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【恋愛日記⑤】恋は必然、愛は偶然。この物語が迎えた一つの結末。

じれったい日々。これはいつ終わるのか?

10月前半に涼子さんと3回目の電話をしてから、何の大沙汰も無いまま時が流れた。気づけば10月も半ば。朝と夜は肌寒く、秋の訪れを感じる。

2週間何の連絡もないことに対して、徐々に不安が募ってきた。悩みやすい性格であろう涼子さん。メチャクチャ悩んで苦しんでしまっているのではないか。自分のせいで苦しめているとしたら、申し訳ない、、、。

ついにボクは涼子さんに一通のLINEをした。

真剣に悩んでもらっているであろうことに対して、申し訳なさがあると。何か自分に出来ることがあれば、何なりと言ってほしいと。悩みすぎないでほしいと。。。

返信は意外にも1時間以内に返ってきた。

待たしちゃってるよね、申し訳ない、、
(中略)
これからのこととかアオくんのこととか考えたくて、時間かかってる。
考えがまとまったら電話させてもらいたいな!

考えるって何を考えているのだろう、、、。人の心は分からない。

真剣に考えてくれているんだ、じれったいけど嬉しくもあるな、と感じた。

その一方で、2週間以上もただただ待つのって、いくら何でもちょっと疲れてしまったな、早く解放してくれないかな、、、とも思ったのも事実だった。

ボクはまたモヤモヤを抱えた日々を送るようになった。一体ボクは涼子さんに何を悩まれているのだろうかと。この悩みの沼にハマると、なかなか抜け出せなくなる。

ハッキリ言ってボクはイケメンではない。美人な涼子さんは目が肥えているだろう。そんなボクはやっぱり涼子さんの恋愛対象にはならないんじゃないか、、、とか。

ボクはそこそこの大学を出て、そこそこの会社に勤めているが、突出した能力なんて何もないし、どんな将来性があるのかと問われたら正直何かを答えられる自信なんてない。貯金だって少ない。涼子さんに言い寄る男の中には、もっとハイスペックでカッコいい人もいるだろう。そんな人たちと比べられたらひとたまりもない。

ボクは将来愛知県にある親の会社を継ぐ可能性が高いが、涼子さんの実家は関西にある。一人っ子の涼子さん。この物理的距離はやっぱり不安要素なのだろうか、とも考える。

私生活と仕事は表裏一体。

そんなことを考えているうちに、ボクはまた寝不足になった。ここ2か月間はあまり寝れておらず、仕事に対するコミットも下降気味。会社の診療センターに寝不足を相談したら、睡眠導入剤を渡されてしまった。

ふと、会社の先輩や上司たちの顔が脳裏に浮かんでくる。

私生活と仕事は表裏一体だと、とある上司に言われたことがある。その時は意味が分からなかったんだが、徐々に理解できるようになってきた。

家にいる時間が楽しくないと、その空気のまま出勤して職場の空気も壊してしまう。何でこの上司はこんなに不機嫌なんだろう、、、と幾度となく思ったことがある。その時の上司は、パートナーと喧嘩してしまった後かもしれないし、子供が悪さをして悩んでいるのかもしれない。

自分が本気で恋をしてみて驚いた。恋の調子に自分の全てが左右されてしまっているような、この不思議な感覚。家族ができたらもっとたくさんのことに悩んで、苦しむんだろう。そんなことが身に染みて分かった。

本気の恋から学ぶことはあまりにも多い。本気でやれば、自然と学びが立ち現れてくる。

再び動き出した物語。その先に待っているのは何か。

涼子さんと最後に電話してから1ヶ月、最後にLINEメッセージを交わしてから2週間。

この期間中、ボクは「善く生きること」「男を磨くこと」をひたすらに徹底した。常に健康に気を付け、規則正しく、人にやさしく、笑顔を作るように。それしか自分にできることは無かった。別に誰に見られるわけでもないが、後悔を残したくなかった。どんな結果になろうとも、自分自身はやり切ったんだと言いたくて。。。

苦しくなったときに、何となくそれを察知して話を聞いてくれる友人が数人いて、その存在は本当にありがたかった。ちょっとでも自分のことを肯定してくれると嬉しいし、自信になるし、またちょっと頑張れるようになってくる。

そして、とある日の夕方、涼子さんからのLINEメッセージを着信したスマホがブルブル震えた。

アオくん久しぶり!今晩空いてる?
電話してもいいかな?

