日本の名目GDP初の600兆円の内訳を調べてみた
先日、名目GDPが初の600兆円を超えたということで、
失われた30年を打破していく兆しと考えることもできますので、
改めて検証してみました。
まず、実質GDPと名目GDPの違いとは?
実質GDPと名目GDPの主な違いは、物価変動の影響を考慮しているかどうかです[1][7]。
名目GDP: 実際の市場価格で計算された GDP
実質GDP: 物価変動の影響を除外して計算された GDP
では、実質GDPの物価変動の除外と言うのはどうやって計算するのか?
計算式はこう言う感じらしい。
実質GDPの算出における物価変動の除去は、GDPデフレーターを用いて行われます。GDPデフレーターの算出と使用方法は以下の通りです:
1. 基準年の設定:
特定の年を基準年として設定します。この年のGDPデフレーターは100とされます。
2. 名目GDPと実質GDPの関係:
GDPデフレーター = (名目GDP / 実質GDP) × 100
3. 実質GDPの算出:
実質GDP = (名目GDP / GDPデフレーター) × 100
それぞれの使われ方と見られ方
名目GDP
経済規模の比較: 国際間の経済規模を比較する際によく使用されます[7]。
市場の実態把握: 現在の市場価格を反映するため、その時点での経済活動の実態を把握するのに適しています[2]。
国際ランキング: 世界銀行やIMFなどの国際機関が発表する国別GDPランキングは通常、名目GDPを基準としています[7]。
実質GDP
経済成長率の測定: 物価変動の影響を除いているため、実際の経済成長を測る指標として使用されます[1][7]。
経済政策の評価: 政府や中央銀行が経済政策の効果を評価する際に用いられます[2]。
長期的な経済トレンドの分析: 物価変動の影響を除いているため、長期的な経済のトレンドを分析するのに適しています[1]。
GDPの世界的な捉えられ方
国際競争力の指標: 特に名目GDPは国の経済規模を示す指標として世界的に注目され、国際的な影響力や競争力を示す一つの指標となっています[7]。
投資判断の材料: 国際投資家はGDPデータを投資判断の重要な材料として使用します。高い成長率を示す国への投資が増える傾向があります[1]。
国際機関の支援基準: 世界銀行やIMFなどの国際機関が各国への支援を決定する際の基準の一つとして使用されます[7]。
為替レートへの影響: GDPの成長率や予測は為替レートに影響を与え、国際的な資金の流れに影響を及ぼします[2]。
世界的な反応
日本の名目GDPが600兆円を超えたことは、世界第3位の経済大国としての日本の地位を再確認させる出来事だったようです。
これは世界の各地域で異なる受け止め方をされています。
欧米(主に北米)
日本経済の回復を肯定的に評価し、貿易パートナーとしての日本の重要性を再認識[1]。
日本の経済政策、特にインフレ目標と賃金上昇の取り組みに注目[1]。
日本企業の国際競争力向上への期待が高まる。
欧州
ドイツとの経済規模の競争に注目[4]。
日本の経済回復が欧州企業にとってビジネスチャンスになる可能性を模索。
日本の金融政策、特に長期的な低金利政策からの転換可能性に注目。
アジア
地域経済のけん引役としての日本の役割に期待[1]。
中国経済との比較で日本経済の相対的位置づけを再評価。
日本企業のアジア地域への投資増加への期待が高まる。
中東
エネルギー資源の主要輸出先としての日本の重要性を再認識。
日本の技術力や投資能力への期待が高まり、経済協力の機会を模索。
アフリカ
開発援助や投資パートナーとしての日本の役割に期待。
日本企業のアフリカ市場への進出増加への期待。
日本の名目GDP600兆円超えは、世界経済における日本の重要性を再確認させる出来事となりました。各地域は日本との経済関係強化の機会を探っており、日本の経済政策や企業動向に注目しています。特に、日本の賃金上昇や投資増加が世界経済にポジティブな影響を与える可能性が期待されています[1]。
参考
[1] https://japan-forward.com/editorial-japans-gdp-hits-600-trillion-yen-in-the-reach-for-sustainable-growth/
[2] https://www.mofa.go.jp/files/000290288.pdf
[3] https://english.kyodonews.net/news/2023/12/645a321b6360-japan-eyes-fy-2024-nominal-gdp-above-600-tril-yen-faster-income-growth.html
[4] https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/securities/investment_other/article_2310_00016/
[5] https://toyokeizai.net/articles/-/681733
[6] https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/zentaihombun_160602_en.pdf
