「人生で大切なことはすべて将棋から教わった」第17訓
第17訓「強いほうが力を落とす」
こんにちは。
二代将軍中吉です。
将棋には、力の差がある相手と対局する場合に、
「駒落ち」という対局の方法があります。
駒落ちは、相手との力の差によって、強い側(上手「うわて」)が 駒を 1 枚から数枚減らした状態から対局を開始するものです。
たとえば、「角行」という駒を減らす「角落ち」や、「飛車」と「角行」を減らす「二枚落ち」など、その差に応じて減らす駒の種類また数も変わるのですが、
自分の駒を減らすことで、強い側が力を弱めて、相手と対局するわけです。
チェスの場合は、公式的に採用されているものではないのですが、弱い側に考慮時間を長く設定したり、弱い側が何手か先に駒を動かすハンディキャップなどもあるようです。
囲碁には、「置き碁」というハンデ戦があります。
置き碁は、実力が下の人(下手「したて」)があらかじめ自分の石を置いておき、下手優位の状態から始めるものです。
つまり、弱いほうに前もって力を与えることで、
ハンデの差を縮めようとするものです。
チェスも囲碁も、そのハンデ戦は弱い側に力を与えるものです。
しかし将棋は、駒落ちのように、強い側が力を落とすハンデ戦であり、こうした形は他にはあまり見られません。
これは、日本独特のものかもしれません。
実は、日本は平安時代のころには、力のある男性のほうに、社会システムとしてハンデを付けていたとされています。
畑を耕す、戦争に行く、漢字での記録文書、この3つ以外は男性はやってはいけないとされていたようです。
ですから、紀貫之がひらがなを使うために、わざわざ女性を騙って土佐日記を書いていますよね。
弱い側に力を与えるハンデは、弱者側に自身の力不足を認識させることにつながります。
力が足りないから、その不足部分を補填するという考え方です。
つまり、強者基準です。
力が正義であるという強者が基準であり、弱者はその基準に満たない、とする考え方です。
それに対して、強者側を制限するハンデは、弱者基準といえます。
弱者の初期状態を標準として、強者はそれを超えていることから、超えている部分を削除制限する、という考え方になります。
こうした弱者基準で物事を捉え考えていくことは、持続する優しい社会につながるのではないでしょうか。
私は、将棋のハンデ戦が弱者基準であることには、とても深い意味があるのではないかと考えています。
将棋から教わった、人生で大切なこと」
その17個目は、
17.「強いほうが力を落とす」
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