ついに来た、、、

勿論ボクはすぐに承諾して、時間を決めた。

その時間までどう過ごそうかと悩んでいると、家のチャイムが鳴った。宅配便だ。会社の取引先からもらったクーポンで買った百合の花が届いた。

段ボールを開封すると、立派な百合が5本も。まだ花は咲いていないが、水に差しておくと数時間で花びらが開くらしい。

ボクは、花瓶に百合の花を生けた。

それでもまだまだ時間がある。何となくいてもたってもいられなくなり、ボクは冷たい強風の中を1時間ほど走った。

息を切らして走っている間、時代にそぐわぬ有線のイヤホンから、いろんな邦楽が流れてきた。

聞き始めて10曲目くらいか。back numberの「高嶺の花子さん」が流れ始める。

会いたいんだ 今すぐその角から 飛び出してきてくれないか
夏の魔物に連れ去られ 僕のもとへ
生まれた星のもとが 違くたって 偶然と夏の魔法とやらの力で
僕のものに なるわけないか

まさにその時の自分はこんな感情。自分はやれるだけ頑張った。きっとOKを貰える自信もある。だけど、不安だってある。

恋の女神がいるとしたら、一生の中で今日だけでいいからボクに微笑んでほしい。だって、ボクはこの恋を一生で最後の恋にしてもいいと思ってるんだから。今日だけでいいんだ。

いつもランニングすると1時間弱走るが、この日はかなりの距離を走ることができた。何かが自分の背中を押してくれた。

帰宅すると、家を出る前に活けておいた百合の花が大きな花びらを開き、ボクのことを迎えてくれた。

百合の花言葉は「純粋」なんだとか。

4度目の電話

すっかり夜も更けて、電話する時間に。涼子さんからの着信を受けて、3コールほど待ってから応答ボタンを押す。

過去3回の電話と比較すれば、自分の心は何故か落ち着いている。

数分間雑談を交わした後、涼子さんがゆっくりと話し出した。

何て話せばいいんだろう、、、
この1か月間、待たせちゃってほんとにごめんね。
めっちゃいろんなこと考えたの。

うん、うん。ボクは相槌を打ちながら聞く。

結論なんだけど、私はアオくんの気持ちには応えられない。
私に言ってくれた言葉、全部嬉しかったし、何も悪いところなかった。
この1か月間も、ご飯誘って話そうかとか、いろいろ悩んだ。
でも、私はアオくんほどの気持ちにはなれないと思ったの。
本当にごめんなさい、、、。

電話し始めたときに、振られるんだろうなと何となく直感で感じていたが、その通りになった。

言いたいこと伝わってるかな?

と聞いてくる。

ボクは「悪いところは無かったけど友達でいてほしい」という言葉がどうしても解せなくて、「要は、タイプじゃなかったってことだよね?」と聞いた。

涼子さんはこう切り返してくる。

違うよ、もしタイプじゃなかったらこんなに悩まないもん。アオくんは悪くないの。

うううん、分かんない。一から十まで分からない。。。そんなこと言われたら、モヤモヤしちゃう。バッサリ振ってくれたらいいのになんて意地の悪い、、、。

図らずしも沈黙を作ってしまった後、涼子さんが「いま何考えているの?」と聞いてくる。

ボクは、ゆっくりと自分の考えを言葉にする。

なんだろう、、、自分自身にとって完ぺきな人なんて、この世に1人もいないと思ってる。完ぺきなんて存在しないけど、お互いに「自分の選択を正解にする努力」をして、その先に愛みたいなものが生まれるんじゃないかって考えているのね。
付き合うっていうのは、、、「この人が相手なら、自分の選択を正解にできるかもしれない」って思える人を選ぶことなんじゃないかなって思ってる。
涼子さんのことはとても好き。でも、別にまだ正解だとは思ってない。もっとよく知って、これから正解にしていければなって思ってた。
だから、、、正直ちょっと寂しいというか、悔しいかも。もっと知りたかったし、知ってもらいたかったなって。
負け惜しみみたいでゴメンね。でも、これが本心かな、、、。

