身分証がスマートフォンの中にあるのはもう当たり前?
最近何かと話題になっているマイナンバーカードでは、今年の5月からスマートフォンのアプリ(Androidからスタート)で一部の行政サービスの利用や申込ができるようになりました。身分を証明するものとしては、マイナンバーカード以外に学生証や社員証、会員証などがありますが、実はNSGグループの(株)ジェイ・エス・エス(以下“JSS”)という会社でそれらの身分証をデジタル化したサービスを政府に先んじて展開しています。それはMyiD(マイディ)というスマートフォンアプリを使ったサービスで、2017年に学生証アプリの“がプリ!”をリリースさせたところから始まりました。今回はそのデジタル身分証アプリについて紹介したいと思います。
メッセージ送信や出欠確認、災害時の安否確認も
MyiDがどういうものかというと、物理的な身分証をデジタル化したもので、学生証や社員証、会員証などをスマートフォンで提示できるようにするためのアプリです。学校や会社など所属する組織が事前に学生や社員を登録し、その後に学生や社員自身がアプリをダウンロードし、本人確認の認証手続きを踏むことで利用できる仕組みで、セキュリティ面でも十分な対策を行って真正性を担保できるサービスです。
この身分証アプリは、組織の全メンバーが必ず利用するため、組織の活動の中心的な存在になります。その特性を活かし、デジタル身分証以外にも様々なサービスを提供しています。例えば、休講情報など学生へのメッセージの送信や掲示板機能、ビーコンを使ったスマートフォンでの出欠確認や出退勤の管理、災害時の安否確認などの機能も搭載しています。コロナ禍には、検温管理機能やオンラインでの出席登録の機能などもリリースしご好評をいただきました。
また、複数の身分証を一つのアプリで利用することができるというメリットもあります。例えば、社会人の方が社員証とプライベートで利用しているスポーツクラブの会員証、二つの身分証をアプリ内で切り替えることができるため、身分証明書で財布がかさ張ることがなくなります。学生証アプリの場合は、卒業した後「卒業生アプリ」としても利用可能で、卒業後も学校と卒業生がつながりを維持し続けるためのツールとしても活用できます。
NSGグループでもMyiDを社員証として利用しています。身分証明に加えて、プッシュ通知を活用したグループ全体への情報の伝達や社員手帳の機能として経営理念や行動哲学、行動指針の掲載、検温管理、グループ内の情報共有サイトへの入り口を配置するなど幅広く活用しています。
グループの専門学校のニーズを元に開発されたシステム
MyiDを開発したJSSは、スマートフォンアプリやクラウドシステムの設計から開発、販売までの全てを自社で行っています。他にも、ネットワークの構築やICT機器関連の販売事業などICTに関連した事業を幅広く行っている会社です。NSGグループの学校法人と連携して学校運営に関する様々なシステムの開発を行い、全国に販売してきた実績を数多く持つ会社ですが、MyiDも学校との連携の中で生まれたサービスです。
当時グループの専門学校で新たな学生証に入れ替えるという検討がありました。その中で、新入生を迎える時期に発生する業務負担や紛失、退学、卒業などで生じる煩雑さ、プラスチックカードや紙で発行する際のコストや環境負荷などの課題を解決できる学生証を作ろうというのがMyiDの開発のきっかけとなりました。グループの専門学校で実際に導入し運用実績を積むと同時に改善を重ねて、その後全国の大学や専門学校様に提供をスタートしました。
「がプリ!」の販売をスタートした翌年の2018年には、社員証と会員証の機能をリリースし、製品名を“MyiD”に改称しました。翌々年の2020年には総務省のICT地域活性化大賞の優秀賞をいただくこともできました。
先駆者ならではの課題や苦労も
MyiDは先駆者として身分証のデジタル化を推進してまいりましたが、それ故の課題や苦労もありました。今ではデジタル身分証も社会的に認知されてきましたが、サービス開始当初は社会でほとんど認知されていない状況でした。導入していただく学校等への提案の苦労ももちろんありますが、例えば学生が市役所の窓口でパスポートの発券時にスマートフォンで学生証を提示しても身分証明書として取り扱ってくれないというようなことも起こりました。利用していただく学校周辺の公共施設や交通機関をはじめ検定・資格試験団体、映画館、カラオケボックスなど様々な施設に対して地道な周知活動を行ったり、メディアで取り上げていただいたりするなどを通して、徐々に身分証明書として取り扱ってもらえるようになりました。デジタル庁によるアナログ規制の見直しも普及の追い風になりました。
発展の可能性は無限に広がる
おかげさまでMyiDはサービスを開始して6年目となる現在、北海道から沖縄県まで全国各地の300団体、12万人以上の方にご利用いただいています。グループ内の教育現場のニーズをベースとして開発し、サービスを提供する中で生じた課題に対して一つずつ対応してブラッシュアップしてきました。更に高い付加価値を創出するべく、例えば大学内の食堂や図書館、自習室などの混雑状況をタイムリーに把握する機能や、顔認証の仕組みを活用した認証機能も開発予定です。他にもスマートフォンアプリの利点が生かせる場面は無限にあるはずです。付加価値の高いサービスを生み出すためには、グループ内の連携は元より専門性の高い技術を持った外部の企業様との共創も必要となります。より社会に貢献できるサービスとして発展させていけるよう、今後もデジタル身分証明の先駆者として積極的に新しいことにチャレンジしていきたいと思います。 〆
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