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既製品の靴に合わせるのは大変

今日、Aさんというお客様がいらっしゃいました。

男性の方で、その方は普段24.5センチの靴を履いているとのこと。

身長の割にはサイズがちょっと小さいかなと思いつつ足を計測してみたところ、足長はだいたい253ミリほど、イギリスサイズではsize 7 1/2の足(センチでいうとだいたい25.5センチくらい)でした。

どうして足長はもう少し大きいのに、普段24.5センチの靴を履いているのかというと、Aさんの足の幅がとっても細いからです。

日本で普通に売られている靴は、ウィズ(足囲)を表す表記が2Eくらいのものが多く足が細い方や幅の広い方には合いません。

ちなみに、既製品ではウィズの細いものでEから広いもので4Eくらいまでは頑張って探せば見つけることができますが(Eと2Eの違いは6ミリ、2Eと3Eの違いも6ミリという具合でウィズは6ミリピッチになります)、実際には気に入ったデザインのものがあったとしても、幅まで希望が叶うことはほとんどありません。

Aさんの足に合う靴のサイズは、足長が25.5センチで、ウィズはDくらいなのに対し、ウィズDの靴はなかなか見つからないので、24.5センチでウィズがEというものを履いているとのことでした。

Aさんと同じようなサイズ選びをしている方は、結構多いのではないかと思います。もしくは、逆に幅広の足の方は、足長がそんなに長くないけれど幅が合わないのでもっと大きいサイズのものを履いているということもあるかもしれません。

Aさんの場合、いくつか問題がありました。

まず、実際の足長に対して靴の足長が足りないので、屈曲点(屈曲点は接地点でもあり、靴の幅が一番広い部分でもあります)が合っていないこと、そして捨て寸にまで足の指を入れて靴を履いているので、当然ながら指先がかなり窮屈になってしまい、足の薬指や小指は内側に曲がってしまっていること。

一見大したことないように思えるかもしれませんが、これは大変なことです。

そもそも、人は歩くときにしっかりと足を機能させて歩き、そのことでふくらはぎに刺激を与えて、夕方になると下の方に落ちてくる血液をしっかりと循環させることで、身体を良い状態に保つようにできているのですが、足の指がちゃんと動かせないと足をしっかりと機能させて歩くことができず、そこからつながる一連の効果が得られなくなってしまう可能性が大きいのです。

かと言って、25.5センチの靴を履くと幅がゆるゆるになってしまうため、これまたちゃんと歩くことができません。

つまり、Aさんは既製品の靴をちゃんと合わせることが困難なのです。

これはあまり知られていないことで、これまで私がたくさんの方々の足の計測をさせていただいたところの感覚では、既製品の靴をちゃんと履けるのはだいたい20%くらいの方のみで、残りの80%の方々はAさんと同じように既製品の靴ではちゃんとフィットしません。

それなら、靴のメーカーがもっと幅のレンジを増やしてくれればよいということですが、今でもサイズレンジで製作にコストがかかり、おまけに売れのこりのリスクが高い靴に、これ以上投資をするのは難しいのが現状です。

さらに、単にウィズといってもそれは屈曲点の足囲であって、そのほかの部分においても、例えば甲の高い方や低い方もいて、既製品でそこまでサイズ&ウィズ&形状のレンジを増やすのは実際には困難なのです。

ですが、もっと大変なのは、靴を履いている方々がその靴のサイズが合っていないことを認識していないことです。

合っていると思って履いている靴なのに、計測してみると全然合っていないということが本当に多く、でも何が正しいフィッティングなんで誰も教えてくれないので、仕方ないといえば仕方ないのですが、総じて靴のフィッティングに関していえば残念なことばかりなのです。

オーダーメイドの靴なら全く問題ないのに、大量生産の既製品だとなかなか難しいです。

でも、これで「無理だ~」なんて言っていたら何の解決にもならないので、これは何とかしたいと常に思っています。

私たち靴屋も問題解決に向けて頑張りますので、皆さんも靴のフィッティングにもっと関心をもっていただけると嬉しいです。






















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