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【米国調査28】アメリカ政権下では学者やシンクタンクが常に控えている

アメリカ政権下では、学者がシンクタンクが常に控えていて、政権が変わるタイミングで、積極的に関与するのだそうです。

この人数が数人レベルではなく数千人レベルなのだと言う風に聞きました。

これは日本の政治と大きな違いで、底力の違いと言っても良いと思いますので、詳しく調べてみました。

1. 政権交代と人材育成

アメリカは政治任用制

アメリカでは、政権交代時に多くの政府高官や政策立案者が入れ替わる「政治任用制」が採用されています。

このため、政権を担う人材はシンクタンクや大学で研究を続けながら次の政権に備えることが一般的です。

こうした仕組みは、学術的知見を政策に反映させるとともに、専門性を高める機会を提供します[6][23]。

日本は官僚主導

一方、日本では官僚主導の政治が長く続いており、政権交代があっても行政機構の連続性が保たれる仕組みです。

そのため、アメリカのようなシンクタンク文化や大学での人材育成といった仕組みは発展していません[6][25]。

2. 政治文化と制度

アメリカは建国以来、民主主義と分権的な政治文化を基盤としており、政権交代が頻繁に行われる中で政治家や官僚が競争的に政策を作り上げてきました。

また、シンクタンクが政策形成に大きな役割を果たし、学者や専門家が積極的に関与します[6][23][13]。

日本では、長らく自民党による一党優位体制が続き、「万年与党」とも呼ばれる状況がありました。

このため、政権交代による政策刷新は限定的であり、官僚主導の安定した行政運営が重視されてきました[3][25]。

3.大きな実例

アメリカでは、学者や専門家が大学教授として研究を続けながら政界復帰する例が多く見られます。

例えば、多くのノーベル賞受賞者や著名な経済学者が政府政策に直接関与し、その知見を実務に活用しています[2][23]。

日本では、学者が直接政策立案に関与する機会は少なく、シンクタンク文化も限定的です。

これは、日本の政治文化や制度上の制約によるものと考えられます[6][23]。

アメリカでは、学者や専門家が政権交代や政策改革において重要な役割を果たしてきました。以下に具体的な事例を挙げます。

1. レーガン政権での教育改革と「危機に立つ国家」報告書

1983年、レーガン政権下で発表された「危機に立つ国家(A Nation at Risk)」は、アメリカの教育水準の低下が経済の競争力を脅かしているという問題意識から作成されました。

この報告書は、教育学者や専門家が中心となり、公教育の改善を訴えるものでした。

これを契機に、教育基準の向上や学校選択制(バウチャー制度やチャーター・スクール)といった改革が進められました[1]。

2. ルーズベルト政権下でのニューディール政策

フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策は、州や地方レベルで先行して行われた実験的な政策を取り入れたものです。

例えば、ニューヨーク州で行われた福祉政策が連邦レベルで採用されるなど、学者や地方政府の革新が国家規模の政策に影響を与えました[2]。

3. シンクタンクと外交政策

アメリカではシンクタンクが政策形成において大きな役割を果たしています。

例えば、ランド研究所や外交問題評議会(CFR)は、安全保障や外交分野で多くの提言を行い、政権交代時にはその研究者が政府高官として任命されることもあります。

これにより、学術的知見が直接政策に反映される仕組みが確立されています[3][14][20]。

4. 福祉改革と研究者の貢献

1996年のクリントン政権による福祉改革では、学者による研究が基盤となりました。この改革では福祉受給期間の制限や労働義務の導入といった新しいアイデアが採用され、州レベルでの試験的実施を経て連邦レベルで展開されました[2]。

参照
[1] https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999999_po_062601.pdf?contentNo=1
[2] https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiji/12/0/12_39/_pdf/-char/ja
[3] https://dentsu-ho.com/articles/6713
[14] https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/0/632/200509_061a.pdf
[20] https://www2.jiia.or.jp/pdf/research/H29_US/06_miyata.pdf

最近のアメリカにおける学者や専門家の活躍が政策に影響を与えた具体的な事例として、以下のようなものがあります。

最近の事例

1. 学生ローン免除プログラム

2023年には、バイデン政権による学生ローン免除プログラムが注目を集めました。

この政策は、学者や専門家が提唱してきた教育負担軽減の必要性に基づいています。約2600万人が免除申請を行いましたが、法的な課題に直面し、最終的には最高裁判所で審議されました。このような政策は、教育経済学者や社会政策の専門家による研究が背景にあります[1]。

また、教育政策全般では、地方や州レベルでの選挙結果が教育ガバナンスに影響を与え、学者やシンクタンクがその動向を分析し、提言を行っています。

特に「教育の公平性」や「学校運営の透明性」に関する議論が進んでおり、これらは学術的な研究と現場での実践が結びついた成果といえます[1][8]。

2. 国際学生政策と経済効果

国際学生の受け入れをめぐる政策も注目されています。
2023年には、国際学生がアメリカ経済に約438億ドルをもたらしたと報告されており、この分野での学者やシンクタンクの研究が政策形成に貢献しています。

