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第5回ABEMAトーナメント 予選Cリーグ第一試合

5月28日に、ABEMAトーナメントの予選Cリーグ第一試合が放映されました。自身初の予選突破を目指すリーダーが率いるチーム豊島「TMF」と、優勝候補の一角と思われるチーム広瀬「国士無双」の顔合わせとなりました。チーム豊島はベテランの丸山忠久九段と深浦康市九段が、それぞれの得意戦法で勝利を目指します。チーム広瀬はチーム名からも察せられる通り、麻雀を趣味とする青嶋未来六段と三枚堂達也七段が、過去2回の大会で最高勝率を誇るリーダーを盛り立てます。

一局目:豊島将之九段 vs 三枚堂達也七段

チーム豊島は、一局目からリーダーが登場します。先手の三枚堂七段が相掛かりに誘導すると、豊島九段は受けて立ち、先に飛先の歩を交換します。三枚堂七段が飛先の歩を交換して7筋の歩も取ると、豊島九段は手得を活かして△8五銀~△7六銀と前進します。三枚堂七段が▲6六角~▲7五飛と大駒を活用すると、豊島九段は△6五銀から角銀交換します。三枚堂七段が▲7三歩成と桂を取り▲6五桂と跳ねて7筋突破を狙うと、豊島九段は△6四角と打って飛車を追いつつ守りを固めます。三枚堂七段は角取りに▲5六桂と打ち、豊島九段が△5五角と逃げると右桂も▲4五桂と跳ねて3枚の桂で後手の玉頭に迫ります。三枚堂七段は更に▲7三歩と垂らすと、時間に追われた豊島九段は△7一飛と回って辛抱します。豊島九段は銀を犠牲に粘りましたが、三枚堂七段に取った銀を飛車取りに▲8二銀と打たれると、攻守ともに見込みなく投了を告げました。
チーム豊島:0勝 - チーム広瀬:1勝

二局目:深浦康市九段 vs 三枚堂達也七段

チーム広瀬は、快勝した三枚堂七段の連投です。先手の深浦九段が得意の雁木を採用し▲5六歩型を選択すると、相雁木の駒組みを進めていた三枚堂七段は1分半程考えて△5二金と上がります。深浦九段が▲3七桂と跳ねると、三枚堂七段は更に1分半程考えて△5一角と引きます。深浦九段は4筋の歩を突き捨てててから▲6五歩と仕掛け、三枚堂七段が△3三角と戻すと力強く▲6四歩と取り込みます。三枚堂七段は角を交換して△3三角と打ち直しますが、深浦九段は1筋の歩を突き捨て2筋の歩を継ぎ歩で吊り上げ3筋の歩もぶつけます。三枚堂七段は3筋を放置して△7五歩と反撃しますが、深浦九段は▲2五桂~▲3四歩と攻めをつなぎます。三枚堂七段は△6六歩~△7六歩と反撃しますが、深浦九段は2分以上考えて▲2三歩と金頭を叩き、▲3三歩成から攻め込みます。三枚堂七段も△7七歩成から桂得となりますが、深浦九段は▲5五桂から銀桂交換し飛車取りに▲7一角と打ち込み馬を作ります。三枚堂七段は△7七銀から先手玉に迫りますが、深浦九段は飛車で桂を食いちぎって凌ぎます。深浦九段は飛車取りに▲5四桂と打って反撃しますが、三枚堂七段は△4九飛成と竜を作り、もう1枚の飛車も打ち込んで2枚飛車で迫ります。両者とも時間に追われる中、先手玉は絶体絶命に見えましたが中段を彷徨って逃れると、深浦九段は▲2二銀から連続王手で迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:1勝 - チーム広瀬:1勝

三局目:丸山忠久九段 vs 青嶋未来六段

チーム豊島は深浦九段に連投を打診しましたが、順番通り丸山九段が登場します。先手の青嶋六段が四間飛車に振り穴熊を目指すと、丸山九段も穴熊に囲います。青嶋六段が銀をぶつけて交換し▲4四歩と伸ばすと、丸山九段は構わず角取りに△6五桂と跳ねます。青嶋六段は4筋の歩を成り捨ててから▲6六角とかわし、丸山九段がじっと△2四角と覗くと▲4四歩と金頭を叩いてから飛車を6筋に回します。青嶋六段は角取りに▲2五銀と打ち、丸山九段が角をかわすと▲3四銀と飛び込みます。作戦会議室では広瀬八段と三枚堂七段が「いったぁ」と声を揃え、青嶋六段は銀を取らせて▲4三歩成と"と金"を作ります。丸山九段は△5五歩と突いて先手の角の利きを止めますが、青嶋六段は▲4七歩と打って後手の角を追い、飛車取りに▲5五角と出ます。青嶋六段は更に▲6五飛と捌き、▲6一飛成と金取りで竜を作ってから▲9一角成と香を取って飛車と刺し違えます。丸山九段が△3六歩から先手陣を乱し、金取りに△4五桂と打つと、青嶋六段は金を見捨てて▲3七歩と打ちます。丸山九段が金取りに△6七角と打つと、青嶋六段はノータイムで▲3九金と埋めますが、作戦会議室では広瀬八段が「あれっ今▲6二飛と打てなかった?」とつぶやき、深浦九段も「あっ」と叫んで豊島九段と顔を見合わせます。あらためて寄せ合いとなり、青嶋六段は▲3四桂から後手の銀を剥がし▲6三銀とタダ捨ての妙手を放ちます。丸山九段は馬を引き、自陣に金を打って相手の攻めを切らしにいきますが、青嶋六段は怯まず攻め続けて寄せ切りました。
チーム豊島:1勝 - チーム広瀬:2勝

