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【週間特集:タイ1】タイという国の概要

まずは基本的なタイという国の概要を押さえたいと思います。

タイは私自身も行ったことがあり、現地の方に案内していただいて、少し交流ができた事もあり、少し分かる国です。

また、タイは「占領されたことがない国」ということで特殊な歴史を持っている国でもあります。完全に英仏の影響を受けなかったわけではありませんが、タイの独立性を強調する際に「占領されたことがない国」という言葉が使われるそうです。


基本情報

  • 正式名称: タイ王国

  • 建国:スコータイ王朝の成立:1238年

  • 面積: 51万4,000平方キロメートル(日本の約1.4倍)

  • 人口: 約6,609万人(2022年)[10]

  • 首都: バンコク

  • 言語: タイ語

  • 宗教: 仏教94%、イスラム教5%[10]

建国は1238年とされていますが、歴史家の見解で、実際には同時期前後に、別の王国があったのだそうです。800年の歴史があることになります。

英語教育は行われているものの、112カ国中74位に位置し、「低熟練」カテゴリーに分類されているそうです。

政治体制

  • 立憲君主制

  • 元首: マハー・ワチラロンコン・プラワチラクラーオチャオユーフア国王(ラーマ10世王)

  • 議会: 二院制(下院500議席、上院250議席)

  • 首相: セター・タウィーシン(2023年8月就任)[10]

立憲君主制とは?

君主の権力が憲法によって制限された政治体制です。
君主が国家元首として存在するが、その権力は憲法によって規制されるというもので、実際の政治権力は議会や内閣が持つ場合が多い。君主は象徴的な役割を果たすことが多いとされているものです。

イギリス、ドイツもこれになるそうです。

タイの立憲君主制は、以下のような特徴を持っています

タイの立憲君主制

  • タイは1932年の立憲革命以降、立憲君主制を採用しています。

  • 国王が国家元首として存在し、その権力は憲法によって規定されています。

  • 実際の政治権力は議会や内閣が持ちますが、国王の影響力は依然として大きいです。

国王の地位と権限

  • 憲法では国王を「尊敬し崇拝すべき地位」と規定しています。

  • 国王は「タイ軍の総帥」として軍隊の中で最高の階級を持ちます。

  • 「仏教徒であり且つ宗教の保護者」として宗教界の頂点に立つ存在です。

  • クーデターが起きた際の調整役を担うなど、政治に一定の影響力を持ちます。

政治システム

  • 二院制の議会制度を採用しています。

  • 下院は500議席、上院は250議席で構成されています。

  • 首相は議会によって選出されます。

特徴的な側面

  • 軍部が政治に強い影響力を持つ傾向があります。

  • 国王や王族への批判は不敬罪として厳しく罰せられます。

  • 「タイ式民主主義」と呼ばれる独特の政治風土があり、国王が政治的混乱を調整する役割を果たすことがあります。

タイの立憲君主制は、形式的には近代的な政治制度を採用しながらも、国王の影響力が強く、軍部の政治介入も頻繁に見られるなど、独特の性格を持っているようです。

近年は民主化の進展と伝統的な権力構造との間で緊張関係が続いており、政治的な安定を模索している状況なのだそうです。

経済

  • 名目GDP: 5,362億ドル(ASEAN2位)

  • 一人当たりGDP: 7,651ドル(上位中所得国)

  • 主要産業: 製造業(GDPの約3割)、観光業、農業[8]

1ドル140円で換算すると75兆680億円になります。
日本の名目GDPの規模から換算すると、8分の1程度となりますが、ASEAN諸国の中では第2位になり。(1位はインドネシア)

日本の8分の1とは言え、ASEANの中では上位国であり、見過ごせない国だと言うことが言えると思います。

経済対策・中期計画

タイ政府は「第13次国家経済社会開発計画(2023~2027年)」を策定し、以下の戦略を掲げています[1]:

  1. イノベーション・知識主導型経済への転換

  2. 機会の平等な社会の実現

  3. 環境に配慮した持続可能な生活様式への移行

  4. 高度技術を持つ労働力・政府への変革

この計画では、以下の産業分野に注力しています[1]:

  • 高付加価値農業・加工食品

  • 持続可能な観光

  • 電気自動車生産

  • 医療・健康サービス

  • 地域貿易・投資・物流のハブ

  • スマートエレクトロニクスとデジタルサービス

また、「Thailand 4.0」構想に基づき、2036年までに一人当たりGDPを13,000ドルに引き上げ、高所得国入りを目指しています[5][8]。

Thailand 4.0とは?

Thailand 4.0は、タイ政府が推進する経済発展戦略で、以下のような特徴があります

概要

  • タイを高所得国へ引き上げることを目指す経済モデル

  • イノベーション、研究開発、創造性を重視した知識基盤経済への転換を図る

  • 製造業中心の経済から、高付加価値産業への移行を目指す

主要な目標

  1. 高所得国への移行

  2. 包括的な社会の実現

  3. 持続可能な発展

重点産業

Thailand 4.0では、以下の10の重点産業が設定されています:

