見出し画像

[将棋級位者向け]筋違い角戦法の使い方と対策シリーズ③。筋違い角の振り飛車パターン対策をご紹介!

 こんにちは、ゆに@将棋戦略です。


 前回は筋違い角振り飛車パターンの攻め筋を見て頂きましたが、今回は振り飛車パターンへの対策回となります。まずはテーマ図を再掲します。

テーマ図。前回の反省から、後手は△8四歩と突かないで駒組を進める。

対策のポイント

 前回の反省を踏まえて、まずは対策のポイントとなることをまとめておきましょう。
・△8四歩と突くと飛車先を逆襲される→△8四歩は後回し
・先手からするといずれ配置される7七の銀が活用できるかが成功のカギ。必ずどこかで▲6五歩や▲7六銀と捌いてくる。
・先手が▲7六銀とした瞬間、必ず先手の角銀が奇数マスに配置される。したがって、後手としては偶数マスのライン、すなわち△4四角や△5五角が急所になる。

 それではテーマ図以下の手順を進めていきましょう。

 テーマ図から
△3三銀 ▲7八角 △6四歩▲8八銀 △6三銀 ▲6八飛
△5四銀 ▲7七銀 △4四歩▲3八金 △4五歩 ▲4八銀
△1四歩 ▲1六歩 △4二玉▲4九玉 △3一玉 ▲3九玉
△2二玉(途中図)

途中図。後手は5筋の位を取らずに△5四銀と構えるのが前回との違い。

5筋の位は取らない

 後手は△8四歩と突かず持久戦策をとります。前回との違いは、5筋の位を取らないで△5四銀と構える点です。5筋の位を取ると、5四の銀が安定する(つまり、▲5六歩などから追われることがなくなる)代わりに、
・手数が2手かかる
・5四の銀が浮く
・将来△5五角が打てなくなる。また、△4四角のラインも止まってしまう。
などのデメリットがあります。

 後手が5筋の位を取らない以外は、前回と同様の進行でお互いOKです。ただ、途中図以降は細かい手順も重要になってきますので、しっかり押さえて下さい!

 途中図から
▲2八玉 △5二金▲7五歩 △8四歩 ▲8六歩(途中図②)

途中図②。後手から飛車先交換するチャンスに見えますが、△8五歩はNGです!

先手の罠

 先手はやはり▲7五歩~▲8六歩として角の利きの転換を試みます。▲7五歩に対してそろそろ後手は△8四歩が良いでしょう。この手は次に△8五歩と突ければ先手の角筋の転換を防ぐことが出来ますし、先手の▲8六歩を牽制している意味もあります。

 しかし、それでも先手は▲8六歩と突きます。この手にはすかさず後手から△8五歩と突かれそうですが、それはNGなので注意してください!なぜかといいますと、△8五歩▲同歩△同飛に▲9六角(参考図①)と出られてしまうからです。

参考図①。▲9六角は常に先手の狙いですので注意!

参考図では8五の飛車と5二の金が角で串刺しになってしまっています。すなわち、△8九飛成と成れても▲5二角成と大事な金が取られてしまいます。また、△8二飛とすれば金は助かりますが、▲8三歩と飛車の利きを外しにこられるぐらいで、後手が悪くなってしまいます。

 ▲8六歩にはじっと△9四歩と伸ばしておくのが良いでしょう。緩い手に映るかもしれませんが、後々▲9六角と出る手を消しておくのが大きいですし、後で端から攻める展開もあります。

 途中図②から
△9四歩▲8七角 △9五歩▲7六銀 △4四角(途中図③)

途中図③。▲7六銀を見たらすかさず△4四角を打とう!

▲7六銀には△4四角

 先手は△9四歩に対して急いで▲8七角とします。△8五歩が突けない内に、▲8七角~▲7六銀と構えるのが狙いです。なお、▲8七角を上がらずに▲7六銀とする手には常に△8八角(参考図②)がありますので、お互いにご注意を!

参考図②。△8八角の筋は常に意識!

 ▲8七角以下、△9五歩に次の△8五歩を防いで▲7六銀。先手は後手の8筋の攻めに間に合わせつつ、攻撃態勢を作ることに成功しました。次に▲6五歩から動けるようになると先手ペースです。

 ただ、何度も申し上げているように、▲7六銀と上がった瞬間は△4四角のラインに非常に弱いのです。この場合、▲7六銀と上がられたらすぐに△4四角(途中図③)と設置してしまいましょう。

 もしかすると、本稿を読んで頂いている方の中には、「△4四角と角を手放してしまうと、角を手持ちにしているという後手の主張が消えてしまい、一歩得の先手が有利になるのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。もちろん部分的には正しい考えなのですが、この場合、先手の角銀の動きを制限しているのがとても大きいのです。先手としては、▲6五歩と突けない限り、角も銀も決して働いてきません。加えて後で示すように、△4四角は先手玉を攻めるのにも役に立ちます。

