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第1回ABEMA師弟トーナメント本戦決勝

3月5日、いよいよABEMA師弟トーナメント本戦決勝が放映されました。予選Bリーグを1位通過したチーム鈴木「大内組」と予選Aリーグを1位通過したチーム畠山「熱風」の顔合わせとなっています。チーム鈴木は師匠の鈴木大介九段が6勝0敗、弟子の梶浦宏孝七段が3勝2敗と危なげなく勝ち上がり、準決勝ではチーム深浦を倒しています。チーム畠山も師匠の畠山鎮八段が3勝3敗、弟子の斎藤慎太郎八段が6勝0敗と強さを見せ、準決勝ではチーム谷川を降して勝ち上がりました。ここまで全勝できている鈴木九段と斎藤八段の戦いが注目されます。

■一局目 梶浦宏孝七段 〇 vs ● 畠山鎮八段

両チームとも全勝のエースを温存し、公式戦では対局のない顔合わせとなりました。先手の梶浦七段が角換わりに誘導し、畠山八段も受けて立ちました。梶浦七段が9筋の位を取り、相腰掛け銀の形になると4筋から仕掛けます。梶浦七段が▲4五桂と跳ねると、畠山八段も△6五桂と跳ね△3三桂とぶつけます。梶浦七段が飛先の歩を交換すると、畠山七段は飛車取りに△1三角と打ちます。梶浦七段は最下段に飛車を引きますが、畠山八段は△2八歩~△2一飛と突破を図ります。梶浦七段は銀取りに▲4五桂と打ち、畠山八段が"と金"を作ると▲6五銀と桂を食いちぎります。梶浦七段は▲3三桂成と銀を取り、畠山八段が金で取ると再度▲4五桂と打ちます。畠山八段も銀で桂を食いちぎり△6四桂と銀取りに打ちます。梶浦七段は▲6五銀とかわしますが、畠山八段は王手金取りに△5六桂と継ぎ桂を打ち、△4八桂成と金を取ります。梶浦七段は▲4四銀と打ち、飛車を取られる間に▲3三銀と金を取り▲4四角と王手飛車で後手陣に迫ります。時間に追われた畠山八段は△5七角成と馬を作って下駄を預けますが、2分程時間を残していた梶浦七段は自玉の安全を確認して詰めろを掛けます。畠山八段は連続王手で迫りましたが、先手陣は9筋の位で懐が深く無念の投了となりました。

■二局目 鈴木大介九段 ● vs 〇 畠山鎮八段

チーム畠山は「師匠が頑張らなければいけない」と師匠が連投します。後手の鈴木九段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、畠山八段は4筋から仕掛けます。鈴木九段が△3二金と上がってから角交換に応じると、畠山八段は飛先の歩を交換します。鈴木九段が少考で飛車を2筋に回すと、畠山八段は1分以上考えて▲5五歩と仕掛けます。鈴木九段が3筋から反発して桂を取ると、畠山八段は力強い手つきで▲5四角と打ち9筋から端攻めを決行します。鈴木九段は手抜いて銀取りに△6五桂と打ち、畠山八段が9筋の歩を取り込むと△5七歩成と攻め込みます。鈴木九段は金を1枚剥がしてから9筋を受けますが、畠山八段は▲7五桂と打って後手陣に迫ります。鈴木九段が△7四角と打って受けると、畠山八段は▲3三歩成と桂を補充し角取りに8六桂と打ちます。鈴木九段が角を引いて受けると、時間に追われた畠山八段は▲9三歩成から歩の連打で香を吊り上げます。鈴木九段が角取りに△5三歩と打って催促すると、畠山八段は角を銀と刺し違えて▲9二香成と端を突破します。お互いに桂を取り合い、鈴木九段が△9五桂と反撃し△8七桂成~△6九角と王手銀取りに打ち△3六角成と馬を作りますが、畠山八段は▲4五桂~▲3三銀と飛金両取りに打って対抗します。鈴木九段は手抜いて再度△9五桂と王手し、玉を吊り上げてから△4三角と上がって王手します。畠山八段は飛車を取ってから△3三銀成と挟撃態勢を作ると、鈴木九段も時間に追われて△7六銀から王手で迫ります。最後は両者とも駒が手に付かない激闘となりましたが、先手陣が打ち歩詰めの形となり鈴木九段の投了となりました。

■三局目 梶浦宏孝七段 〇 vs ● 斎藤慎太郎八段

チーム畠山はここまで無敗の斎藤八段が満を持して出陣し、チーム鈴木は弟子が流れを変えに出陣します。先手の梶浦七段が相掛かりに誘導し、斎藤八段も受けて立ち先に飛先の歩を交換します。梶浦七段も飛先の歩を交換し▲4五銀と前進すると、斎藤八段は2分ほど考え、角交換してから△2二銀と上がって受けます。斎藤八段は7筋と9筋の歩を突き捨ててから△3三桂と跳ねて銀を追い、△3四飛と回ります。梶浦七段が2分半程考え、割り打ちを避けて飛車を引くと、斎藤八段は△3六飛と1歩補充します。難しい中盤戦となり、梶浦七段は7筋の歩を突き捨ててから▲4五桂と跳ね、師弟会議室の鈴木九段が「あまり良い手に見えない」とつぶやきますが、斎藤八段は手抜いてじっと△6六歩と伸ばします。梶浦七段が桂交換すると、斎藤八段は△3七歩と垂らし、師弟会議室の畠山八段が「それは危ないと思うけど」と声を上げます。梶浦七段は▲4五角と打って飛車を追い、▲2三角成と勝負手を放ちます。斎藤八段が△2八歩と飛頭を叩くと、梶浦七段は飛車を取らせる代わりに▲3二馬~▲3三馬と金銀を取ります。梶浦七段は更に▲5五桂~▲6三歩と後手陣の銀を剥がし、▲8三銀と打って挟撃態勢を作って寄せ切りました。

