【米国調査19】アメリカの不動産事情
今回は、不動産事情について調べて見ました。
その国の毎月不動産に支払っている金額割合というのは、その国が活発かどうかを知るのにわかりやすく、
日本では毎月に支払う家賃や家の支払いは
だいたい月収の3分の1ぐらいに留めるのが一般的。という風に言われていると思います。
すると、給与の3分の2が可処分所得になるわけなので、こちらは消費に使う事になる。
飲みに行ったり、ショッピングをしたり、旅行に行くことで、ストレスの解消や、やりたかった事を行って、精神的な充足を得ることができるため、可処分所得の多さや比率の高さが、日々の満足度に影響が出てくる。
少し話が逸れますが、ある国では経済成長もしているものの、給与に占める不動産の比率が約2分の1なのだそうで、都市部に人口が集中しすぎて不動産価格が上昇の一途をたどり、実質は自由に使えるお金が少ない。という状態なのだそうです。
アメリカでの住宅費の負担率
調べてみると、
2023年、アメリカでは4,290万世帯が住宅コスト負担率30%以上に達し、過去最高を記録しましたのだそうです。これは全世帯の約32%に相当します。
さらに深刻なのは、2,150万世帯(全世帯の約16%)が収入の50%以上を住宅費に費やす「極めて負担が大きい」状況に陥っていることです。
日本では住宅費負担率は23.8%
日本では、総務省の「令和5年度 住宅経済関連データ」によると、勤労者世帯の住居費支出割合は2022年で約23.8%となっているそうです。
※分類別
平均的な勤労者世帯:約7.1万円(23.8%)
住宅ローン返済世帯:約4.9万円(16.4%)
賃貸住宅の単身世帯(負担率30%超の場合)
国土交通省:令和5年度 住宅経済関連データ
住宅費負担率の高さはアメリカの社会課題
これらはアメリカの社会課題になっているそうで、都市部ではホームレスにあふれていると以前投稿しましたが、ホームレスの増加問題につながっているそうで、また、若年層も通常は成人すれば家を出ていく慣習だと以前の投稿で書きましたが、4人に1人は、実家に戻ってきてしまっているそうです。
また、ホームレス増加によって治安問題も起こっているのだそうです。
日本の不動産と前提が違う部分もありますので、そのあたりから調べてみました。
アメリカの不動産価値の推移と日本との相違
日本とアメリカでは、不動産価値の経年変化に大きな違いがあります。
日本:築年数が経つにつれて価値が下落する
アメリカ:適切なメンテナンスにより、築年数に関わらず価値が維持または上昇する傾向[1][4]
アメリカでは、過去40年間で中古住宅価格が約8倍に上昇しており、10年で約2倍になる傾向があります[1]。
こういった背景から、アメリカ人の自宅に対する行動や思考は、不動産価値の維持・向上という観点から以下のような特徴があるそうです。
メンテナンスへの積極的な姿勢
アメリカ人は自宅を「投資」として捉え、資産価値を維持・向上させるために積極的にメンテナンスを行います[6]。
DIY文化の浸透: 休日に家族で壁や庭のフェンスのペンキを塗ったり、草刈りをしたりするなど、家のメンテナンスを日常的に行います[2]。
専門家の活用: 必要に応じて専門家に依頼し、適切なメンテナンスを行います。
Youtubeでアメリカ人がDIYの動画をよく出していると思うのですが、それはこういった事情があるからなのかもしれません。
リノベーションへの投資
価値向上のために、計画的にリノベーションを行う傾向があります。
キッチンやバスルームの重視: これらの場所は不動産価値に大きく影響するため、特に注力します[8]。
エネルギー効率の向上: 省エネ設備の導入など、長期的な価値向上につながる投資を行います。
キッチンやバスが不動産価値に大きく影響する。というのは日本と違う点ですね。日本だと、そういったものに関係なく、築年数や場所に対して価格が決まってきます。
資産としての意識
自宅を単なる居住空間ではなく、重要な資産として捉えています。
資産価値の把握: 定期的に自宅の市場価値を確認し、資産状況を把握します[2]。
売却を視野に入れた管理: 将来の売却を念頭に置いて、常に良好な状態を維持します。
ここは完全に日本人の家に対する考え方と違う点だと思いました。
日本だと自分の生涯の所有物と捉えて購入する方が多いのではないかと思いますが、これは資産を作っていく。という意味ではアメリカの不動産の捉え方はとても合理的だと思いました。
住み替え文化
