誰が呼んでくれた天河に?
冷たい雨の中、車で天川村に向かった。
天河神社にお参りに行くためだ。
ニュージーランド写真展の応援、壮行会で仲良くしてもらったトキさんに
「ショーゲンさん、天河神社にお参りに行かない?」
と誘ってもらった。
何十年も、遠のいていた神社だが、令和だけで、2度の参拝になった。
小学5年までは、毎年といっていいぐらい天川村に来ていた。大峰山の麓にある、洞川温泉の近くに親戚の家があった。私の父が生きている頃は、お盆休みに連れて行ってもらった。
夜の8時ぐらいに出発して、夜中の1時ぐらいに洞川に着いた。いまは道が整備されて、2時間ぐらいで行けるようになったが、当時は山道を、ぐるぐる、ぐるぐると登って行った。そんな道を、4時間も、5時間も車にゆられた。
「ウォエ、ウォエ、ウォエ……」
子どもにとっては、とてつもなく遠く辛い道のりだった。
ぐったりとして、到着すると
「よう来たなぁ」
と親戚のおっちゃんが迎えてくれる。
スルメやおかきなど、お酒のつまみがテーブルに並んでいる。
「好きなもん食べや」
どう考えても無理である。
親戚の家の横は、山上川(熊野川の源流)が流れている。一晩中、ザーッという川の音が耳に、いまでも残っている。
天河神社は神様に呼ばれないと行けない、とも言われている。本殿で手を合わせると
「お父ちゃんが生きていたら、いっしょに大峰山に登ってたんかなぁ」
白装束の山伏たちの姿が、よみがえってきた。
「神様が呼んでくれたんか?それとも、お父ちゃんが呼んでくれた?」