苦手と苦手意識の違い(『発達障がい~神からの贈り物~』第89回)
私はずっと器用だと思って生きてきた。発達障害の診断を受けるまで。
診断結果は私の指先の器用さが平均値より低いと告げられた。青天の霹靂のような感覚に少しの間浸った。
さて、発達障害の困りごとの代表的なものとして、「苦手なこと」「苦手意識」というものが挙げられると思うが、上記の苦手なことと苦手意識は実は全く異質であるが混同されやすい。
私の場合は先に述べたように客観的には指先の微細な動きが苦手なはずなのに、主観的には得意分野だと認識して生きてきた。もちろんそこには苦手意識は存在せず、その恩恵として様々なことにチャレンジし、他より上達は遅いものの結果的にできることも増えたのだと思う。
一般的には苦手と思うのは苦手意識がそうさせているだけということも少なくないと思われる。自身でハードルを上げすぎて苦手意識が強くなっていそうな人も多く見かける。
一旦苦手意識が芽生えるとチャレンジしなくなりやすく、経験値が増えないために更に苦手意識が強まるという悪循環に陥りやすい。ではなぜ苦手意識が生まれるのだろうか?どうすれば苦手意識を克服できるのだろうか?
きっと苦手意識は過去に経験した失敗などがトラウマチックになっていることがほとんどだと私自身は認識している。その失敗を繰り返してしまう恐怖が苦手意識として現れているのではないだろうか?
心理学的にはトラウマと向き合うにはその過去の経験をもう一度記憶の中から引きずり出して記憶を整理し治すと良いらしい。HDDのエラーを起こすファイルを見つけ出して読み込み、エラーを修正して上書き保存するのに近いように私自身は感じる。ただし、トラウマになるような経験は誰もが思い出したくないようなものなので呼び起こすのに大きなエネルギーが必要となる。私自身も経験したが過去のつらい経験と向き合うのは物凄い労力が必要だった。
心理学的な療法は専門の書物やカウンセリングに任せるとして、今回は自身の中の苦手なことと苦手意識が必ずしも一致するとは限らないことを認識してみると新たな側面が見えるかもしれない。一度試して貰いたい。無理しない範囲で。