【後編】中国は日本以上に急激に衰退するのかもしれない
昨日に引き続き、後編です。
楽待チャンネル放送の、かりゅうさんインタビューです。
現在の中国経済と大きな問題点
現在の習近平政権が発足したのが2013年の3月。
その頃の経済は「生産過剰」だった。
放って置くと在庫過剰になる可能性が予測された。
その対策で考えられたのが「一帯一路」。
今は債務の罠に嵌めるための枠組みとなっているのが「一帯一路」だが、当時はそうではなく輸出を促進するための在庫過剰を防ぐための仕組みだった。
11年経過して、今の中国は「需要不足」なのです。
(つまり一帯一路を作った時とは真逆)
経済学者を学んでいる人間が何を考えるかと言うと「需要と供給は大まかに均衡しなければならない」という風に考える。
均衡点から離れていく。
これが中国経済が抱えている大きな問題点。
中国経済が減速している理由
ターニングポイントは3年間のコロナ禍
日本、アメリカ、ヨーロッパ、世界各国で大変だったが、基本的にソフトランディングを図った。
厳格な隔離措置をあえて取らず、個人に10万円を払って、零細企業や中小企業に持続化給付金を3回払うなどをした。アメリカ、ヨーロッパはもっと支払っているそうです。
中国はその逆で、厳格な隔離措置を取った。
一般の飲食店やスーパー、ライフラインもすべて止めた。
個人に対する給付金も1人民元も払っていない。
そのために多くの中小企業や路面店が倒産した。
また、その倒産の統計が正しく報告されていないために、おそらく習近平周辺の執行部はそのあたりを知らなかったと思う。との事。
コロナが終わり、力強く回復するだろう。と読んでいたのだと思うが、実際のところは回復しなかった。
なぜ、そうなったかというと、どのくらいの企業が倒産したかを執行部がわかっていないから。
企業が倒産してもう一度創業してこないと経済は回復して来ない。
また若者の失業率が高くなっているので「消費性向が上がらない」
この消費性向がものすごく下がった。
日本へのインバウンドも思ったより少ない
日本にも中国からの旅行に来ているが思ったより少ない。
銀座に来ていた大型観光バスも来ていない。
それはやはり「お金がなくなったから」
逆に「貯蓄性向」があがる
消費性向が下がると消費を減らすので、逆に「貯蓄性向」が上がる。
そうすると中国人はリターンを求める。
投資先は株でも不動産でもない。「ゴールド」に投資する。
株式は買わない。
不動産は買っていたけど今は買わない。
買うと大変な事になるので。
今買っているのは「ゴールド」。
金相場に最も影響を与えるのは中国人の主婦層
一般の家計は金を買う。
ただ、日本と少し事情が違う。
日本では金を買うと金そのものを手数料払うと預かってくれる。
中国は信用がないので、預けない。
なので、金を現物で持っている。
しかし、それも問題があり、
金を買えるようなファミリーだと大体お手伝いさんを雇っている。
ある日、お手伝いさんが来なくなったと思ったら、金がなくなっている。
ということがあるそうで、少しは買うけど、たくさん金を買って自宅に置いておく。という事ができないらしい。
ではどうしているのか?それは海外へお金を飛ばす。(キャピタルフライト)
海外へお金を飛ばして、海外で不動産を買う。
日本でもそういう話を聞くことがあると思うが、アメリカ、カナダ、オーストラリアでもそういう事が行われている。
中国の富裕層はそういったキャピタルフライトを行っているのが一番多いのではないかと思う。との事。
つまり、中国個人の貯蓄は海外に流れている。
中国の貯蓄率の推移(1952年〜2022年)
1952年から見ると上昇傾向にある。
最近は少し下がっているものの、50%程度の高水準を維持している。
貯蓄率はフローの数字で、毎年の可処分所得に占める貯蓄の割合を示す。
中国の高い貯蓄率は、アメリカ人には考えられないレベルである。