四局目:豊島将之九段 vs 広瀬章人八段

チーム広瀬は満を持してリーダーが登場し、リーダー対決となりました。先手の豊島九段が角換わりに誘導し早繰り銀を見せると、広瀬八段は腰掛け銀で対抗します。豊島九段が3筋から仕掛けると、広瀬八段は銀矢倉の形で受けます。ここで豊島九段が▲5五銀~▲6四歩と歩を取りますが、広瀬八段は平然と陣形を整備します。広瀬八段が△7三角と先手の飛車に狙いを付けると、豊島九段は飛車を浮いて受けます。広瀬八段は△3八歩と垂らしますが、豊島九段は"と金"を作らせてから▲4八金と寄って動きを封じます。広瀬八段は1分以上考えて△6三金~△5四金と上がりますが、豊島九段は▲3六飛と回ります。広瀬八段が銀取りに△4五歩と突くと、豊島九段は1分半程考えて銀取りに▲3五歩と打ち返します。お互いに銀を取り合い、豊島九段が2筋の歩を突き捨ててから▲4一角と打つと、広瀬八段は構わず金取りに△4九"と"と寄ります。豊島九段が"と金"を取ると、広瀬八段は△4七歩成と再び"と金"を作ります。豊島九段は▲4五歩と打ち、広瀬八段が"と金"で桂と飛車を取る間に、銀を取って▲4三銀と打ち込みます。広瀬八段は△2三銀と受けますが、豊島九段は▲3二銀歩成と金を剥がしてから▲4三歩成として銀を遠ざけます。豊島九段は▲2三銀の王手から後手玉に迫りますが、広瀬八段も必死に凌いで△3九飛と馬金両取りに打ちます。豊島九段は▲4五銀と打って後手玉の上部脱出を阻んでから▲2六馬と寄って両取りを逃れると、金取りに▲5一飛と打って再び後手玉に迫ります。広瀬八段は△5九飛成~△6五桂と先手玉に迫りますが、豊島九段は秒読みに追われながらも逃げ切りました。
チーム豊島:2勝 - チーム広瀬:2勝

五局目:深浦康市九段 vs 三枚堂達也七段

チーム広瀬は三枚堂七段が早くも3局目の登場で、二局目と同じ顔合わせになりました。先手の三枚堂七段が相掛かりに誘導すると、深浦九段は受けて立ち先に飛先の歩を交換します。三枚堂七段も飛先の歩を交換し3筋の横歩も取ると、深浦九段は7筋の歩を伸ばして先手の桂頭を狙います。三枚堂七段は金を上がって桂頭を守りますが、深浦九段は△8七歩と角頭を叩いて先手の角を9筋に追い△9五歩と仕掛けます。深浦九段が更に△7八歩と銀頭を叩き△8八歩成と"と金"を作ると、三枚堂七段は1分半程考えて▲4五桂から2枚の桂を後手の玉頭に飛び込み銀と交換します。深浦九段が△5一香と先手の玉頭を狙うと、三枚堂七段は角を打って香を吊り上げ▲4五銀と香取りに打ちます。深浦九段が金銀両取りに△9七角と打つと、三枚堂七段は角を打って凌ぎます。三枚堂七段は銀で香を食いちぎり、6筋の歩を伸ばして後手陣に攻め掛かると、飛車を取り合って▲8二飛と王手で打ち込みます。深浦九段は冷静に△2八銀と打って先手玉の退路を塞ぎ、△6七歩成~△6八"と"と角を取ります。三枚堂七段も竜を作って後手玉に迫りましたが届かず、深浦九段は2枚目の馬を作って飛車を打ち込み即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:3勝 - チーム広瀬:2勝

