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靴工房でお客様を迎えること

初めて靴の工房に出向いて靴を注文することになったら、お客様はきっと緊張されることでしょう。

どんな工房なのか、面倒くさそうな職人が出てくるのか、何か無知なことで怒られてしまうのか・・・などなど。

実際、そんなことはまずありません。

私たち専門家は専門家としてお客様にアドバイスをする立場であり、お客様は私たち専門家を自販機のように使っていただければよいと思っています。

そして、お客様が心配されるのと同じように、私たちのようなお客様をお迎えする側も同じように初めてお会いするお客様においてはドキドキです。

どんな方がいらっしゃるのだろう?って。

でも、これまで18年間、何百人という初めてお会いするお客様をお迎えしていて思うのは、お客様はいい人ばかりだったということ。

そりゃ、ちょっと変わった方もいらっしゃいましたが、よくよく考えてみると、靴を注文したいといって私たちの工房を選んでくださって、その上わざわざこちらに来て下さるわけですから、厄介なことになるわけがないのはすぐにわかります。

さらに、じっくりとお話をうかがっていくと、少しずつお互いを理解することができて、その方のお人柄がよくわかってきます。

どのような理由でオーダーメイドの靴に興味をお持ちいただいたのか、今の問題は何なのか、どのようなものを望んでいらっしゃるのか・・・。

直接靴の話をうかがってしまうと、お客様は上手に伝えられない方もいらっしゃるので、どうでもよい世間話からちょっとずつ打ち解けつつ問題をうかがいつつ、加えて私たちの考え方も理解していただきつつ、うまく重なる部分を見つけて提案させていただいています。

お客様にしたら、決して安い買い物ではありませんし、私たちとしても気に入っていただいて永いお付き合いができることが大きなメリットになるので、お客様が満足してくださるということが重要な要素になります。

そんな感じでずっとこの工房を続けてきましたが、ふと振り返ってみるとなかなか面白い経験もあります。

もう10年くらい前のことですが、クリスマスイブの日の夕方にご連絡があってお越しくださった男性のお客様と話が盛り上がり、夜中の12時過ぎまでしゃべっていたり(うちの家内は浮気していると思ったのだとか)、

私たちと永いお付き合いのカップルのお二人がいらっしゃって、私が外で彼氏さんと話し込んでいるときにたまたま工房にふらりと通りがかりのお客様がいらっしゃって、ちょっと願いと彼女さんに接客をお願いしてしまったり、

そのような接客なら、イベントなどで初めていらっしゃるお客様の接客は、これまでほとんどのケースでその場にいらっしゃる常連さんにお任せしてしまっていたり、

イベントなどでは、集まったお客様どうして仲良くなって、私を置いてみんなでご飯を食べに行ってしまったり、

そんなことはたくさんあります。

だいたい、常連さんといっても、来店2回目で常連さんのような方もいらっしゃいますし、お客様とは本当に良いお付き合いをさせていただいています。

お越しくださるお客様は、なかなか趣味を楽しんでいらっしゃる方も多く、そんな方に限ってその趣味の楽しい部分をお話になるので、私もずるずると引き込まれていて、大変なことになっています。

また、専門家の方から情報をいただくこともあり、私たちの工房は情報のハブになっています。

靴やなんだけど、確かに靴を作っているけれど、なんとなくちょっと違う部分で盛り上がっている感も否めないところです。

この新型コロナが早く落ち着いて、みんなが気兼ねなく外出できるようになったら、皆さんにまた、そしてまだお越しいただいたことのない方々にもぜひ私たちの工房にいらしていただきたいです。



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