 一手一手立ち止まって説明してまいりましたが、それぞれの意味は大体把握できましたでしょうか?続いて、先手が何とか角銀を活用する手立てを検討してみます。

 途中図③から
▲7七桂 △4三金右 ▲7八金 △2四銀▲6五歩 (途中図④)

途中図④。ここからの後手の反撃はちょっと難易度高め><

 先手が▲6五歩と突いていくには、▲7七桂~▲7八金として角筋を止める他なさそうです。その間、後手は△4三金右~△2四銀と反撃の準備。△2四銀も重要なところで、いつでも△1五歩からの端攻めを見ています。

先手は後手からの端攻めが来る前に、▲6五歩(途中図④)と突っかけますが、ここで後手からうまい反撃があります。ちょっと難易度高めですから、暗記でもいいので何とか習得を!

 途中図④から
△8五歩▲同 歩 △1五歩 ▲同 歩 △9六歩▲同 歩
△1五香(結果図①、評価値も併せて表示)

結果図①と評価値。先手の角は逮捕寸前。

▲6五歩には△8五歩の反撃がポイント

 ▲6五歩に△同歩▲同銀△同銀▲同飛(参考図③)のように捌かせてしまうのは絶対にやめましょう。せっかく4四の角で角銀を押さえているので、これらを捌かせる手だけはNGです! 

参考図③。後手が絶対に避けるべき展開。

 ではどうするのかといいますと、▲6五歩に△8五歩が急所の反撃となります。▲同桂はもちろん△9九角成と香車を取ることが出来ます。以下、▲6四歩と取りこんでも△4四馬▲6三歩成△6六香(参考図④)ぐらいで、飛車を押さえられて先手うまくいきません。

参考図④。香車が取れれば先手の飛車を押さえられる。

 △8五歩に▲同銀と取るのも、銀がそっぽにいってしまって△6五歩と手を戻されてしまいます。もう一度▲7六銀と戻っても△6六歩が手筋。以下▲6五銀と出ても△8六飛(参考図⑤)ぐらいで先手まずいです。先手は飛車角がどうしても捌けません。

参考図⑤。銀は捌けても、飛車角が捌けないと先手まずい。

 先手は▲8五同歩としてみますが、以下9筋も突き捨てて1筋を攻めます。結果図①まで進むと先手の角が逮捕寸前で、後手優勢です。ちなみに最終手△1五香では△1五銀でも良いです。その辺はお好みで。

 このように、▲8七角~▲7六銀には△4四角と打つことで、後手は先手の攻めを封殺することができます。途中図から先手が攻撃態勢を築こうとすると、かえって悪くなってしまったので、代わりにじっと固めてチャンスを待つ作戦を考えてみます。

 途中図から
▲2八玉 △5二金▲3六歩 △8四歩 ▲3七銀 △4三金右
▲5八金△3四銀▲1八香 △3三桂 ▲1九玉 △4四角(途中図⑤)

途中図⑤。ここでも△4四角がオススメの一手。狙いは将来の端攻め。

 途中図⑤から
▲4八金左 △2四歩▲2八金 △2五桂 ▲2六銀 △9四歩
▲3八金左 △9五歩(結果図②、評価値も併せて表示)

結果図②と評価値。先手は飛車角がうまく使えないので、後手が作戦勝ち。

それでも△4四角

 結果図②までの進行は参考ですが、後手はそれでも△4四角とする手が有効で、狙いは将来の端攻めです。結果図②では先手は飛車角が捌ける見込みがあまりなく、後手の作戦勝ちといえます。評価値としても-300程度。それでも、後手にベストを尽くされた場合では、筋違い角側としては割とマシな評価値です。

使うもよし、受けて立つのもよし

 以上のような筋違い対策は、高段帯では割とオーソドックスな対策として認知されている印象です。ただし、初回に検証した2級~2段帯では、このような局面はまず見かけません。少なくとも、150局のサンプルの中には一つもありませんでした。

 その意味では、級位者帯では筋違い角戦法を取り入れるのも一つの選択です。とりあえず通用する段級位まで使い続けるもよし、徹底的に対策して受けて立つ側に回るもよし、個人の考え方次第と思います。

 それでは次回は、最後に筋違い角の居飛車パターンを取り扱いたいと思います。居飛車パターンは実は簡単に対策されてしまうのですが、後手の駒組によっては有効になりえます。

 それでは読んで下さり有難うございました。引き続きよろしくお願いいたします。

 


いいなと思ったら応援しよう!