  1. 次世代自動車

  2. スマートエレクトロニクス

  3. 医療・健康ツーリズム

  4. 農業・バイオテクノロジー

  5. 食品産業

  6. ロボット工学

  7. 航空・物流

  8. バイオ燃料・バイオ化学

  9. デジタル産業

  10. 医療サービス・イノベーション

これらの重点産業と絡んでいくにはより具体的に調べる必要がありますが、絡んでいくことができるかもしれませんね。

主要な施策

  1. 東部経済回廊(EEC)の開発:3つの東部県(ラヨーン、チョンブリー、チャチューンサオ)を中心とした特別経済区の設置

  2. 投資インセンティブの提供:法人税の減免、長期土地リースの許可など

  3. インフラ整備:新空港の建設、港湾拡張、高速鉄道の整備など

  4. 人材育成:デジタルスキルの向上、高度人材の誘致特別経済区

特別経済区の場所
どうやらバンコクの少し下のあたりの海沿い地域を特別経済特区としているようです。

GoogleMAP
https://maps.app.goo.gl/NDYQwLYdhtrecpn9A

Thailand 4.0の課題

  • 産業選択の妥当性

  • 政策実施の遅れによる投資家の不確実性

  • 既存産業との格差拡大の可能性

Thailand 4.0は、タイ経済の構造転換を図る野心的な計画ですが、実施には多くの課題があり、慎重な政策運営が求められています。

参考
[1] https://www.btiexecutivesearch.com/industry-4-0-and-the-rise-of-the-smart-factory-in-thailand-challenges-and-opportunities/
[2] https://www.thailand-business-news.com/featured/54286-thailand-4-0-need-know
[3] https://dimerco.com/thailand-4-0-the-new-economy/
[4] https://eastasiaforum.org/2020/04/17/thailand-4-0-and-its-challenges/

国全体課題

  • 少子高齢化と労働力不足

  • 「中所得国の罠」からの脱却

  • 産業構造の高度化

  • 地域間・所得格差の是正[8][9]

中所得国の罠とは?

中所得国の罠とは、発展途上国が一定の経済成長を遂げた後、さらなる成長が停滞し、高所得国への移行が困難になる現象を指すのだそうです。

主な特徴は以下の通りです:

定義と特徴

  • 世界銀行が2007年の報告書「東アジアのルネサンス」で提唱した概念です[1]。

  • 一人当たりGDPが約8,000ドル(米国の約10%)に達すると、多くの国がこの「罠」に陥る傾向があります[3]。

  • 低賃金を武器にした労働集約型産業による成長が限界に達し、高付加価値産業への移行が困難な状態を指します[1]。

影響と規模

  • 現在、108カ国が中所得国に分類され、世界人口の75%(約60億人)がこれらの国々に住んでいます[3]。

  • 中国、インド、ブラジル、南アフリカなど、主要な新興国もこの罠に直面しています[3][4]。

この中所得国という分類は、世界銀行の所得グループだそうで、下記のように分類があるそうです。

  1. 低所得国 (Low-income economies)

  2. 低中所得国 (Lower-middle-income economies)

  3. 高中所得国 (Upper-middle-income economies)

  4. 高所得国 (High-income economies)

低所得国: 1人当たりGNI 1,135ドル以下(158,900円以下)
低中所得国: 1人当たりGNI 1,136ドル~4,465ドル(159,040円~625,100円)
高中所得国: 1人当たりGNI 4,466ドル~13,845ドル(625,240円~1,938,300円)
高所得国: 1人当たりGNI 13,846ドル以上(1,938,440円以上)

※1ドル140円で換算しています。上記は年収になります。
タイは高中所得国に分類されており、日本は高所得国に分類されているようです。なお意外かもしれませんが、中国は高中所得国に分類されているようです。

※毎年更新されるそうです。

「中所得国の罠」の原因

  1. 技術革新の遅れ:先進国の先端技術に追いつけない。

  2. 競争力の低下:低賃金国との価格競争で優位性を失う。

  3. 産業構造の転換の遅れ:高付加価値産業への移行が進まない。

  4. 人材育成の不足:高度な技術や知識を持つ労働力の不足[1][2]。

「中所得国の罠」克服のための戦略

世界銀行は中所得国の罠を克服する戦略を提唱しているそうで、「3i戦略」を提案しているそうです。

  1. 投資(Investment):経済への投資増加

  2. 注入(Infusion):先端技術の導入と活用

  3. イノベーション(Innovation):独自の技術開発と革新[3][4]

この罠を克服するには、産業構造の高度化、技術革新、人材育成などの総合的な取り組みが必要とされています。

参考
[1] https://www.lij.jp/news/research_memo/20140331_2.pdf
[2] https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=24968
[3] https://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2024/07/22/-middle-income-trap-hinders-progress-in-108-developing-countries
[4] https://jp.weforum.org/agenda/2024/09/the-middle-income-trap-is-holding-back-over-100-countries-heres-how-to-overcome-it/

タイ政府は、これらの課題に対応するため、デジタル化の推進、人材育成、インフラ整備などの政策を実施しています[9]。

参考
[1] https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/03/29b57c690f8d19de.html
[2] https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/basic_01.html
[3] https://www.iima.or.jp/docs/newsletter/2024/nl2024.2.pdf
[4] https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-17/SJXZZ7T0G1KW00
[5] https://www.digima-japan.com/knowhow/thailand/13324.php
[6] https://www.iima.or.jp/docs/newsletter/2022/nl2022.13.pdf
[7] https://www.iima.or.jp/docs/newsletter/2023/nl2023.31.pdf
[8] https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202309/202309l.pdf
[9] https://aap-jpromo.com/2024年を迎えて、タイ 新政府と経済政策/
[10] https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/thailand/data.html




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織原松治
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