだいたい書いたつもりですが、何か不足あればコメント等で伝えていただければと思います。

最後までテクニック的な部分には触れませんでしたが、こうした基本的なことがクオリティの9割を占めていると言っても過言ではないと思いますので、まずは騙されたと思ってお試しあれ!




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