涼子さんは、ボクの言葉を飲み込んでから、こう返した。

うん、、、私も、ふたりで正解にしていくっていうのはその通りだと思う。でも、自分の性格的に、とりあえず付き合ってみるっていうのが考えられなくて。。。
一度決めた決断は、きっと今後も変えないと思う。

ボクは、この時率直に後悔した。

最近アマゾンプライムビデオでやっていたバチェロレッテが自分の状況に似ていて、「どう思っているの?」って答えを求められたら、貴方は最高で大好きだって言っちゃうのが男。

3回目の電話の時、必死に好きな気持ちを伝えたけど、もっと知りたいんだっていう思いは何も言わなかった。だって、それくらいド直球で伝えなければ、他の人にとられてしまうと思ったから。

でも、よくよく考えれば、自分だって選ぶ側だ。

物事を急いで、とりあえず付き合いたいって思っていた。でも、付き合うかどうかなんて形式の話。ちゃんと自分のペースで、自分の迷いをどこかで伝えればよかったかもしれない。1ヶ月間も一方的に選ばせるんじゃなくて、自分も気になることを聞いたりすればよかったと。

彼女の本心が分からない。

、、、電話はまだ続く。

11月後半には、涼子さんの誕生日がある。「せめてメッセージくらいさせてもらってもいいか」と聞くと「全然いいよ」とのこと。

してくれなかったら嘘つきだからね

とも。

振った男にそんなこと言うかな、、、。

別に絶縁したりしないし、LINEくれてもいいし、話ならいつでも聞けるからたまには電話とかしてもいいよ

とも言っていた。

ますます彼女の本心が分からない。

電話の序盤には

あ、声聞いたら、、、LINEにすればよかったかも

とも言っていた。前々から、ボクの声のことを褒めてくれていた涼子さん。こんなこと言われたら、振られた感があんまり無いよね。

人の心はだれにも分からない。3ヵ月前に出会って、2回良い雰囲気でデートして、でもその後何度もデートをリスケされてしまって、会わない間に3回も長電話して、その電話は漏れなく盛り上がって。その後1か月間待たされて、挙句の果てに「タイプだけど友達でいてほしい」。

彼女の心境にどんな変化があったのか、本心はどこにあるのか、それは本人にしか分からない。

きっと、悪くない相手だと思ってくれているのは事実。でも、他に好きな人が出来たのかもしれないし、ただただキープされ続けていただけなのかもしれないし、ガードが固すぎるだけで何回も告白すれば付き合えるのかもしれないし。かわいらしくてモテモテであるがゆえに、同学年の普通の男は釣り合わないと切り捨てられたのかもしれない。

電話のあと。

長電話を済ませて、いつも恋愛の進捗を聞いてくれていたふたりの友人に「電話終わった」とLINEメッセージ。

ひとりは既に寝ていたが、もう一人がわざわざ電話して10分ほど話を聞いてくれてありがたかった。

ボクは、意外なことに、その後すぐに眠りに落ちた。

ホッとしたんだと思う。ずっと待ち続けて、自己嫌悪になって、仕事も集中できず、謎の不安感のせいで寝不足が続いた。

そんな日々からひとまず解放される、という事実にホッとしたんだと思う。

ここ数か月間のなかではいちばんと言っていいほど、ボクは爆睡した。一気に健康を取り戻した気がした。

この日は親友と昼から会う予定があって、会った瞬間に「振られた、、、」と打ち明けた。優しい彼は何も言わず、スタバでダークモカチップフラペチーノをおごってくれた。彼がレジに並ぶ間にこぼれかけた涙を、急いで目の奥に収め直した。

今のボク、これからのボク。

この話をいろんな人にしてみた。いろんなひとが、いろんな声を掛けてくれる。

ボクを紹介してくれた会社の同期は、かつてこんなことを言っていた。

涼子はホントにガード固いから、一回目の告白じゃ報われないと思う。前の彼も4回目くらいの告白で実ったらしいし。
もし告白してダメだったとしても、気持ちがあるなら追いかけてあげて~

最近お世話になった大先輩のひとりは、こんなことを言っていた。

ダメなもんはダメなんだから、次進もう!

