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キラキラ深い海で

 今日六本木で見知った女の子とすれ違った。
 去年の夏、仕事終わりの朝ベロッベロで飲みに行った六本木のバーで知り合った女の子だった。当時彼女は老舗高級クラブの黒服で働いていた。働いてまだ日が浅く、昼職メインということもあり、まだまだあどけなさが残っていた。だけど黒服にしとくのは惜しいという印象。その感覚は間違っていなかったようで、やはり元々はキャストとしてスカウトされていたらしい。しかし、彼氏がいるからキャストはできない、けれど自分をそう思ってくれるような知らない世界を知る良い機会だということで黒服になったと言っていた。殊勝なことよ。僕が働いている店にも仕事終わりにたまに遊びにきてくれるようになった。が、突然ぱたっと来なくなり、去年の暮れに彼女が黒服をやめたと風の噂で知った。
 そして今日、久々に見る彼女は夜の匂いをふんだんに纏い、六本木の大通りを歩いていた。すれ違い様に目があったが、彼女も僕も気づかないふりをした。少なくとも彼女はそうだった。
 今日も女性たちが20時前に六本木を足早に歩いていく。
 僕の目に狂いはなかった。


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