見出し画像

ボード線図を手で書いてみよう

初めまして。 Shoemakerと申します。

制御工学を勉強していると、突然
ボード線図というものが現れます。

私はこういうボード線図を見るたびに、
なんだこれ….とドン引きしていました。

よくわかんない曲線だけ見せられても、縦軸がlogだったりなんだったりで、
正直意味不明です。

そこで、ボード線図をちゃんと理解するために、伝達関数からボード線図を手書きするまでのかけ橋的な文章が必要かな、と思って書いてみました。私もそうなんだよー、という人、
なんかボード線図に抵抗がある人は読んでみてください。

伝達関数

だいたいの伝達関数は$${H(s) = \frac{\sum_{i= 0}^{m} b_{i} s ^ {i}}{\sum_{j=0}^{n} a_{j} s ^ {j}}}$$みたいな形をしています。

こいつをなんとかしましょう。
そのために、$${b,a}$$に着目してみます。

これらは実数です。つまり、普通の場合、与えられる伝達関数の
分子と分母はどっちも実数係数です。

さて、ここで、代数学の基本定理を思い出しましょう。
代数学の基本定理とは…

複素数係数の $${n}$$次方程式は複素数の範囲で(重複度も含めて)$${n}$$ 個の解を持つ。

ガウスさん

でした。というわけで、この分子も分母も、すくなくとも$${n}$$個の一次式に分解できることがわかりました。ということで、この伝達関数は

$${H(s) = \frac{a_0 (s - \alpha_1) \cdots (s - \alpha_n)}{b_0 (s - \beta_1) \cdots (s - \beta_m)}}$$
みたいに因数分解できるということになります。
ただ、これだと$${\alpha,\beta}$$に実数でない複素数が入ってて、
なんかさらにややこしくなったような気がします。しかし、
よくよく考えてみると、$${H(s)}$$は実数係数だったんでした。
ということは…?
そうです、なんとこの中に、もし複素数であって実数でない
解があるなら、その共役な解も必ず含まれるのです。また、
共役な解$${\alpha, \bar{\alpha}}$$をもつ二つの一次式の積は
実数係数となります。

つまり、複素数であって実数でないような解をもつような
トリッキーなやつは、共役なやつと一緒にしてしまって、二次式で
考えちゃうぞ!と意気込むことで、伝達関数を、
高々2次の係数が実数の(ここがうれしい)多項式の乗除で書けるということが判明しました。

これを数式で書くとこんな感じです。

$$
H(s) = K \frac{\prod_{i=1}^{\alpha} (s - z_{i}) \prod_{j=1}^{\beta} (s ^ 2 + 2 \zeta_j \omega_j + \omega_j ^ 2)}{\prod_{k=1}^{\gamma} (s - p_{k})\prod_{l=1}^{\delta} (s ^ 2 + 2 \zeta_l \omega_l + \omega_l ^ 2)}
$$

この数式は適当です。係数が全部実数だよ、というイメージを持ってください。(もちろん $${K = \frac{a_0}{b_0}}$$です。)

ここから、ちょっとテクニックっぽいところに入ります。

$$
H(s) = K \frac{\prod \omega}{\prod \omega ^ {\prime}}s ^ p\frac{\prod_{i=1}^{\alpha} (\frac{s}{\omega} + 1 ) \prod_{j=1}^{\beta} (\frac{s}{\omega} ^ 2 + 2 \zeta \frac{s}{\omega}  + 1)}{\prod_{k=1}^{\gamma} (\frac{s}{\omega ^ {\prime} }+ 1)\prod_{l=1}^{\delta} (\frac{s}{\omega ^ {\prime}} ^ 2 + 2 \zeta ^ {\prime}\frac{s}{\omega ^ {\prime}}  + 1)}
$$

こういう風に、$${H(s)}$$を加工します。これで下準備は完了です。

作図

こういう風に$${H(s)}$$を加工しました。では、作図に入っていきましょう。
ボード線図では、ゲイン、位相をそれぞれ
$${20 \log{A}}$$というように、対数をとって表現するのでした。
ここでゲインの引数であるAは絶対値であることが必要です。

そこで、この伝達関数の絶対値をこの中に入れることにします。
このようにすると、伝達関数の積は和に形を変えます。

例えばさっきの例をゲインに代入すると…ゲイン$${G(s)}$$は

$$
G(s) = G(K ^ {\prime}) + G(\frac{s}{\omega} + 1 ) + \cdots +G(\frac{s}{\omega} ^ 2 + 2 \zeta \frac{s}{\omega}  + 1)- G(\frac{s}{\omega ^ {\prime}} + 1 ) - G(\frac{s}{\omega ^ {\prime}} ^ 2+ 2 \zeta ^ {\prime}\frac{s}{\omega ^{\prime}}  + 1)
$$

のように、なんと足し算・引き算になります。つまり、
あんなに難しかった伝達関数も、分解していった各部分の
ゲインを足し合わせればOK、ということになります。

これが非常にうれしいことです。

ということで、図を描く方法は、結局部分部分の
伝達関数の図を書いて、最後に全部足し合わせればいい、ということがわかりました。

しかし、その部分部分の伝達関数は、高々2次の多項式です。このとき、それぞれの伝達関数の図の書き方については、足立修一先生がyoutubeにて非常にわかりやすい講義をされていますので、ぜひそちらをご参照ください。
(ボード線図 書き方)でyoutube検索すればすぐに出てきます。)

ということで、伝達関数から、手でかけるまでの考え方をまとめました。
最後は足立先生に丸投げしています。わかりやすいからです。ごめんなさい。
また、このボード線図のまとめ方は、スワースモア大学にいらっしゃった
Erik Cheeverさんのサイトをかなり参考にしています。
こちらは全部英語ですが、興味のある方はぜひどうぞ。
(https://lpsa.swarthmore.edu/Bode/Bode.html)

また見てくださいね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?