特に、STEM分野での国際学生の役割や移民政策との連携については、多くの提言が行われています。このような研究は、国際競争力を高めるための具体的な政策提案として活用されています[2][13][16]。

3. 銃暴力防止策

公衆衛生分野では、銃暴力防止策として「リスクベースの銃器政策コンソーシアム」が注目されています。

この取り組みは、学者と政策立案者が協力して証拠に基づく政策を開発し、その結果として8つの州で銃器制限法(Gun Violence Restraining Order Law)が成立しました。このような事例は、学術研究が直接的に法整備に結びついた成功例です[9]。

4. 気候変動と安全保障政策

気候安全保障という概念は、シンクタンクと国防総省や情報機関との連携によって広まりました。この分野では、安全保障専門家や環境学者が協力し、気候変動が国家安全保障に与える影響を分析・提言しています。これにより、政府内外で気候変動への対応策が進展しました[7]。

5. 科学と政府投資への信頼

科学技術への政府投資についても、多くのアメリカ人がその重要性を認識しており、その背景には科学者や学術機関による啓発活動があります。

例えば、新型コロナウイルス危機後も科学研究への政府投資を支持する声は強く、多くの研究者がこの分野で積極的に活動しています[6].

参照

[2] https://www.nafsa.org/about/about-nafsa/international-students-contribute-record-breaking-level-spending-and-378000-jobs[6] https://www.pewresearch.org/science/2023/11/14/americans-trust-in-scientists-positive-views-of-science-continue-to-decline/
[7] https://www.stimson.org/2024/nasty-brutish-and-short-scholars-think-tanks-and-influence-on-policymaking/
[9] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6243447/
[13] https://www.aau.edu/newsroom/leading-research-universities-report/new-analysis-shows-international-students-contributed
[16] https://studytravel.network/magazine/news/0/31033?email=INFO%40BUNGUO.COM

まとめ

我々ビジネスマンでも、情報感度が高い方は、米国の論文を見に行くことはよくあると思います。

こうやって見てみると、日本より情報レベルが高く、ビジネスレベルだけではなく国家レベルで情報レベルが高い事がわかります。

こういうところがGDPに現れるのだろうと思います。

また、こういうように研究などが自由にさせても、政府としてのガバナンスが保たれる。という点は、国家レベルでの管理能力の違いがある。ということも言えるかと思いました。




参照

[1] https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=701
[2] https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/07/dd00a4e03f1760a4.html
[3] https://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/opinion/20100614.html
[4] https://www.cfiec.jp/2021/0046-nakayama/
[5] https://enopo.jp/2018/11/01/善行雑学大学「日本はなぜアメリカと戦ったのか/
[6] https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2012/07/30.pdf
[7] https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000024_po_02410111.pdf?contentNo=1
[8] https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/30/2/30_141/_pdf
[9] https://www.genron-npo.net/member_pdf/009_024.pdf
[10] https://president.jp/articles/-/63447
[11] https://yab.yomiuri.co.jp/adv/chuo/opinion/20091214.html
[12] https://www.jfir.or.jp/cgi/m-bbs/index.php?no=5615
[13] http://ictj-report.joho.or.jp/1901-02/sp07.html
[14] https://ebook.shinchosha.co.jp/nami/201806_16/
[15] https://www.mskj.or.jp/thesis/9954.html
[16] https://lex.juris.hokudai.ac.jp/csdemocracy/workingpapers/j_04.pdf
[17] https://apinitiative.org/2020/12/21/14345/
[18] https://www.spf.org/jpus-insights/spf-america-monitor/spf-america-monitor-document-detail_90.html
[19] https://diamond.jp/articles/-/346822
[20] https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=270
[21] https://www.jiia.or.jp/column/america-fy2021-01.html
[22] https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3022
[23] https://yumenavi.info/vue/lecture.html?gnkcd=g011099
[24] https://www.bbc.com/japanese/articles/c3vrxzggxw7o
[25] https://www.soc.hit-u.ac.jp/~takujit/course-of-faculty/dissertation/2011dissertation/administration.html
[26] https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24243021/
[27] https://www.nomura.co.jp/el_borde/article/0228/
[28] https://www.kubota.co.jp/globalindex/america/01.html
[29] https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_6019129_po_074406.pdf?contentNo=1
[30] https://www.mlit.go.jp/singikai/kokudosin/keikaku/lifestyle/3/shiryou3-1.pdf
[31] https://www.mri.co.jp/knowledge/magazine/dia6ou00000095j7-att/phronesis11_2.pdf
[32] https://note.com/takeuchi_kazuto/n/na810e9b35313
[33] https://nextalk-uniadex.com/column/17481662
[34] https://geopoli.exblog.jp/20842613/
[35] https://ignite.tut.ac.jp/cir/mt_files/dw-kakehashi-011.pdf
[36] https://www.jsme.or.jp/kaisi/1238-40/
[37] https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000077719.pdf
[38] https://www.nids.mod.go.jp/publication/kaigi/studyreport/pdf/study_j2007_05.pdf



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織原松治
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