[7] http://www3.nhk.or.jp/news/html/20240815/k10014549441000.html
[8] https://spaceshipearth.jp/gdp/
ただし実態は・・・
ただし実態を見てみると、これは経済力が上がったとは言いづらいのではないかと思います。
日本の名目GDPが600兆円を超えた主な理由と増加した内容は以下の通りです:
インフレーションの影響:
近年の物価上昇(インフレ)が主な要因です[1]。
世界的なインフレの加速が日本経済にも影響を与えました。
円安の進行:
円安により、名目GDPの拡大が続きました[2]。
個人消費の回復:
4月から6月の個人消費は前期比1.0%増で、5四半期ぶりにプラスに転じました[2]。
自動車販売の回復、衣服の販売や外食の売り上げが堅調でした。
設備投資の増加:
企業の設備投資が前期比0.9%増となりました[2]。
自動車生産の回復などが背景にあります。
輸出の増加:
輸出が前期比1.4%増となりました[2]。
自動車を中心に輸出が増えたことが背景にあります[3]。
住宅投資の増加:
住宅投資が前期比1.6%増となりました[2]。
政府の経済対策:
政府の経済対策が下支えとなり、所得環境が改善されました[3]。
長期的な経済成長:
2015年以降、名目GDPは徐々に増加してきました[2]。
これらの要因が複合的に作用し、日本の名目GDPが600兆円を超える結果となりました。ただし、実質GDPの伸びは名目GDPほど大きくないことに注意が必要です。
Citations:
[1] https://mainichi.jp/articles/20240814/k00/00m/020/120000c
[2] http://www3.nhk.or.jp/news/html/20240815/k10014549441000.html
[3] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231221/k10014294691000.html
[4] https://english.kyodonews.net/news/2023/12/645a321b6360-japan-eyes-fy-2024-nominal-gdp-above-600-tril-yen-faster-income-growth.html
日本の最新GDP数値(2024年4-6月期)
名目GDP: 前期比1.8%増(13.5兆円増)で607.9兆円[3]
実質GDP: 前期比0.8%増(4.4兆円増)で558.2兆円[3]
この結果から、日本経済は名目・実質ともに成長を示していますが、名目GDPの伸びが実質GDPを上回っていることから、インフレーションの影響も見て取れます[3]。
実質GDPと名目GDPは、それぞれ異なる角度から経済状況を捉える重要な指標であり、世界経済の分析や政策決定に大きな影響を与えています。両指標を適切に理解し、使い分けることが、正確な経済分析と適切な政策立案につながります。
参考
[1] https://moneycanvas.bk.mufg.jp/know/column/ezyXH5JdsisyjaD/
[2] https://www.bank-daiwa.co.jp/column/articles/2016/2016_18.html
[3] http://www3.nhk.or.jp/news/html/20240815/k10014549441000.html
[4] https://spaceshipearth.jp/gdp/
[5] https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
[6] https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2024/02/28/37611.html
[7] https://www.rakuten-card.co.jp/minna-money/securities/investment_other/article_2310_00016/
今後のGDP増加の見通し
2024年度の名目GDP予測:
政府は2024年度の名目GDPを615兆3000億円と予測しています[3]。
これは前年度比約3.0%の成長率に相当します[3]。
実質GDP成長率予測:
2024年度: +0.5%〜+1.3%(機関により予測にばらつきあり)[1][3]
2025年度: +1.1%〜+1.2%[1][2]
名目GDP成長率の中期的見通し:
2〜2.5%台へ上方シフトする可能性が指摘されています[6]。
これは1993年から2019年の平均成長率0.4%を大きく上回ります[6]。
政府の目標
長期的目標:
政府は2040年頃に名目GDP1000兆円を視野に入れています。
「成長と分配の好循環」の実現:
賃金上昇率を物価上昇率よりも高くすることを目指しています[3]。
具体的な政策:
定額減税や低所得者向けの給付金などのインフレ対策[3]。
