「 卯月の精進料理」 2024年4月
四月は新年度、新入学とあらたまる月ですが、おかげさまでこの精進料理教室も12年目に突入しました。
会場のたからの庭では、桜が、ハナニラが、紫はななが一斉に咲いていて、シャガまで咲き始め、紫陽花や茶の木の新芽も初々しく春たけなわです。
私は一度教えた献立をリピすることはほとんどないのですが、今月は自分が食べたくなり、9年前に教えた長岡の郷土料理「醤油おこわ」をやりました。長岡には日本酒を勉強しに造りの時期にかなり通ったので、その時、現地の方に山菜の処理の仕方やこの醤油おこわを教わりました。各家庭でいろんな味がありますが、私は日本料理的なアプローチで、淡口と濃口をブレンドし、さらに酒やみりんも加える味付けにしています。せいろで蒸しあげた最後に調味料を振りかけるのですが、あまり混ぜすぎないのがコツです。
汁は、豆腐百珍から「黒染豆腐汁」を。板若布を軽くあぶり、手で揉んで豆腐に加えてちょっと黒くする椀物です。板若布は島根の特産品ですが、なければ乾燥若布や海苔、昆布などでもOKです。ちょうど片栗も手に入りましたので、椀妻にしました。甘くてシャキシャキとした歯触りも楽しいですね。
メインは天ぷらです。五加木、天豆、茶の新芽を揚げました。
副菜1は新酒の酒粕と豆腐の衣の白和えです。献立名は酒粕をたっぷり使っているので“酒粕和え”としてありますが、白和えをひとひねりといったところ。これに限らず和え物は、食感の違う食材をいかに合わせるかが大切。今回は菜花、こごみ、新じゃが、新人参にしましたが、蒟蒻などを入れてもいいかと思います。
副菜2は「蕗豆腐」。寒天は煮るほどよく固まりますが、豆乳は分離してくるので、寒天地だけを造り、同時に豆乳を6~70度に温めて混ぜる方法を取りました。ゼラチンを加えるとくちどけよくなりますが、精進なので、寒天のみにしました。一度に蕗を加えてしまうと底のほうに沈んでしまうので、時間差で徐々に加えてください。
1.醤油おこわ、2.黒染豆腐汁、3.旬彩天ぷら、4.山菜の酒粕和え、5.蕗豆腐
1.醤油おこわ
材料:もち米700CC、大正金時120CC(90g)、醤油大2、淡口大1、味醂・酒各大2
手水(金時豆の煮汁)100CC程度
1)金時豆は洗って1晩水につけておき、水からかためにゆでる。
2)もち米も洗って一晩水につけておく。
3)蒸篭に蒸し布巾を敷き、もち米と金時豆を乗せてすり鉢状に中央をくぼませ、強火で蒸していく。
4)15分おきに蓋を取り、手水(金時豆の煮汁)を全体に降りかけ、天地を箸で返すを2回ほど繰り返す。
5)調味料をボールにいれ、よく混ぜ4)にかけ混ぜる(粘りが出ないようにする)。
6)5)をさらに10分ほど蒸して(飯台にあけて箸で混ぜ)荒熱をとってからよそう。
2.黒染豆腐汁
材料:木綿豆腐1丁、乾燥若布(あれば板若布)適宜、大和芋50g、淡口小1/2、塩少々
吸い地:出汁1200CC、淡口小1、塩小1弱、片栗各1本、木の芽適宜
1) 豆腐は水切りし、フープロにかけて滑らかになったら、調味料とおろし大和芋を加え、さらに混ぜて最後に炙った若布を手で細かくしながら加える。
2)1)を8等分にし、ラップで包んでゴムでしばり、8~10分ゆでる。
3) 片栗は塩少々でさっとゆで、水に取っておく。
4)吸い地を作って椀に2)と片栗を盛付け、天に木の芽を添える。
3.旬彩天ぷら
材料:五加木(うこぎ)各3個、天豆各2個、茶の新葉か雪の下1枚、米油適宜
衣:小麦粉、炭酸、塩少々
1) 五加木はさっと洗って水けを拭きとる。
2) 天豆は皮をむいておく。
3) 衣を作り、低めの温度で揚げ、塩を振る。
4.山菜の酒粕和え
材料:菜花4本、こごみ8本、新じゃが1個、新人参20g(昆布出汁大1,塩少々)
衣:絹ごし豆腐1/4丁、酒粕50g、白味噌・みりん各大1,砂糖・淡口各小1、塩少々(調整用)
1) 菜花、こごみはそれぞれ、洗ってさっとゆで、きあげして、扇いで冷まして3cmに切っておく。
2) 人参は3cmの長さのマッチ棒に切り、出汁に塩少々でレンチンしておく。
3)新じゃがは洗ってレンチンしてから皮をむき、食べやすい大きさに切っておく。
4)衣の材料をフープロにかけて滑らかにしておく。
5)1)を淡口醤油洗いをして、2)3)とともに衣と混ぜる。
5.蕗豆腐
材料:流し缶中1個分
蕗100g程度、塩少々 昆布出汁200CC、粉寒天4g、豆乳250CC、淡口小1、塩少々
餡:出汁120CC,醤油・みりん各20CC、片栗粉大1/2(水大1)
1)蕗は板摺して、熱湯で3、4分茹で、水にとって皮をむき、5mm程度の小口切りしておく。
2)鍋に出汁と調味料、粉寒天を入れて火にかけて沸騰したら2分は煮る。
3)豆乳は70度に温め、2)と合わせて、流し缶に入れる。
4)冷水で冷やしつつ蕗の半分の量をまず入れ、5分後残りの1/2を、さらに5分後残りを全部加え冷やし固める。
5) 餡を作る。小鍋に出汁と調味料を加え、温まってきたら水溶き片栗粉でとろみをつけ、冷やしておく。
6)4)を9等分にカットして上から5)をかける。
4月のデザート
創作和菓子・空羽kuu 「春の山」
レシピ&原稿:温石会 入江亮子
(北鎌倉たからの庭<旬を楽しむ精進料理> 4月の献立より)
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