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【第3回シアターホームステイプロジェクト】村上慎太郎 レポート

若手の演劇人・アーティストが他地域の小劇場に滞在し、今後の活動について構想する「シアターホームステイプロジェクト」。
2023年7月~2024年1月に行われた第3回目の参加者によるレポートの紹介です。


■村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット)
 京都→東京
 こまばアゴラ劇場 2023年12月25日(月)〜2024年1月12日(金)


□滞在のレポート

【12月25日】
屋根裏ハイツに招待していただき拝見した。正直、驚いた。静かだ。静かな演劇だ。もちろん静かな演劇と呼ばれた時代の作家の作品は観たことがあるが、こんなにしっかり静かな演劇を静かな演劇としてやっているのを初めて観たかも知れない。自然なやり取りを徹底している。東京の器の広さを感じた。たくさんの上演作品の中で、こういった趣向の劇があるから、面白いんだろうな、と。時間軸も行ったり来たり、役も代わる代わる演じられていて、不思議な時間と空間を楽しむことができました。

【26日】
悪い芝居を観劇。京都で同世代の劇団で、活動休止前最後の公演だった。しかも千穐楽で、非常に感じることが多かった。京都で旗上げて、活動拠点が東京へと移り、活動の幅も広がった。が、活動休止だ。僕らの劇団は、今も活動を続けているが、ほぼ京都での上演だし、関西から出ることがほぼない。地元でチマチマ続けている劇団と、大きくなって、ドンドン活動広げていったが活動休止した悪い芝居。それを客席から体感して、記憶や思い出と重なる貴重な観劇体験でした。
その後、シニフィエさんの稽古場見学に。物凄い信頼関係で、ドンドンとシーンを当たっていく。稽古場見学をしたのはもしかすると何十年ぶりかとかで、観ていて大変参考になりました。
夜は、アテンドしてくれる黒澤多生さんに東京の劇場の地図を教えてもらう。ここには街がたくさんあって、劇場も追いきれないほどある事を、実感する。

【27日】
パルコ劇場にて「海をゆく者」を観劇。正直なところ話の内容がわからないのに、面白い、という体験をした。俳優がとにかく良い。演出も面白い・・が話はちょっと分からなかった。戯曲を買って読んで、なんとなくゴーリキーの「どん底」とポーカーを混ぜたような話なんだろうな、と感じたくらいで。まあ、そういう観劇体験があってもいいと思うし、稀有な体験であった。色んな人にお勧めしたいと思えるほどに、いろんなアイデアでグイっと乗り切っている素晴らしい舞台に感じた。

【30日】
TeXi’sを観劇。回遊型と呼ばれる趣向で、観客は一か所にとどまらず、ウロウロしながら観劇する。なので、感想が難しい。自分が観たものは他人とは違うので、観客それぞれに物語が存在する。これもまた非常に稀有な体験だったが、自分ならどうするだろう・・こうするだろう・・という事ばかり考えていた。今、上演時間が長くて、いつでも入退場自由の劇を作ろうと画策しているので、非常に参考になった。

夜は、黒澤さんが忘年会を主催してくださる。ゲストという立場で参加させてもらう。20人強というとんでもない人数だった。しかも、ほとんどの方が20代。若い。劇団発足から数年だという人がほとんど。話してて感じたのは、注目されると一気に活動の幅が広がっていってる劇団が多いように感じた。関西で、18年劇団をやっているが、そんなにスグに注目されることはない。しかし、数年で岸田賞にノミネートや下読みの提出など、チャンスがそこら中に転がっているように感じた。
その場で、面白いかな、と思って東京の演劇マップを参加者の方に書いてもらった。なかなかおもしろかったので、誤解を恐れずに、コチラに添付しておきます。

朝まで、色んな人の話を聴かせてもらったり、親交を深めた。
地方にいると昨今のパワハラ、セクハラ等の様々なハラスメント問題に揺れて、こういう飲み会も敬遠されているのかと思いきや、普通に開催されていた。もちろんそういった行為がある訳ではない。ちゃんとモラルとデリ
カシーを持って、気をつけてちゃんとしていれば楽しく交流できるのだから、こういう会があってもよいのだと思っている自分には救いだった。東京の演劇人の飲み会に混ぜてもらえた日でした。

【31日】
さて。年越しである。渋谷のスクランブル交差点に行った。それ以外は、台本を書いていた。京都で新作の上演を二本抱えている。頭は正直それでいっぱいだ。いいへんじの中島さんに東京の劇作家はどこで書いているのか?尋ねたところ、ガストかプロントです・・ということで、ガストで書く。ガストはコンセントもあるし、レジもテーブルで出来るし、最強だ。そして年越しは、宿で静かに過ごす。

【1月1日】
この日も、ガストで書いていた。一度書き出すと、焦りが勝る。サボっていた自分が心の中で謝っている。あと、東京の劇作家の皆さんと話して、とても刺激になった。もっとやらないと、もっと追い込まないと!と、自分の目標も再確認した。今年は再出発の一年になりそうだ。

