足の計測会のこと
私は、埼玉県の北部でオーダーメイドの靴工房をやっています。
新型コロナウィルスの感染拡大の前は、定期的に取引のあるショップにうかがって足の計測会を開催していました。
ショップは関東では都内の自由が丘の靴修理お店、そのほかだと長野市の革小物のお店と、大阪梅田の靴修理屋さん、そして神戸三宮の服屋さんにほぼ年に2~3回ずつお邪魔していました。
そのほかには、それほど頻度は高くないけれどときどきお邪魔する靴修理屋さんが名古屋と仙台に、そして近いうちにお邪魔しようと思っていた高松の店舗もありました。
今はこんな時期なのでちょっとお邪魔して計測会を開催するのは難しいですが、またそのうち落ち着いたら再開したいと思っています。
さて、そんな計測会ですが、開催する一番の目的は靴を売るためではありません。
まぁ、大きく見れば全く関係ないわけではないのですが、その場で靴を買ってほしいのではなく、足や靴のことを正しく理解していただいて、ちゃんと履くと革靴ってこんなに履きやすいし良いモノなんだということを知っていただき、
その結果として靴や足のトラブルが減り、靴の文化が少しでも向上することを願ってのことが一番の目的で計測会を開催しています。
ひとつ、あるエピソードがあります。
計測会のために靴の修理屋さんにお邪魔していた時のこと、一人の男性が靴底のつま先部分に金属の補強であるビンテージスチールをつけてほしいと、近くの靴屋さんで買った外国製の靴を持ちこんできました。
作業の間にちょこっと足の計測でもやってもらったら?ということで、私がその男性の足の計測をさせていただいたところ、適した靴のサイズがUKサイズでsize 8 でした。
ところが、その男性が買って持ち込んできた靴のサイズはsize 9。
ちょっと納得できないような雰囲気で、その男性は店内に合った同じ靴のsize 8を履いてみたところ(じつはそのショップでも同じ靴を扱っていました)、たしかにsize 8のほうがしっくりくるというとのこと。
その後、その靴はどうなったのか聞いていませんが、ちょっと残念な出来事でした。
だいたい、自分の足に合った靴のサイズっていくつなのか知っている方って、どれくらいいるのでしょう?
靴のメーカーやモデルによっても適したサイズは異なるので、これはなかなか難しい話になります。
ですが、足の計測をすることで、少なくてもその方の足の特徴を知ることができます。
足長は左右それぞれいくつなのか、左右の足にどんな特徴があるのか、幅が広いのか細いのか、甲が高いのか低いのか、カカトの形はどうなのか、そのほか左右でどんな違いがあるのかなどなど。
足の特徴や、大まかにでも適したサイズを知ることで、今後の靴選びが大きく改善されます。
また、足の形状や特徴などにより、本来の足長とは違うサイズの靴を選んだ方が良い場合もありますし、こんなカスタムをするとより足に合うとか、これくらいのフィッティングが理想だということも、計測会でお伝えしています。
計測会では、私たちにとってもたくさんのメリットがあります。
たとえば、計測会でお会いするお客様は計測することを目当てにいらっしゃる方よりも、そのお店に用事があっていらっしゃる方のほうが多いので、新たな出会いがあったり、私たちにとってはアウェイの環境でお客様のご意見を聞くことができます。
どこの誰だかわからない靴屋が足を計測したところで、最初からすべて信用していただけるわけではありません。
むしろ、ニュートラルよりもややマイナススタートでお話をさせていただくので、思ったことはズバズバ言われますし、納得いかないことははっきりとそう言われてしまいます。
そのような環境でも、お客様にしっかりと納得していただけるように、ちゃんとわかりやすくお話しする訓練にもなっています。
そうやって、毎回10人から20人くらいのお客様の足を計測させていただき、足の特徴や適したサイズ、そのほか必要な情報をお伝えし、おそらく一定数のお客様は靴や足に関心をお持ちいただいているようです。
考え方に因ったら本当におせっかいな話かもしれませんが、もしかしたら足を知ることで足のトラブルを解決できたり、歩くことが好きになったり、何かしら良い結果につながることもあるかもしれません。
足の計測サービスは、まだまだその必要性が十分に理解されていないかもしれませんが、一度やってみるとそれもアリかなと思っていただけるはずです。
またコロナが落ち着いから、全国に出張して計測イベントができることを願っています。