六局目:深浦康市九段 vs 青嶋未来六段

チーム豊島は、勝った深浦九段の連投です。後手の青嶋六段は三間飛車に振ってから向かい飛車に振り直します。深浦九段が銀冠を作って米長玉に構えると、青嶋六段は高美濃に構えてから飛車を4筋に回し6筋の位を取ります。深浦九段は2筋の歩を突き捨ててから4筋の歩をぶつけ、▲4四歩と取り込んでから飛車を4筋に回します。青嶋六段が△4三歩と打って銀を支えると、深浦九段は飛車を2筋に戻して▲2三歩と垂らします。青嶋六段は桂取りに△6四角と飛び出し、深浦九段が飛車で桂を支えると飛車で先手の歩成を防ぎます。深浦九段は桂を犠牲に▲2四飛と飛び出し▲2二歩成と"と金"を作りますが、青嶋六段は構わず金取りに△6六桂と打ちます。深浦九段は▲7四歩と打って金を吊り上げ、銀で桂を食いちぎって▲5八桂と打ち、"と金"で桂を取ると▲6六桂打と畳み掛けます。青嶋六段が飛車取りに△4六角と出ると、深浦九段は▲2二飛成と飛び込んで飛車交換します。深浦九段が角を追い▲3一飛と角取りに打つと、青嶋六段は角を見捨てて△5七歩成と"と金"を作り、△6七"と"と先手の金を剥がします。青嶋六段が△3八飛と王手で打ち込み△5五桂と金取りに打つと、深浦九段は残り6秒まで考えて銀を引きます。2分以上残していた青嶋六段は、落ち着いて30秒ほど考えて△7九角から先手玉に迫ります。深浦九段は▲6二桂成と開き王手を掛けますが、青嶋六段が冷静に角を取ると投了を告げました。
チーム豊島:3勝 - チーム広瀬:3勝

七局目:丸山忠久九段 vs 広瀬章人八段

タイスコアに戻したチーム広瀬はリーダーが出陣し、前回大会のチームメイトの対決が実現しました。後手の丸山九段が伝家の宝刀一手損角換わりを採用し、広瀬八段は早繰り銀で対抗します。1筋の位を取った広瀬八段が3筋から仕掛けると、丸山九段は飛車取りに△6四角と打ちます。広瀬八段が▲4六角と打ち返すと、丸山九段は歩で銀を追い返し、角交換の後9筋の歩を突き捨てます。丸山九段が更に7筋の歩も突き捨てて△8五桂と跳ねると、広瀬八段は強く9筋の歩を伸ばして反発します。丸山九段が銀桂交換すると、広瀬八段は▲9三歩成と"と金"を作ります。丸山九段は△4九角と打ち込み飛車の捕獲を目指すと、広瀬八段は▲3九歩と打って防ぎます。丸山九段は角で金を食いちぎり△9八歩と打つと、広瀬八段は"と金"を作らせる間に▲5四歩と銀を取ります。両者残り時間が少なくなり、広瀬八段が金取りに▲6三歩と打つと、丸山九段は"と金"で先手玉を追い銀取りに△7三桂と打ちます。作戦会議室では青嶋六段が「凄い、これ」とつぶやく激しい将棋となりましたが、金と銀を取り合ってから広瀬八段は▲5三飛成と竜を作ります。丸山九段は金銀を駆使して先手の竜を奪いますが、広瀬八段の駒台には持ち駒が溢れています。丸山九段は2枚竜で先手玉に迫りましたが、広瀬八段は単騎の玉で逃げ切りました。
チーム豊島:3勝 - チーム広瀬:4勝

八局目:豊島将之九段 vs 青嶋未来六段

後がなくなったチーム豊島はリーダーに託します。後手の青嶋六段が三間飛車に振りミレニアムに構えると、豊島九段は穴熊を目指します。豊島九段が飛車を3筋に寄せると、青嶋六段は飛車を5筋に振り直します。豊島九段が3筋の歩をぶつけると、青嶋六段も5筋の歩をぶつけます。豊島九段は▲5五同歩と応じ、青嶋六段は△5五同飛~△6五飛~△8五飛と先手陣を揺さぶってから△3五飛とぶつけます。豊島九段は飛車交換に応じて▲3一飛と打ち込み、青嶋六段も△3九飛と打ち込みます。お互いに桂を取り合い、豊島九段が角取りに▲5四桂と打つと、青嶋六段は△4四角と飛び出します。豊島九段が角取りに▲4一竜と寄ると、青嶋六段は銀を引いて角に紐を付けます。豊島九段が▲4二桂成~▲4三成桂と角銀両取りに引くと、青嶋六段は9筋からの端攻めで△9六歩と詰めます。豊島九段は角を取りますが、青嶋六段は△9七桂と放り込み、△8九桂成から再度△9七桂と王手します。8九の地点に玉以外の駒の利きがない先手陣の弱点を突き、青嶋六段は△6九竜と金を取りにいきます。豊島九段は▲5七金と逃がして粘りますが、青嶋六段は△8五桂から角を取り、2枚の金の両取りに△6八角と打ちます。豊島九段は残り1秒まで考えましたが、次の手を指さずに無念の投了となりました。
チーム豊島:3勝 - チーム広瀬:5勝

第一試合の結果

チーム広瀬は、青嶋六段が相手チームの全員から白星を挙げる大活躍で、チームの勝利に大きく貢献しました。リーダーの広瀬八段は、リーダー対決に敗れたものの、タイスコアとなった七局目に勝って流れを引き寄せました。三枚堂七段も一局目に勝ってチームに勢いをつけ、3人がともに要所で勝ってチーム力の高さを示しました。
チーム豊島は、リーダーの豊島九段がリーダー対決を制したものの、一局目に一方的に敗れるなど精彩を欠き、チームに流れを呼び込むことはできませんでした。深浦九段が2勝して気を吐きましたので、次戦で豊島九段と丸山九段が本来の力を発揮し、予選突破を果たすことを期待したいと思います。

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