ライフステージの変化に合わせて積極的に住み替えを行います[5]。
キャリアや家族構成の変化: 転職や子供の誕生など、生活環境の変化に応じて住み替えを検討します。
投資機会の活用: 住み替えを通じて、不動産市場の上昇トレンドを活用します。
これもとても合理的で、日本とは違う点だと思いました。
独身時代と家庭を持った時代では求める不動産の条件が違いますが、もう少し細かく見ていくと、子どもが生まれて間もない時期と、学校に通う時期、大学に行った時期、社会人になった時期でも違います。その後の子育てが終わった時期、セミリタイア、リタイア、終活の時期でも違いますので合理的だと思います。
コミュニティへの貢献
HOA(Home Owners Association)などを通じて、地域全体の資産価値維持に貢献します[3]。
外観の統一: 地域の景観を損なわないよう、外観の管理に気を配ります。
共有施設の維持管理: コミュニティの共有施設の維持に協力し、地域全体の魅力を高めます。
これらの行動や思考は、アメリカの不動産市場において中古住宅の価値が維持・上昇する傾向と密接に関連しています。自宅を「消費財」ではなく「投資財」として捉えるこの姿勢が、長期的な資産価値の向上につながっているのです。
Citations:
[1] https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk65.pdf
[2] https://www.idaiko.com/column/100years/
[3] https://mitomi-estate.com/hoa_usa_single-family-house_area-asset-value/
[4] https://wedgerc.com/2024/11/27/季節ごとのメンテナンスの重要性/
[5] https://housing-you.com/topic/value-of-housing/
[6] https://mitomi-estate.com/take-back-500-trillion-yen_those-who-maintained-second-hand-housing-gains/
[7] https://www.hawaiiliving.jp/blog/real-estate-vs-stock-market/
[8] https://manesetsu.jp/4590
[9] https://www.oakhome.co.jp/blog/japanorusa1105/
アメリカの不動産は中古住宅市場が中心
アメリカの不動産市場では、中古住宅販売の方が新築住宅販売より規模が大きいです[9]。このため、中古住宅市場が自然と活性化しやすい環境にあります。
これらの要因が相まって、アメリカでは中古住宅が主流となり、全体の約8割を占める流通市場を形成しています[4]。
日本では新築住宅が主流であるのに対し、アメリカでは中古住宅市場が活発です。
日本:新築住宅の流通が約8割を占める
アメリカ:中古住宅の取引が約8割を占める[1][2]
この違いは、両国の消費者の志向や不動産に対する考え方の違いを反映しています。
アメリカで中古住宅が多く流通する理由には、いくつかの要因があります。
不動産価値の維持・向上
アメリカでは、適切なメンテナンスにより築年数に関わらず不動産の価値が維持または上昇する傾向があります[1][4]。過去40年間で中古住宅価格は約8倍に上昇しており、10年で約2倍になる傾向があります[4]。このため、中古住宅も魅力的な投資対象となっています。
税制上の優遇
アメリカでは、オーナーが変わるたびに27.5年で減価償却が可能です[4]。これにより、築100年の建物でも税務上のメリットがあり、中古住宅の価値が維持されやすくなっています。
※減価償却≒つまり経費として計上することができ、収入から課税対象となる金額を減らせることができ、納税金額が少なくなる。という意味。
新築供給の制限
アメリカでは、日本と比べて新築住宅の供給が制限されています[2]。人口約3.3億人に対し年間約100万件の新築供給であるのに対し、日本は人口約1.3億人でほぼ同じ供給数となっています[3]。この制限により、中古住宅市場が活性化しています。
日本では、新築供給の制限は行っておらず、政府による直接的な供給制限は市場経済には馴染まないと考えられています。需要と供給のバランスは市場メカニズムによって調整されるべきだという考え方が根底にあるのだそうです。
