女性アスリートへの支援体制~新潟医療福祉大学アスリートサポート研究センターの取り組み
新潟医療福祉大学が令和4年度スポーツ庁委託事業「女性アスリートの課題解決実践型プログラム」に採択されました。この事業は、女性アスリートが競技力向上を図りながら健康で競技を継続できるよう、ジュニアからトップレベルまでを含めた女性アスリートの環境を整備するとともに、競技引退後も活躍できる支援の充実を目的としたものです。
女性アスリートが抱える特有の問題点として、「low energy availability(利用可能エネルギー不足)」「無月経」「骨粗鬆症」があり、これらは「女性アスリートの三主徴」と呼ばれ、「女性アスリートの三主徴」は、継続的な激しい運動トレーニングにより生じ、それぞれの発症が相互に関連する女性アスリートにとって重要な問題だそうです。
女性アスリートが抱える心身の課題については、スポーツ庁の主要な事業の一つとして取り組まれてきており、調査研究や啓発活動の成果は社会に周知されてきています。ただ、具体的な実践レベルでは、各競技団体や各自治体が工夫して取り組んでいるものの、基本的な医科学支援体制については十分とは言い切れない状況との事です。とりわけ、新潟県などの地域においては相談者や相談窓口が限定され、永続的に適切かつ体制の整った医科学的支援を受けることが難しい現状があるそうです。日本各地で活動する女性アスリートを支援するためには、各地域における医科学支援拠点の構築が急務であるといえます。
新潟医療福祉大学ではこれまでに、大学内における女性アスリートの医科学支援体制を構築してきました。2016年度よりアスリートサポート研究センターを設立し、スポーツドクター、理学療法士、管理栄養士、アスレティックトレーナー、スポーツカウンセラーなどの協同・連携によるマルチサポート体制を構築して女性アスリートを支援しています。このようなサポートシステムは全国的にも珍しく、医療福祉系の総合大学だからこそできる多職種連携チームによる支援体制と言えると思います。この体制をさらに発展させ、「産官学連携による女性アスリートの医科学支援拠点」を形成し、新潟県の女性アスリートや指導者が居住地域等で競技力向上を図りながら、安全かつ安心して専門的・包括的な医科学支援を受け、そして自身の健康問題に対する理解促進や予防及び早期発見に向けた適切な教育を受けることができる地域社会の実現を目指しています。
NSGグループでは、新潟医療福祉大学以外にも女性アスリートの育成に力を入れ、プロとして活躍する選手、オリンピックや国際大会で実績を上げるトップアスリートを数多く輩出しています。新潟医療福祉大学の各部に在籍する学生選手がアルビレックスのサッカーやバスケットボールのチームでプレーするなど、NSGグループの大学と高校、アルビレックスが連携して選手育成に取り組んでいます。また、開志学園高校女子硬式野球部や開志国際高校女子バスケットボール部などをはじめ、様々なスポーツで女性アスリートが活躍しています。これからもしっかりサポートできるよう体制を整えていきたいと思います。
大学が地域における知の拠点であるためには
大学は、幅広い教養や専門的な知識・技術を身につけた人材を社会に送り出す教育機関として役割があることは勿論です。開学以来、各種国家試験等の合格率が全国トップクラスであったり、就職率においても看護・保健・医療系の学科を有する全国の私立大学で第8位(大学通信による調査。卒業生数1,000人以上の大学)にランクインしたりと、学生が卒業後に高度専門職として社会で活躍できるよう力を注いでいます。しかし、大学の役割はそれだけではなく、研究機関としての社会的役割があります。事実あるいは真理を探求するための研究を行い、得られた知見や成果を社会に広く還元し、高度化、複雑化する保健・医療・福祉分野のサービスの向上や社会全体の発展に貢献することが期待されています。また、研究はもちろん学生教育にも活かされます。教育と研究は大学の両輪とも言われますが、そのどちらも重要で、大学が地域における知の拠点であるために必須であると思います。
スポーツ科学、体育、健康科学、およびその関連分野(リハビリテーション科学を含む)の『文部科学省科学研究費採択件数』で全国第4位にランクイン
新潟医療福祉大学は開学以来、研究の推進および産官学連携活動を推進し、教育と研究がより高度なものとなるよう取り組んでいます。こうした取り組みの結果、科学研究費補助金や他の公的研究費など、学外からの研究費受入も年々増加しています。2021年度の科学研究費補助金の「スポーツ科学、体育、健康科学、およびその関連分野(リハビリテーション科学を含む)」において、採択件数(過去4年間の新規採択の累計数)が全国で4位(私立大学では2位)にランクインしました。社会的に高い価値のある研究が盛んに行われているということが客観的に示されていると思います。
また、2021年に策定した2030年度までの将来計画において、「研究機能の強化」を策定し、研究支援力と研究成果発信力を強化する施策を推進しています。研究成果を社会に広く発信することで、他大学や企業などとの研究交流を積極的に推進し、研究成果の社会還元や研究活動への理解を図っていきます。
新潟医療福祉大学が社会において担っている役割を果たしていくためには、大学が持続的に今後も成長し、発展を続けていかなければいけないと思います。これからも、保健・医療・福祉・スポーツ分野の発展に貢献する研究を推進し、研究成果を広く世界へ発信することに積極的に取り組んでいきたいと思います。 〆