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プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ 合格論文(令和5年度 秋期 問2)
まえがき
昨年度の令和5年度秋期の情報処理技術者試験にてプロジェクトマネージャ試験にチャレンジし、運よく一発合格できました。
振り返りを兼ねて自身の答案を開示請求し、実際の答案が手元に届いたので、今後PM試験を受験される方の参考となるようnoteに残しておこうと思います。
問題
令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ 問2
問題はIPAの公式ホームページにて公開されています。
実際の答案
1.携わったプロジェクトの独自性、目標および影響
1-1.携わったプロジェクトの独自性
私は、SI(システムインテグレータ)企業に勤務しているプロジェクトマネージャである。今回携わったのは、食品小売業を行うC社の販売管理システム再構築プロジュクトである。
C社は、レトルト食品の製造・販売に特化した企業で、一般顧客からの注文をECサイトで受け付けている。本プロジェクトでは、注文から出荷までにかれる時間を1.5日から1日に短縮し、より早く顧客のもとへ商品を届けることを目的としていた。
本プロジェクトにおける独自性は、ECサイト開発チームと基幹システム開発チームの2チームのうち、ECサイト開発チームの人員に経験の浅いメンバーが多いことである。
1-2.未達成となった目標とその経緯
ECサイト開発チームは、若手のスキルアップを目的として、2名の若手メバーを参加させることを自社の上層部から指示されていた。C社には、自社都合で若手メンバーを参加させること、および過去の若手参加プロジェクトを参考に、若手のスキルや指導のコストを加味して計画していることを説明し、若手メンバーの参加を了承してもらった。しかしながら、遅延が発生したことで当初の目標であるX年4月稼動に間に合わせることができず、1ヶ月遅れのX+1年5月からの稼動となった。
1-3.目標未達成がステークホルダに与えた影響
C社は、プロジェクト開始後のX年11月、「注文日の翌日発送」を大々的に打ち出しており、C社のECサイト利用者からの期待も高まっていた。しかしながら、この翌日発送が可能となる時期が1ヶ月ずれこんだことにより、一部顧客からはC社を不安視する声も挙がっていると、C社の担当者からうかがった。
2.目標未達成の原因およびその究明方法
2-1.目標未達成の直接原因
本プロジェクトの終結となったX+1年5月、私は今回の遅延の原因について分析した。遅延の直接の原因となったのは、若手メンバーが担当した箇所における手戻りの発生であった。確かに若手メンバーは、経験の少ない業務であり順調ではなかった。しかし、そのために私は、過去のプロジェクトやPM経験者からの助言をもとに、若手メンバーの工数を0.8人月で見積ること、およびベテランのメンバーにOJTを担当させることいった対応を取っており、それらを加味したスケジュールから更なる遅延が発生しないように対処していた。
2-2.根本原因の究明のために実施したこと
私は、苦手メンパーの手戻りが発生していた真因を探るため、ECサイト開発チームのメンバーから、プロジェクト進行中の状況についてヒアリングを行なうことにした。すると、若手メンバーからは、「プロジュクト期間、OJTとあまり会話する時間を取れなかった」という回答を得た。また一方で、OJTを担当したベテランメンバーからは、「自身の業務スケジュールが厳しい期間があり、十分に相談に乗る時間を確保できていなかった」という回答を得た。これらのことから、私は、若手を支える組織構造が上手く機能していなかった可能性があると考え、ベテランメンバーが多忙となっていた要因を探ることにした。
C社の担当者に対し、ベテランメンバーからの回答について報告したところ、「システムの詳細設計についてこちらから何度か軽微な修正をお願いしたことがあったのだけれど、それが影響していたのかもしれない」という返答をいただいた。
2-3.根本原因の内容
ECサイト開発のメンバー、および担当C社の担当者からのヒアリング内容をふまえ、私は本プロジェクトの遅延発生の原因を以下のように整理した。
(1)システム詳和設計が完了した後の段階で、システム詳細設計についての修正が行われていた。
(2)ベテランメンバーは、これまでの経験から、自身で実施する分には問題のない修正であると判断して修正を承認していた。
(3)結果としてベテランメンバーは修正による追加工数が発生しており、若手メンバーとのコミュニケーションの時間をけずっていた。
(4)これによりベテランメンバーは、若手メンバーとの認識の齟齬に気付くことができず、手戻りが多く発生してしまった。
すなわち、今回の根本原因は、OJTとなるベテランメンバーに対し、若手メンバーが参加する場合にどのようなチーム進行をすべきであったかを伝えきれていなかったことであるといえる。通常のプロジェクトと比較して、チームメンバーとの認識のすり合わせや、作成する成果物の方向性に間違いがないかの確認に、より時間をかける必要があることを、ベテランメンバーに十分に周知できていなかったということだ。
社外の事例としても、「OJT」という役割だけを任命し、具体的な目標や目的、実施すべき活動を明確にしなかったことで、実態として若手メンバーの成長につながらなかったという事例を発見し、今回の事象と大きく重なっていた。私は、この社外事例とともに記載されていた対応策を、防止策の定着方法として利用することにした。
3.再発防止策と定着のための工夫
3-1.根本原因を基にした再発防止策
私は、今回発見された根本原因から、若手メンバー参画時の受入側チームがプロジェクト計画を立案するにあたって考慮すべきことを整理することにした。
まず、既存の若手参加プロジェクトから得た、「若手メンバーの工数の見積りは1未満で設定すること」、およで「若手メンバーに対し、ベテランメンバーが指導するコストを加味すること」である。これらがなければ、今国のプロジェクトは1ヶ月以上の遅延が発生したことも考えられるためである。
そして、本プロジェクトから得られた知見である、「ベテランメンバーについても、若手メンバーに対して十分なコミュニケーションが取れるように、専用のタスクを設定し時間を確保する」ことである。
3-2.再発防止案の定着のための工夫
私は、以上のように項目をリストアップレ、社内チームがプロジェクトを開始する際に一読すべきアニュアルとして設定することを弊社上層部に提案した。マニュアル自体にボリュームがあるわけではなく、かつスケジュールの作成前に確認しておくことで、より工期の見積りを現実的なものとし、また若手育成という目的の達成に近くと考えたためである。
この提案について上層部にも理解を得てもらうことができ、今後若手メンバーが参画するプロジェクトについては、マニュアルを活用していくこととなった。
あとがき
どういったポイントを意識して書いたか?など、合格論文作成のためのコツ・テクニックなどは後日別の記事にて書こうかなと思います。
令和6年度秋期で受験したシステム監査技術者試験についても合格していたので、同じく開示して実際の答案を公開予定です。