また、経済政策との関連性も高く、新築住宅の建設は日本経済の重要な部分を占めており、建設業や関連産業の雇用維持、経済成長の促進などの観点から、政府が積極的に制限することは避けられているのだそうです。
※ただ、新築の件数は年々減少しており、特にここ10年の減少は顕著なのだそうです。
住宅に対する考え方の違い
アメリカでは、住宅を長期的に使用する文化が根付いています[2]。リフォームを行って長く家を使用する傾向があり、古い物件でも適切にメンテナンスされていれば価値が認められます。
建築の特徴と耐久性が違う
アメリカの木造住宅は、適切なメンテナンスを行えば70年から100年以上の耐久性があります。統計によると、現存するアメリカの住居用物件の3分の1以上が1960年以前に建てられたものです。
なぜそんなに長期的に住宅がもつのか?
日本の建築も素晴らしいと聞きますが、なぜそんなに違いがあるのか調べてみました。
構造的特徴
昔からコンクリート基礎が一般的
地下室や這い込み空間(クロールスペース)を設けることが多い
ツーバイフォー工法が主流
2x4や2x6の規格化された木材を使用
耐久性を高める施工
外壁下地に防水シートを施工し、雨水の侵入を防ぐ
壁内に厚い断熱材を充填し、結露を防止
強制換気システムを導入し、湿気対策を徹底
メンテナンス文化
ホームインスペクションが一般的
※住宅の状態を専門家が調査・診断するサービス定期的な点検・補修を行う
サイディングの塗り替えや交換を定期的に実施
※建物の外壁に使用される仕上げ材
設計思想
オープンプランが多い
将来の改修を考慮した設計
木造フレームの柔軟性を活かした耐震設計
※オープンプランとは、住居の内部を固定した壁などで区切らず、間仕切りを少なくして空間に連続性を持たせる設計手法だそうで、
空間の連続性:
キッチンとリビングなどが一つの大きなスペースとなり、開放的な空間を作り出します。
多目的利用:必要に応じて間仕切りを変更し、多目的に使えるようにします。
広々とした印象:
小さなスペースでも広々とした印象を与えます。
家具配置の自由度:
家具やインテリアの配置が自由自在になります。
コミュニケーション促進:
オフィスでは、従業員同士のコミュニケーションを促進する効果があります。
一方で、以下のようなデメリットもあるようです。
音や匂いの伝播:他のスペースに音や匂いが流れやすくなります。
プライバシーの問題:個人の空間が確保しにくくなる場合があります。
集中力への影響:オフィスでは、騒音により仕事への集中が妨げられる可能性があります。
これらの特徴により、アメリカの木造住宅は70年から100年以上の耐久性を持ち、長期的な使用が可能となっています。
Citations:
[1] https://originalwood.jp/post-4035/
[2] https://www.megasoft.co.jp/3dod/glossary/open_plan_office.php
[3] http://www.katoh-net.ac.jp/Elementary/09-1.php
[4] https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=00057&wdid=01
[5] https://www.regus-office.jp/blog/learn/20170118/
[6] https://www.houzz.jp/discussions/3427654/
[7] https://www.nasluck.co.jp/dictionary/reform/32189-01/
Citations:
[1] https://yestage-kai.jp/blog/2020-0819/
[2] https://news.mrl-tokyo.com/blog/entry-440008/
[3] https://armagiraffe.co.jp/why-increase-american-real-estates-price/
[4] https://usa-invest.jp/blog/feature10/
[5] https://usa-invest.jp/blog/realestate-depreciation/
[6] https://sg.wantedly.com/companies/company_1961416/post_articles/476696
