「チーム」になるために。「チーム」でありつづけるために。
この記事は「組織を芯からアジャイルにする」をテーマに活動するコミュニティ「シン・アジャイル」が運営する note マガジン「【ほぼ月刊】シンアジャマガジン Vol.2」に向けて執筆したものです。
Vol.2 のテーマは「チームがアジャイルになるときに、最初の頃にやるべきこと」。改めてこのテーマについて考えたとき、思いついたことが最初の頃だけでなく、いい「チーム」であり続けるためには何度でもやった方がいいよなぁ、と感じた結果このタイトルになりました。
この記事ではチームが最初に取り組み、そして継続的に取り組み続けるべき2つのことと、そのためのプラクティスを紹介します。
目的を確認する
「チームがアジャイルであること」は目的ではなく、手段のはずです。また、アジャイルなチームが実践している様々なプラクティスも、その実施自体が目的ではなく、何かを達成するため、もしくは何らかの課題を解決するための手段に過ぎません。
「アジャイルでやろう、スクラムでやろう」と動き出したとき、往々にして人は「スクラムとは斯くあるべし、そうでないのは問題だ」と形式にこだわり、その形式に全員をはめ込もうとやっきになってしまいます。
でもちょっと待って欲しい。なんでスクラムでやろうとしてるんだっけ?
そもそもの目的、それによってどんな効果を期待しているのかを見失っていないか、少し立ち止まって考えてみて欲しいのです。
アジャイルであることや、その手法としてスクラムであること、更に言えばそこでデイリースクラムをやる理由は?スプリントレビューって何の為にやっているんだろう?ということをチーム全員が理解できているか?と自問自答してみてください。
目的をチーム全員が理解し、そのために一致団結して進み始めたときが、そのチームにとって本当の「アジャイル化」の第一歩だと思います。
じゃあ目的を確認するため、見失わないためにはどうすればいいんでしょうか。
そうです。ふりかえりの出番です!
「そんなのやってるよ!」「当たり前じゃないか!」と感じた人も、騙されたと思ってもうちょっとだけ付き合って欲しい。
「とりあえず毎週やってるから OK っしょ!」と思っていませんか?
「ふりかえりと言えば KPT でしょ?」と思い込んでいませんか?
「やってはいるけど盛り上がらないし、今更がんばってもしょうがない」とあきらめてしまってはいませんか?
毎週やっているふりかえりは、どうしても「1週間で起きたこと」に対するふり返りになってしまいがちです。また、KPT は優れたふりかえり手法である一方で、Keep という表現が人によって捉え方が異なっていたり、ずっとそればかりだとマンネリ化して盛り上がりに欠けてしまったり、そもそも KPT が合わないチームだってこの世には存在するのです。
そこで、騙されたと思って次のような取り組みをしてみてください。
「今のチーム・組織について、いいと思うところ・悪いと思うところ」のふりかえりを通常のレトロスペクティブとは別に実施してみる。
KPT 以外のふりかえり手法を試してみる。
1つ目について。いつもと着眼点を変えてチーム・組織を見つめ直してみることで、新たな発見があることも珍しくはありません。そこで気付いたチームの最大の問題点を解消することが、チーム活動の最初の目的になるはずです。
2つ目について。世の中には実に様々なふりかえり手法に溢れています。ふりかえりの目的や、チームメンバーの性格などによって適しているふりかえり手法は異なるので、たまには気分を変えて KPT 以外のふりかえり手法を試してみてはいかがでしょうか。
ふりかえり手法については様々な資料や記事、サイト、書籍があるのでそれらを参考にしてみてください。
お互いのことを知る
あなたは一緒に働くチームメンバーのことをどれだけよく知っていますか?
例えば、初めて一緒に働くメンバーがいる場合などは、お互いのことをまだよく知らないはずですし、仮に長く一緒に働いていたとしても、やりとりが少なかったりすると、案外お互いについてわからないことや思い込みがあったりするものです。
組織の成長段階を表す有名な考え方として「タックマンモデル」というものがあります。それによると、チームは「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」という段階を踏んで成長してき、役目を終えたチームが解散していくことを「散会期」としています。
チームの初期段階である「形成期」においては、まだお互いのことがよくわからず、チームはうまく機能することができません。また「混乱期」をうまく過ごすことができずに空中分解してしまい、チームが瓦解してしまうこともあります。
つまりチームとして成長し、高いパフォーマンスを発揮する「機能期」の状態となるためには、相互理解と高い心理的安全性が欠かせません。そのためには、まずはお互いのことをよく知る必要があります。
チームの相互理解を深めるための取り組みとして、とても有名なのがドラッカー風エクササイズです。有名すぎて今更紹介するのは気が引けるレベルです。
ドラッカー風エクササイズとは、アジャイルサムライの著者である Jonathan Rasmusson 氏が提唱したチームビルディングのための手法です。次の4つの質問に全員が答えることで、相互理解を深め、期待値の擦り合わせができるとされています。
自分は何が得意なのか?
自分はどうやってチームの成果に貢献するつもりか?
自分が大切に思う価値は何か?
チームメンバーは自分にどんな成果を期待してると思うか?
上記の質問を少しアレンジしたり、質問を追加したりすることも多いです。「ドラッカー風エクササイズ」で Google 検索をすると上位に表示されるので「ペパボエディション」をご存じの方も多いかも知れません。
我々のチームでは、実施の目的やタイミングによって質問をアレンジすることが多いですが、新しいメンバーが参加したときなど、つまりチームが「形成期」である場合によく追加しているのは次の質問です。
地雷 - あなたにとって耐えがたいこと、周りで起きて欲しくないことはなんですか?
これをお互いに知ることで、余計なストレスをお互いに感じることがないように仕事を進めることができるようになるのでオススメです。
もちろん、やむを得ず誰かの地雷を踏み抜くことを避けられない場面もありますが、その場合でも事前や事後にフォローをすることができるようになります。
ドラッカー風エクササイズは、チームの形成期〜混乱期にやるのはもちろん、すこし慣れてきた統一期〜機能期に改めて実施してみるのもオススメです。チームとして活動していく中で考え方がアップデートされていたり、慣れない頃は表明できていなかった新たな発露があるかもしれません。
オフラインで集まることができる場合は、ホワイトボードや壁に付箋を貼るスタイルがオススメですが、リモートで実施する場合は Miro や Google の Jamboard を使ったり、シンプルに Google スプレッドシートなどを使ってみてもいいでしょう。
ドラッカー風エクササイズを実施することで相互理解が深まるだけでなく、自分自身の理解が深まることもあります。まだやったことがない方は是非やってみてください。必ず何か新しい発見があるはずです。
最後に(宣伝)
冒頭でもお伝えしたとおり、この記事は「組織を芯からアジャイルにする」をテーマに活動するコミュニティ「シン・アジャイル」が運営する note マガジン「【ほぼ月刊】シンアジャマガジン Vol.2」に向けて執筆したものです。
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