『基本群と被覆空間』イチ推しポイント
佐藤隆夫先生による『基本群と被覆空間』が、2023年11月中旬に刊行されました。(内容見本公開中です)
トポロジー(位相幾何)を勉強する場合、「ホモロジー論」から入るか、「基本群」から入るかの二択になりますが、本書はこのうち、後者の「基本群」と、その延長線上の「被覆空間」の理論を詳しく解説するものです。
実は、「基本群と被覆空間」というタイトルの和書は(意外とありそうですが)本書が初めてのようです。
今回はこの本のイチ推しポイントをご紹介します。
ポイント① 丁寧できめ細かな記述
これまで、「基本群」と「被覆空間」の入門書というと、“授業はあるけど、刊行年の古い本や専門性の高い本が多いし、どうも捗らないなァ”という思いを抱いた人は結構いらっしゃるのではないでしょうか(私だけ?)。
本書では、具体例を多く取り上げながら、著者の佐藤先生らしい「丁寧できめ細かな記述」が大いに発揮されており、とてもスムーズに読み進められます。
担当編集者(素人)でもこんな感じで読めたので、現役学生の皆さんならもっといけるんじゃないでしょうか。
ポイント② 予備知識も手厚く
「基本群と被覆空間」はトポロジーの一分野ですが、「位相空間」と「群論」の内容をふんだんに使うため、これらの予備知識にある程度手慣れている必要があります。
そして本書は、この予備知識のパートに100頁超を割いています。これによって、「位相空間」と「群論」の内容が不安な方でも、どこが分かっていないのかが見つけやすくなっています。
逆に、「位相空間」と「群論」の腕に覚えのある方は、いきなり本論から入り、必要に応じて参照する、という使い方ができるかもしれません。
ポイント③ 組みひも群
本書の最終章では、組みひも群 (braid group) をテーマに議論が展開されます。組みひも群は、数学のさまざまなところで登場する概念ですが、日本語で解説された本は思いのほか少ないようで、その意味でも価値の高い書籍になっています。
ぜひご一読を——