[7] https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/08/0bda624e9294e853.html
[8] https://gentosha-go.com/articles/-/27365
[9] https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/he/J0870.html
不動産取引の透明性
情報公開の度合いに違いがあります。
日本:不動産価格や取引履歴の情報が比較的不透明
アメリカ:不動産情報がオープンで、一般消費者でも容易に調べられる[5]
不動産仲介業者の選び方
不動産取引を依頼する際の選び方にも違いがあります。
日本:不動産会社のブランドや知名度、業歴を基準に選ぶ傾向
アメリカ:個々の不動産エージェントの実績や経験を重視して選ぶ傾向[3]
土地と建物の価値比率
不動産価値における土地と建物の比率が異なります。
日本:土地の価値が高く、建物の価値が低い傾向
アメリカ:エリアによって異なるが、建物の価値が高い傾向がある[4]
新築供給の状況
新築住宅の供給状況にも違いがあります。
日本:需要に対して供給が過剰な傾向
アメリカ:新築の供給が比較的少なく、特に都市部では中古取引が中心[4]
これらの違いは、両国の法制度、経済状況、文化的背景など、様々な要因が複合的に影響しています。アメリカの不動産市場は、日本と比べて中古物件の流動性が高く、投資対象としての魅力も高いと言えるでしょう。
Citations:
[1] https://usa-invest.jp/blog/feature10/
[2] https://news.mrl-tokyo.com/blog/entry-440008/
[3] https://www.000area-weekly.com/アメリカと日本の不動産の違い/
[4] https://usa-invest.jp/blog/realestate-depreciation/
[5] https://reinvent.co.jp/nichibei/
[6] https://sg.wantedly.com/companies/company_1961416/post_articles/476696
アメリカの不動産事情のまとめ
日本より、結構な割合で、住宅費負担率があるのがわかりました。
収入額は、日本人より多いわけですが、住宅負担率が高いことや、日本のように些細なことでも店員の礼儀正しさや、清潔さなどが無い国なので、意外と普段の生活の懐事情も満足度も意外と低いのではないかと思いました。
アメリカの映画やニュースなどでプール付きの家をよく見ますが、アメリカ人の志向や土地の広さというものありますが、それを下支えしているのは、アメリカの不動産の価格は年々上がっていくことと、その都市にある企業に雇用される人材の給与を上げなければ雇用できない。という事情から、個人に落ちるお金が大きいんだろうな。と感じました。
インフレを長期間起こすための根底にある仕組みなのかも?とも思いました。
余談
中古市場が活発になるような家の作りをしており、バンバン新しい家を作らない事はとても良い仕組みで、資産にもなるということは非常に良いと思いました。
日本も土地が無限にあるわけではないので、新築を作る方式から、こういう市場になるように、この仕組みを検討すべきなのではないかと思いました。
ただ、一方で値上がりし続けるために、ホームレスが増加して治安や若者の自立を阻害している要因になっている事や、可処分所得が低く自立できないというのは、これは政府介入すべき事なのではないかと思います。
価値(価格)が上がり続ければ、オーナーと納税される地方自治体だけは良いでしょうが、その都市にも、その都市に住む住人にも好影響があるのでしょうか?
その街が活性化するかどうかと言う意味で行くと、その街にある企業で働くひともいるわけなので、給与水準を上げなくては行けないですし、当然それはその企業が生み出す製品の価格にも転嫁させなくては行けない。
消費性向(消費意欲)も抑えがちになると思いますので、別の意味で税収も減る。
固定資産税と消費による税金額の比較をしなければどっちが良いとは言えませんが、消費による税収を考えたほうが、その都市のパフォーマンスの総量も、その地方自治体の税収の総額も、その都市に住む住民の満足度も、全体的に上昇するのではないかと思いました。