“手ぶら通園”で、親子の「時間」と「育ち」を豊かに──写真で知ろう！小規模保育【園運営】
保護者の負担を少しでも減らしたい、と8年前から行っている“手ぶら通園”。親子の豊かな時間を生み出すだけでなく、子どもの発達に寄り添いながら、初めて子育てをする保護者ともコミュニケーションしやすくなるなど、園にとって大切な仕組みになっています。
＜保育園みんなのおうち／神奈川県横浜市＞
【園児数】18人（2歳児8人・1歳児7人・0歳児3人）
【保育者数】9人
【園での提供物】着替え（上下、靴下、スタイを含む）／オムツ／食事エプロン／お手ふき・お尻ふき類／布団など
（2022年10月時点）
■ ねらいと配慮
たくさんの荷物を抱えながら、出勤途中に子どもを園へと送り届ける。そして、夕方にまた荷物を受け取り、子どもの手を引いて帰る——。よく見られる保護者の姿ですが、それが雨の日も寒い日も含め「毎日」となると、かなりの負担がかかります。
当園では、そんな保護者に少しでもゆとりを持ってもらいたいと考え、2014年の開園（当時は認可外保育園）時から、着替えや寝具、消耗品などを園で提供する“手ぶら通園”の仕組みをとってきました。準備がいらず身軽になれるぶん、子どもたちが登降園のときに笑顔で抱っこしてもらえたり、帰宅中にちょっと寄り道ができたり、家に帰ってから親子で向き合えたりする時間になれば、との願いを込めています。
始めるにあたっては、不要になった幼児服や靴下の寄付を職員などから募り、足りない衣類や布団などを購入しました。園の負担は少ないとは言えませんが、まとめて収納できるので「個人のロッカーやオムツ入れを準備しなくても済む」などの利点もありました。
オムツやお手拭きなどの消耗品については、一律2000円（1カ月）で全家庭から継続的に費用をいただいています。各家庭でご用意いただくよりも価格を低くすることで、金額がハードルにならないよう配慮しました。
■ 振り返り
極力持ち物を少なく……とした結果、「れんらく帳1つ」で通園できる仕組みとして、これまで8年以上に渡り続けてきました。「忘れ物をする不安がない」「電車でも通いやすい」など、保護者にはとても好評をいただいています。
最初は「そこまでする必要があるのか」という反応のあった保育士側も、実際にやってみると、持ち物を取り違える心配がない、着替えやオムツの不足で保護者に声をかける手間がないなど、楽になるポイントが多いことに気づいていきました。
子ども一人ひとりに寄り添う点でも、良さを感じています。
子どもたちが園に朝来て着替える服は、個々の発達や好みに合わせて、保育士が前日にセットしているものです。家庭でご用意される服の中には、少しズボンが固かったり、ボタンが多かったりと、本人がまだうまく着脱できないものもあるのですが、園で用意する着替えについては、子どもができるだけ脱ぎ着しやすい衣服で提供することができます。
園の備品なので、靴下の上側や肌シャツの前側にマークを描くなど、パッと見て向きがわかる仕掛けもしています。また「自分で選びたい！」という意欲が出てきた子どもには、予備の服を並べて自分で選べるようなコーナーも確保。そうした工夫から生まれる「自分でやってみよう」という意欲や、「できた！」という達成感が、子どもの非認知能力を伸ばすことにつながると考えています。
保護者に対しても、「こんな靴下だと履きやすそうにしていますよ」「この園のシャツは◯◯で買いました」などと話題提供しやすいことも利点です。“手ぶら”で来ていただけるぶん、提供しているモノを通じての、密なコミュニケーションを心がけています。
■ 「小規模保育」としての視点
“手ぶら通園”を実現するには、子どもたちの必要なものを全員分、園で用意する必要があります。そのうえで、「◯◯ちゃんは、このズボンだとすぐ脱げちゃうからこっちにしよう」「ボタンに興味が出てきたから、これを見せてみよう」などと、子どもの体型や発達段階に合わせた関わりができるのは、少人数で保育士の配置に余裕のある、小規模保育園ならではの取り組みではと考えています。
0〜2歳児対象の当園に通う保護者は、多くが初めて子育てをされる方です。卒園した後に、「すごくありがたかったと初めてわかりました」と話す方もおられます。
そうした保護者の方々が、次の寄付者として、お子さんが使わなくなったものをわざわざ持ってきてくださるケースも出てきました。子どもたちを取り巻く新しい循環が生まれているのも、この仕組みの重要な点だと考えています。
【園情報】
保育園みんなのおうち（合同会社つづきチャイルドケア）
https://www.minnano-ouchi.com/
横浜市都筑区中川中央1-28-12 フォレストフジ 2階
定員18名
小規模保育事業A型・管理者設置あり