■四局目 鈴木大介九段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段

準決勝まで全勝の快進撃を続けてきた鈴木九段と斎藤八段が、この日はともに敗れてからの直接対決となりました。後手の鈴木九段が最も得意とする四間飛車に振ると、斎藤八段は穴熊を目指します。鈴木九段は早々に△7三桂と跳ね先手の駒組みを牽制すると、力強く△3五歩と伸ばします。斎藤八段は1分半程考えて飛車を3筋に寄せて▲3六歩と反発し、鈴木九段も飛車を2筋に回して△2四歩と攻め合います。お互いに飛先の歩を伸ばすと、斎藤八段は穴熊に潜るのを諦め角道を開けて角交換します。斎藤八段が飛車取りに▲4四角と打つと、鈴木九段は飛車を浮き香を取らせる間に飛先の歩を伸ばします。斎藤八段は飛車を浮き▲4四香と銀取りに打ちますが、取ると飛車に成り込まれるので鈴木九段は△3三歩と打って辛抱します。銀得の戦果を挙げた斎藤八段は▲3五銀と飛車取りに打ち、鈴木九段は2分程考え△1四飛と辛抱します。斎藤八段は馬で桂を取り▲5四歩と畳み掛けますが、鈴木九段は手抜いて△9五歩と端攻めに命運を託します。斎藤八段が▲5四飛と回してから▲5三歩と金頭を叩き▲5四馬と引き付けると、鈴木九段は△9二香と二段ロケットを設置します。鈴木九段が9筋を突破しますが、斎藤八段は▲6八金寄と玉の退路を作ると、9筋に”と金"を作って長手数の即詰みに討ち取りました。

■五局目 梶浦宏孝七段 ● vs 〇 畠山鎮八段

決勝に相応しくフルセットにもつれ込み、チーム鈴木はこの日好調の梶浦七段、チーム畠山は初めから決めていたという畠山八段が出陣します。先手の畠山八段が初手に駒音高く角道を開け金矢倉を組むと、梶浦七段は△4三金左と土居矢倉に組みます。畠山八段が3筋の歩を伸ばし▲3四歩と取り込むと、梶浦七段は△3四同金と金で取ります。梶浦七段は更に△4四銀と出て先手陣に圧力を掛けると、△3三桂~△2五桂と攻め掛かります。畠山八段は▲3八飛~▲2八銀と辛抱し、▲7五歩から歩を入手すると▲2五歩と打って桂を捕獲します。梶浦七段が1筋に桂を成り捨て△1五歩から端を攻めると、畠山八段は香を見捨てて▲3七桂~▲3六銀と後手の玉頭から攻め掛かります。梶浦七段は8筋の継ぎ歩攻めから△8三香と打ち王と角の田楽刺しを狙いますが、畠山八段は手抜いて▲4五桂と攻め合います。梶浦七段も構わず角取りに△8五香と走りますが、畠山八段は▲3三桂成と金を剥がし▲3一金と王手で後手玉に迫ります。畠山八段が時間に追われて銀取りに▲3二金と引くと、3分近く時間を残していた梶浦七段は1分半程考えて△4四銀とかわします。畠山八段は▲3一角成と馬を作り金取りに▲4一馬と寄りますが、梶浦七段も△8七香成~△7八"と"と王手で先手玉に迫り△8九飛成と竜を作ります。畠山八段が▲5二馬と金を取って下駄を預けると、梶浦七段は△7九竜から連続王手で迫りますが打ち歩詰めがあったようで詰みません。畠山八段が相手の歩頭に▲5五銀と出て、梶浦七段が△5五同歩と応じると、師弟会議室の鈴木九段が「あっ!」斎藤八段が「えっ!」と同時に叫びます。5五の地点で後手の角道が止まったため後手玉には即詰みが生じており、畠山八段が▲1五歩~▲2六桂と連続王手したところで梶浦七段は無念の投了となりました。

【チーム畠山 3勝 vs チーム鈴木 2勝】

チーム畠山は、師匠の畠山八段がここまで全勝だった相手の師匠を倒し、決着局では執念の鬼手で劇的な大逆転勝利を飾ってチームを優勝に導きました。準決勝まで弟子の斎藤八段が全勝で牽引してきましたが、フルセットになったら師匠が出ると事前に決めていたようで「弟子がトップ棋士になった以上は自分が頑張らねばならないと思いました。これは師弟トーナメントなんで」と言って出陣し、見事に結果を残した後には声を詰まらせて「斎藤八段のお陰です」と語った畠山八段には「熱風」というチーム名に相応しい男気を感じました。まさに師弟が一丸となって勝ち取った素晴らしい優勝だったと思います。

チーム鈴木は、師匠の鈴木九段が準決勝まで全勝でチームを牽引してきましたが、残念ながら決勝では白星に恵まれませんでした。弟子の梶浦七段は、準決勝まで全勝だった相手のエースを破る殊勲の星を挙げ、決着局でも勝利まであと一歩のところまで追い詰めました。最後の最後で優勝の栄誉を掴み取ることはできませんでしたが、師匠が弟子の成長を願う思いが存分に感じられる素晴らしい師弟関係を魅せてくれたと思います。

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