日本人は貯蓄する傾向があるが、
中国人の場合は景気が悪く失業率も上がっている。
このグラフの一番右の最新は2022年で、いまは2024年。
すると、実際にはこれよりもさらに貯蓄率が高く、もっとぐーっと上がっているはず。との事。
若者も金塊は買えないが、豆粒ぐらいの小さな金粒を少しずつ購入している。
金は不景気の時の財産として最も強いと思われている。
貯蓄はマクロ経済的にはよくない
高い貯蓄率はマクロ経済にとってあまり良くない。
消費しない。
企業が物を作るが売れない。
家計はお金があっても使わない。
この状態は典型的なデフレの入り口のような状況になっている。
ただ、この統計を習近平主席がこの統計を見ていないと思われる。との事。
中国のGDP成長率の推移(四半期、前年同月比)
2019年からの推移を見ると、直近では4.7%となっている。
各国の経済統計は、定義を変更する事があるので、注意が必要。
少しずつ調整されてミスリードしてしまう事がある。
プロの分析をしている人間は「潜在成長率」と比較をする。
との事。
生産性からこの潜在成長率を計算するのだそうですが、中国はだいたい5%前後ぐらいだと算出できるのだそうです。
潜在成長率が5%前後なのに、
実際は(経済成長率)4.7%ということは、
少しマイナスだと言える。
これから、中国経済のパフォーマンスが思ったより振るっていない。
と言える。との事。
しかし、この4.7%も、消費、投資、貿易がうまく行っていないので実際はこれより低いはず。との事。
このグラフではトレンドを見るべき
コロナ禍が終わったのが2022年。
本来ならば、ココからV字回復で、大きく上に行ってもいいところ。
だが、実際はコロナ後のV字回復が見られていない。
2022年以降は横ばいとなっている。
トレンドまでを改ざんする事は統計当局はできないらしい
一部を改ざんする事はできても、トレンドまでを改ざんする事はできないそうです。
(中国統計当局なのか、世界的に統計当局全般を指しているのかは不明)
インタビューの中ではトレンドの事を趨勢(すうせい)と呼んでおり、物事が移り進んでゆく様子。 また、そのいきおい。 なりゆき。 動向の事を趨勢というそうです。
このまま低迷が続けば、日本の「失われた30年」と同じ道
このまま低迷が続けば、日本の「失われた30年」と同じ道を歩む可能性がある。のだと言う。
中国の若年層 失業率
グラフの見方
2023年の6月までは発表されたており21%超えた。
しかしそれ以降は当局が発表を怖がり、公表を中止した。
その後今年1月に公表を再開して、見た目には下がってきている様に見えるが実際はそうではなく、定義を変更した。
大学卒業後、仕事が見つからず実家に戻った人を失業者としてカウントしなくなった。また、農村から出稼ぎに来ている若者の失業も含まれていない。住民票が都市部にないから。とされているのだそうです。
地方の農村の人口がだいたい半分で約5割。
都市部の失業率二十数%と合わせると、
実際の若者の失業率は50%前後になると推測される。との事。
※一般的な国々の統計では、実家に戻った人を失業者としてカウントしない。という事はないそうです。
※この定義も変更は「食べられるんだからいいじゃない」という根拠から来ているものなのだそうです。
全体の失業率(水色の線)
若年層のグラフ(オレンジの線)が変動しているのに、全体の失業率がほぼ変動しないのは不自然で、信頼性に疑問がある。との事。
これらから言える事
3年間のコロナが中国の若者の雇用に深刻な影響を与えている。
政府が適切に対処していない。という事が言えるとの事。
中国で広がる若年層の不満
かりゅうさんが最後中国に戻ったのが2019年12月だが、SNSで中国の若者の投稿で、不満をうかがい知る事ができると言う。
自殺者の増加
