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これからの幸福について-文化的幸福観のすすめ

積読日記、2日目です。

今回は「これからの幸福について-文化的幸福観のすすめ」。著者の内田由紀子さんは京都大学の人と社会の未来研究院教授で、2年ほど前にある研究会でウェルビーイングをテーマにした際に、ゲストとしてお越しいただきご後援頂きました。

その際に予習するためにこの本を買ったのですが、予習間に合わず、、、結局サインをもらうために買ったことになってしまいました。もちろん講演は予習なしでもとても学びの多いものでしたよ。

それ以来積読になっていたのですが、ようやく本に呼ばれる時が来たので、まずははじめにと目次、あとがきを読んで期待感を高めていきます!

ちなみに写真の怪しい動物はイエティ(雪男)のコースター。特に意味はありません。本の装丁の色合いと似ていたから、以上。

幸福はひとぞれぞれ?それ以上に文化の違いかも

幸福とは何か。
この問いに一言で答えられる人は多くなのではないでしょうか?

幸福論はアリストテレスの時代から議論されてきた、人類にとって永遠のテーマと言っても過言ではないものである一方、最近まで、幸福に関する研究は哲学者や心理学者くらいが研究対象とするものと考えられてきた、なぜなら幸福感とは主観的なものなのであいまいで研究の対象とするには曖昧過ぎる、計測できるデータは限られていたから、ということです。

それが1990年代から研究論文の数がぐっと増えたのは、欧米、日本で高度経済成長に限りが見え始め、物質的な豊かさが優先されてきた時代に変化が生まれてきた背景があるでしょう。

ただし、よくある幸福指数国別ランキング、みたいなものが横行し、一律に幸福の定義がなされ、比較されている現状に内田さんは違和感を感じているといいます。

内田さんの専門は文化心理学。
国家や地域間の比較調査を行うことで、幸福に関する価値観にも地域差がみられます。それは文化に根付いたものだと内田さんは仮説を立て、これまで研究を進めていらっしゃいました。それをまとめたものが本書になります。

文化的幸福観

「幸福は個人が感じるものでありながら、何を幸福と感じるかは実はその人が生きる時代や文化の精神、価値観、地理的な特徴を反映している。」

上記のような幸福に関する考え方を「文化的幸福観」と呼びます。
これは文化という社会科学的な視点と、個人のこころで感じる幸福という心理学的、人文学的な視点の相互作用がこれからの幸福を考えるために必要であるということが、本書の根底にある考え方だと思います。

幸福の陰と陽

目次にざっと目をとおして気になったキーワードがこの「幸福の陰と陽」。

これも幸福に関する文化差であることが読み取れます。
アメリカにおいては幸福はさらなる幸福を呼ぶ、という考え方が主流なのに対し、日本やアジアは幸せな状態がずっと続くことはない、という陰陽思想に基づく「バランス的幸福観」が見られる、というのは私も実感を持てますね。いいことが続くと、いつか悪いことが起きるのでは、と不安になります。

若者の幸福

これも目次で気になったキーワード。
最近教員として学生と接する機会が増えて感じるのは、自分たちの将来に対する不安が強いな、ということ。具体的には就職活動やキャリアについての不安感が多くの学生に見られます。若者の幸福度や幸福の感じ方、これも国家間で差がありそうだな、と思います。日本の若者の幸福観は他世代や他国と比べて低そうだな、というのは想像に難くありませんね。

個人的にはそうだよね、では終わりたくなくて、そんな現状の若者に対して少しでも明るい未来を描いてほしいなと思っていて、それをどう伝えると彼らの中に希望の灯がともるのか、そのヒントがこの本には詰まっている気がします。

幸せとは何かをシリアスに考えましょう

これはあとがきに書いてあった言葉です。
幸せについて楽観的になりすぎず、客観的に幸せについて考えること、その重要性を示したいというのが内田さんの想いなのだな、と感じました。

VUCAの時代だからこそ、安易な「幸せ」に逃げることなく、私たちが、そして社会が精神的に豊かになる=幸福になる方法を考えるヒントがこの本には書かれているのではと期待が高まりました。

もちろん内田さんの講演を聞いているので全くの白紙の状態で読んだわけではないのですが、この概要のみをまずつかむ読み方、なかなか積読の効用を高めるのによい手法だな、とすでに2回目にして感じてきました。

次回もご期待?ください。ではでは。

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