点、線、面 ①
水墨画は点、線、面の用筆から訓練し始めますが、点、線、面についての考え方についてはしばしば議論が別れるところです。
絵画はすべて点や線や面で描かれています。点とは小さなドットで、点を運動させるとその軌跡は線となって現れます。線が密に集合すると面となります。つまり初めに点があって、次に線、そして最後に面に至ります。
この理屈は至極まっとうなもので一見疑問の余地はないようにも思えます。
ところが東洋画では少し事情が違ってきます。
実は東洋画では点と面はほぼ同じものなのです。
これは翰墨(墨で書画を書くこと)の道具として筆が発明されたことに大きく起因します。筆の穂には毛の長さの分だけ幅があり、大きい筆になると数十センチになるものまであります。
墨を含んだ筆先を紙にちょっとつければ、これはもちろん点として認識されます。では筆の穂を全部紙面につけて少し移動させるとどうか。西洋絵画に慣れた目では、現れた墨面は文字通り面として認識されるでしょう。しかし西洋画では面と見なされるものが東洋画では点と理解されるのです。すなわち面は幅の広い点とも言えるでしょう。
東洋画では初めに点と面が同時にあり、それを運動させた究極の姿が線ということになります。水墨画が線の芸術と言われるのもこういったことによるのかもしれません。