中国人はこれまでは簡単に自殺をしない。
頑張って行きていこうというのが一般的な認識だったそうなのだが、だが自殺者が増えている。との事。
中国で自殺をする時は、川が多い国なので、川で自殺をする。
しかし、ここは、飛び込み防止策として、橋に網が設置されてしまった。
犯罪の増加
仕事無く、お金なく、自殺も阻まれ、ストレスが溜まってくると、
次に何を考えるというと「犯罪」を考えるのだと言う。
日本人の親子が蘇州で刺された事件があったが、こういう事件がかなり多くなった。
正確な統計を中国政府が発表しないので、どのくらいの数があるかわからないが、たくさんそういう動画を見せてもらったのだと言う。
社会がものすごく歪になっている。
本来ならカウンセリングが必要。だが・・・
これだけ経済が下り坂で、生活も苦しいのであれば、本来ならカウンセリングが必要。
日本だと、自殺のニュースなどがあると最後に「この電話番号に相談」と言って相談電話番号が表示されるが、中国社会にはそういうカウンセリングの仕組みがない。若者が希望を失っている状況がある。
アメリカに不法入国
どうしても死にたくはない。
でもこの国ではやっていけない。
そういう若者はアメリカへの不法入国をするのだそうです。
トルコやエクアドルなどのビザが免除されている国に飛んでいって、陸路でメキシコまで行き、米国の国境を超えて米国に不法入国するのだそうです。
トランプが大統領になった場合、これらは容赦しないので、追放される可能性がある。
なお、
アメリカに不法入国している人口が7万人。
さらにメキシコ側には10万人がいるだろう。
と言われているのだそうです。
国を出たくなるぐらい深刻なのだそうです。
ミドル層より下の層が、お金を持ってアメリカに不法移民をするのだそうです。
海外に広がる中国人ネットワーク
富裕層は合法的に先進国へ移住
2種類ある。
投資目的だけでなく、将来の居住を考えて購入する傾向がある。
中国のトップリッチは贅沢な生活が好きで、日本より、アメリカ、カナダ、オーストラリアで豪邸を購入する傾向がある。日本は豪邸が少ない国なので。
ただ、彼らは日本は好きな国なので、セカンドハウスとして日本の物件を購入することがある。年に数ヶ月来て滞在すると言う人もいる。
アリババの創業者のジャックマーなど有名人も時々日本に滞在している。
中国の知識人が日本に来ている
ミドル層の少し上のクラスに当たる中国の知識人が日本に来ている。
バーチャル中国を作ろうとしている富裕層・知識人・有識者
中国本土の経済低迷に対し、海外に出た中国人がバーチャルな中国を形成している。グレートチャイナネットワークと呼ばれる。
インターネットを通じて世界中の中国人が繋がっている。
例えば、北京大学を卒業した同級生で、3人は東京、2人はベルリン、、、ロンドン、ワシントン、パリのように全世界に散らばっていくわけだが、これがインターネットでつながりを持っている。
昔の中国人は海外に行くとチャイナタウンに行く。そこに行くと中国に住んでいたときと変わらないような生活で生涯を終える。
いまは違う。
情報、人材、資金が循環するネットワークが形成されているので、バーチャルのチャイナになっている。
そのバーチャルチャイナの首都はどこにおいているかというとシンガポールに置いているのだと言う。
アリババのジャック・マーの奥さんがシンガポールのパスポートを取得したのだそうです。
アリババはいま、シンガポールに、インターナショナルフィナンシャルセンタービルというビルを建設しているのだそうです。
ネットワーク同士のリンク
こういうネットワークは、ほかのネットワークを形成している、ユダヤ系のネットワークやイスラム系のネットワークなどと必ずリンクしていく。
中国本土には戻ってこないが、中国周辺の世界で新しい中国ができることになる。
これらのネットワークがどう発展していくのか?