企業の賃上げを促進するための税制優遇措置[7]。
2024年度の所得増加目標:
政府は2024年度の所得上昇率を3.8%と予測しており、これは物価上昇率2.5%を上回ります[7]。
課題と展望
生産性向上:
TFP(全要素生産性)の伸び悩みが課題となっています。
内需主導の成長:
個人消費や設備投資など、内需の持続的な拡大が重要です[2][5]。
デフレからの脱却:
岸田首相は「デフレ完全脱却」のチャンスを逃さないよう企業に賃上げを呼びかけています[7]。
金融政策の正常化:
日本銀行のマイナス金利政策や長短金利操作の終了に対する市場の期待が高まっています[7]。
日本経済は名目GDP600兆円の壁を突破し、新たな成長フェーズに入ろうとしています。
政府は内需主導の持続的な成長と、賃金上昇による「成長と分配の好循環」の実現を目指しています。
しかし、生産性向上や実質賃金の増加など、課題も残されています。今後の政策展開と経済動向を注視する必要があります。
参考
[1] https://www.dlri.co.jp/report/macro/336847.html
[2] https://www.dlri.co.jp/report/macro/361099.html
[3] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231221/k10014294691000.html
[4] https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=79226?site=nli
[5] https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=108330
[6] https://toyokeizai.net/articles/-/681733
[7] https://english.kyodonews.net/news/2023/12/645a321b6360-japan-eyes-fy-2024-nominal-gdp-above-600-tril-yen-faster-income-growth.html
所感
政府がGDP1000兆円を目指しているのはプラス要因で、それを目指している動きもあることは良い材料だと思いました。
所得上昇率も物価上昇率を上回っている点は良いかと思いました。
ただ、これは平均なので、実質的な個々人の好影響と悪影響の両方が出るのだろうと思います。
上位との比較
上位との比較もしてみました。
アメリカ
2023年のGDP: 27,360.94億ドル(3,830.53兆円)
2024年の予測: 27,780億ドル(3,889.20兆円) ※日本の約6倍強
2025年の予測: 28,978億ドル(4,056.92兆円)
見通し:
アメリカ経済は安定した成長を続けると予想されています。
中国
2023年のGDP: 17,794.78億ドル(2,491.27兆円)
2024年の予測: 18,649億ドル(2,610.86兆円) ※日本の約4倍
2025年の予測: 19,488億ドル(2,728.32兆円)
見通し:
IMFは2024年のGDP成長率を5%、2025年を4.5%と予測しています。
長期的には、人口の高齢化や生産性の伸び悩みにより、2029年までに成長率が3.3%に低下する可能性があります。
ドイツ
2023年のGDP: 4,456.08億ドル(623.85兆円)
2024年の予測: 4,465億ドル(625.10兆円)
2025年の予測: 4,528億ドル(633.92兆円)
見通し:
IMFは2024年のGDP成長率を0.2%、2025年を1.3%と予測しています。
長期的には、急速な人口高齢化により、中期的にGDP成長率が1%を下回る可能性があります。
こう見てみるとアメリカはやはり強いですね。
中国は相当な借金があり、また実際出ている数値よりも水増ししている事がわかっているので、実際はこれより低い事になるのだろうと思います。
ここには出しませんでしたが、10年ぐらい先には、恐らくここに中東が入ってくるのではないかと思います。
生産性が課題
ずっと言われていますが、生産性の低さがやはりボトルネックのようです。
生産性自体が論点にならないようにできないものか?
アメリカ人や中国人と展示会やネットワーキングで直接会った事がありますが、とても話が柔軟で迅速でした。
これは日本の商文化に無い速さだと感じたことがありました。
ただ両者は「失敗したらやり直したらいい」という文化なので、これに対して日本の文化は「失敗しないように確度が高いものを」と考えますのでそのまま比較することに違和感はあります。
ただ日本のスピードが遅すぎる、時間を掛けすぎている。という側面もあると思います。
弱みの補完
これこそ、弱みの補完として、AIを活用できないものなのか?と思います。
検討を議論する人に、優位性の取り合いで、小さい集団の中で、そこポジション取り争いが発生している事もよくある光景なので、そこも課題ではないかと思います。
もう人間が判断するより、AIに任せていき、妥当性をチェックできる人を育てていくのが良いのでは無いかと思います。