【2日】
こまばアゴラ劇場の新年会に混ぜてもらう。この日もいろんな話を聴く。東京の演劇事情、学校現場のWS事情などなど。自分は、大阪・京都でWSを最大週8回やることもあるくらい、かなり実施機会に恵まれている。逆にやりすぎて頭打ちになっているくらいで。大体、同じような展開、どうにかなっちゃう環境に少し飽きが来ているくらいだ。その中で、最近感じるのは学校WSの更新が必要だと感じていたりもする。ユーチューブや動画やSNSで面白いことが、ドンドン更新されて行っているように見受けられる。それによって、シアターゲームも古くなっているようにも感じるのだ。僕らが求めていたことは、TikTokのダンスを踊ったりして体験していたりするし、四六時中LINEでこみにケーションを取っていたり、コミュニケーションの処世術なんてショート動画で山ほど見ていたりする。さて、そんな時代に学校教育での演劇はどうするか? そんな話もした。シアターホームステイで、自分の感じているこの疑問も解消したい。太田裕子さんと話すといいよ。と紹介してもらう。

【3日】
僕のファンだという青年座の若手俳優(男性)の方に渋谷を案内してもらう。初対面で。東京で演劇を志し、僕がたまたま出ていた番組を見たそうだ。この世に一人いるかいないかの珍しい人だ。

【4日】
さて、焦って台本を書いた一日でした。

【5日】
Iakuの横山さんに会う。ご飯をして、色んな話を伺う。もう五年くらい一緒に仕事をしているが、ちゃんと話したのは初めてかもしれない。横山さんは大阪で活躍されていた時から知っている。観劇もした。その後、東京に進出するにあたって、色んなアクションをしかけて、観て欲しい人を呼んで、ドンドン活動の幅を広げていったのだという。「そういうのしなあかんで」と、強い口調でも言ってくれた。そうだよな。簡単に進出してきたわけじゃなくて、傷ついたり、努力したり、チャレンジしたりして、色んな人に知ってもらって、この人の劇に出たいと思ってもらえたりして、着実にやってきたんだ。それを間近に体験することができた。非常に刺激的でした。
そして、その後、寝込みました、笑。

発熱と激しい咳き込みと・・物凄い風邪。
二度の病院、そして10日まで養生してた。
早稲田も案内してもらう予定だったが、ドタキャンしなきゃいけないし、招待してもらっていた公演も、飲みに行こうと誘ってもらっていたものも、全部キャンセルした。ごめんなさい。という気持ちだった。

【11日】
そして恐ろしいほど回復。
まずお昼に青年団の太田裕子さんに宮崎さんという方をご紹介いただく。大阪で学校WSをしたいのだという。しかし僕が紹介できるのは交通費が全額でない。それでもいいんですかね?と聴くと、それでもいいということだ。大阪出身で、地元でWSをしたいとのことで、なんともモチベーションの高い方なんだ!と驚く。自分も関西でやっているが、他の地でやってみたらどうなるのだろう?という興味が出た。やってみたい・・が、チャンスをどうやってつかむのだろうか。結局、今は、ツテでお願いされて打ち返すように実施する事ばかりだ。

その後、nanoriという旗揚げ公演をする劇団の稽古場を見せてもらう。参加もさせてくれたし、新鮮な気持ちになった。やわらかい空気感で、楽しく稽古を終えていた。

そして、上映会。これはアゴラ劇場の日和下駄くんが主催してくれた。
村上の劇は東京で受け入れられるか?というのを上映会をしてみよう!という企画で。自身のある作品を流しましょう。ということで、関西演劇祭で審査員特別賞をとり、再演しやすそうな「サンクコストは墓場に立つ」というのを青年団の方々に観てもらう。
ゲストはDr. Holiday Laboraの山本伊等くん。そして青年団の方や青年座の方。感想としては、「東京で受け入れられると思う」という意見が多くいただいた。かなりの自信をもらった。最後に上映会開催してくれて大変感謝している。

結局、このシアターホームステイの目的は、「東京で上演する機会が欲しい」という動機であった。東京で上演すると、多くの観劇を知っていて言葉を持った人に見てもらえる。京都だと、そういった方に観てもらえる機会が本当に少ないように感じている。
そして、多くのチャンスが近くにあるようにも感じた。

【12日】
部屋の片づけをして、帰路へ。


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今回、「東京で上演したい」という目的を持ってきたが、東京には多くの上演がある。多種多様バラエティ豊かな趣向性・形態で、追いきれないほどに。その1つとして上演するのであれば、1つの演劇の個性として、劇団・夕暮れ社は東京で上演したほうがいいと感じた。存在意義も感じた。その繋がりを作る事ができた。この繋がりが無くならないように、また度々訪れたいと考えている。そして感謝を伝えるべく活動の幅を広げていきたい。


主催:一般社団法人全国小劇場ネットワーク
助成:公益財団法人セゾン文化財団「創造環境イノベーション」

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