お世話になった別の大先輩は、こんなことを言っていた。

後悔しないように、相手に迷惑をかけない範囲で告白し続けてみては。

何度も恋の相談をさせてもらった美人の友人はこんなことを言っていた。

何度も追いかけたら、いけるかもよ?
追いかけてほしいんだと思う。

昨日一人で飲みに行ったバーのマスターは、こんなことを言っていた。

その子は利他の心が無いよね。
全部「自分が、自分が」なんだと思う。
自分都合で何回もデートリスケして、しかも音沙汰なしに1か月間も待たせて、タイプだけど友達でいてって、普通じゃないでしょ。
男に好かれている自分のことが好きなだけなんじゃない?
見た目も大事だけど、次は性格をもっと見て相手を選んでみな。
付き合わなくてむしろ良かったじゃん。
まだ追いかけたいなら「自分がその女性のことをキープしてやってる」くらいの感覚で、他の女性のことも見てみな。

婚約破棄の経験を持つ30代の尊敬する女性はこんなことを言っていた。

まあ、女の子の心は難しいよ。アオくんのことを良いとは思っても、何となく彼氏が欲しいタイミングじゃなかったとか、そんな単純な理由かもしれないしさ。あんまり固執せずにいろんな人のことを見てみなよ~。

最近友達になった同学年のかわいらしい看護師はこんなことを言っていた。

残念ながら、キープされてただけじゃない?
まあ、納得できないならもうちょっと頑張ってみるしかないんじゃない?

実にいろんなご意見があって、勉強になった。ボクもいろんなことを考えてみた。

まず、ちょっと盲目的になりすぎていたことを反省している。確かに、某バーのマスターが言っていた通り、彼女はもしかしたら自分本位過ぎる人なのかもしれない。待っている間、ボクはずっと疲れていたし、もしかしたら根本的に合っていない人なのかもな、、、とも思うようになった。

一方で、ここまでやり切ってよかったなと思う。人生に「たられば」は無いが、少なくともボクはその場その場で最善の行動をとり続けてきたつもりだ。この姿勢はどんなことに対しても持っておきたいと思える。

この3か月間で、人として成長できたと思うことも沢山ある。人生で初めて身なりを気にするようになって、頻繁に顔を綺麗に剃って、カッコいい柄付きのジャケットも買って、自炊も見た目までこだわってするようになって、もっと良いスタイルを手に入れるために2日に1回10キロも走るようになって。何より、たったひとりの女性がどうやったら喜んでくれるのかを死ぬほど考えた。こんなことは初めてだ。

仕事でもプライベートでも、もっとワクワクすることを増やしたいとも思った。恋愛が全てになってしまうのはやっぱり不健全だ。大きな恋愛にも負けないほどのワクワクを持てるものを身の回りに増やして、人間として成長していきたい。

恋の相談に乗ってくれていた女の子が、とてもいい言葉をかけてくれた。

好きな女性のことを追ってばかりじゃなくて、自分自身も成長していかないとダメだよ

本当にその通りだ。自分自身が、もっと魅力的にならないといけない。

涼子さんのことは、、、

もう少し追いかけたい。まだ好きな気持ちが残っているのもあるし、涼子さんを紹介してくれた会社の同期の「何回もアタックしないと無理。初回は必ず振られる」という言葉をちょっと信じたいし、モヤモヤしたまま終わるのは嫌だ。

ここまで来たらやり切ったほうが、人生のネタにもなるだろう、きっと。

最近、こんな言葉を見かけた。

恋は必然、愛は偶然

恋することは人生の中で沢山ある。ほぼ必然的に恋はする。でも、その人との間に愛が生まれるかどうかは偶然でしかないんだと。

好きなタイプが自分の中にあるのなら、そういう人とたくさん会って「必然的な恋」を沢山起こしなさいと。あとは数を打てば「偶然の愛」を手に出来るから、と。

涼子さんに恋したのは必然だったんだと思う。「偶然の愛」が本当に生まれないのか、もう少し時間をかけて確かめてみたいと思う。

まずは誕生日をお祝いしてあげたいから気軽に食事でも、、、と誘ってみるかな。振られた直後だし断られる可能性が高いとは思うけど、、、。

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あお
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