情報、人材、資金が循環するネットワークが形成されて行くわけなので、それらを使って特定のユートピアを目指すわけではなく、ネットワーク化によるパワーの増大を図る。
自己実現や技術イノベーション、医学研究などの推進や、世界への貢献も視野に入れている。
オープンなネットワークであり、他のグローバルネットワークとの連携も期待される。
日本への提言
日本はこういうネットワークへのアクセスを力をいれるべき
アメリカの大統領選挙と中国経済への影響について
ハリス氏とトランプ氏が候補として出ており、結果は予測困難。
中国政府としてどちらが望ましいか?というと民主党政権の方が付き合いやすい。
なぜかと言うと、なにか制裁をするにも事前に警告をしてくれる。
トランプ氏は前回もそうだが予測不可能で、朝起きたら制裁が始まるような事があり、相手の気持ちを考えないところがあるので、習近平政権ににとって怖い存在だと思う。との事。
アメリカの中で起きている不思議な現象
歴史上、共和党と民主党は対立してきた。
ただ、現在、対中国政策については共和党と民主党が一致している。
これは中国にとっては都合の悪い状況。
トランプ氏が当選した場合
トランプ氏が当選した場合、
強いアメリカを取り戻す!
のような事を言うと思うので、そうなると、製造業中心にアメリカが強化していくわけなので、中国も製造業で出ていこうとしているわけなので、中国は日本で言うところの産業空洞化が懸念される。
今日一貫して言っていることでもありますが、習近平主席は状況の重大さを理解していない可能性があるので、対応はまだしていない。と思われる。
中国経済は今後どうなっていくのか?
良くしようと思えば簡単ではある。
人民に自由を与えれば、中国人はやる気満々なので経済は回復する可能性がある。
だが与えなければ、経済は回復しない。
習近平主席の立場になって考えてみると、人民に自由を与えたくない。
もっとコントロールしてやりたい。
三中全会では、随所に共産党指導体制の強化が盛り込まれていたが、指導体制が強化されると益々経済は低迷していく。
により経済は低迷する可能性が高い。
10年以内に中国経済が回復するのは難しいと予想される。
日系企業が取るべき戦略
サプライチェーンの最適化を考える必要がある。
一部の業種では中国からの撤退が進んでいる。
日本企業は決断に時間がかかるが、一旦決めると一斉に動く傾向がある。
中国でのビジネスの再編がかなりのスピードで進む。
ただし完全な撤退(ゼロチャイナ)はありえない。
一部の企業は日本に戻るか、ベトナムやインドなどに移転するような再編が行われる。との事。
敢えて行ったほうがよい業種はあるか?
中国政府で反スパイ法の改正があったが、敢えて行ったほうがよい業種としては、経済安全保障の観点から影響を受けにくい流通などは進出の余地がある。
一方で、自動車や半導体関連などのハイテク産業は厳しい。
アメリカという怖い存在があるので、経済安全保障の枠組みに則って、中国以外のところにシフトすべき。
流通というところでは、
例えばデパートなどは続々と閉店している。
伊勢丹など閉店したが、あれは中国にとっては実はよろしくない。
なぜ流通の企業が閉店したかと言うと、消費が控えられているから売上が減少したため。若者が消費しない。
デパートというのはまず家賃が高い。
自社ビルを持っているというのはまず無いので、売上が伸びなければ即座に徹底することになる。
企業ごとの戦略によるところがある
かりゅうさんの知人で、現在の状況をチャンスと捉えている物流の経営者もいる。
大連にその知人社長が行った時に、若者が「仕事したい」というボードを掲げて立っていたのを見た。そういうガッツのあるところと物流もガッツがいるようなところがあるので、そこにアンテナが反応して行くべきだと捉えた。というような話をされていた。
日本には護送船団という考え方があって、行くときは一緒に揃って行く。しかし、各々の会社の資源をもう一度精査して、得意分野と不得意分野を欲考えて、残るべきか去るべきかを良く考えて判断した方が良いのでは無いかと思う。
海外の一流人材を引き付けてほしい
大学も企業もそうだが、
海外の人はみんな日本に来たいと思っている。
もっとアグレッシブにやってほしいのが、海外の一流人材を引き付ける事。
どんどん海外から優秀な人材を取る事が、日本のひとつの原動力になると思う。