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はじめに|大堀理『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』

9月1日発売の『ロボット手術と膀胱がん・尿管がん』より「はじめに」をご紹介します。ロボット手術の導入に道を開いた第一人者が伝える、ロボット手術の最前線とは?

はじめに

 泌尿器科では男性の前立腺がんが最も多い悪性疾患ですが、次に多いのが膀胱がんです。一般的に前立腺がんは成長がゆっくりで、命を脅かす可能性は少ないのですが、膀胱がんはしっかり治療をしないと生活や命を脅かされる結果となります。

 日進月歩で医学は進歩しています。泌尿器科の中では前立腺がんの場合、血液のPSA(前立腺特異抗原)検査で早期発見されることが多く、ロボット手術、放射線、薬剤治療も劇的に進歩しました。

 また、腎がんは検診や人間ドックの超音波やCT(コンピュータ断層撮影)検査が普及し、小さいうちに早期発見されることが多く、これもロボット手術で切除可能なことも多く、さらに再発・転移を起こした時の薬物療法も、劇的に進歩しました。

 一方で、膀胱がんはどうかというと、当然、多方面での進歩はありますが、血尿→内視鏡手術→再発予防のBCG治療(後述します)→再発したら内視鏡手術→膀胱がんの根が深ければ、あるいはBCG治療後再発したら→膀胱全摘、という大きな流れには変わりはありません。

 その中で、膀胱全摘でロボットが使えるようになったのは、1つの朗報かもしれません。以前からあった開腹の膀胱全摘は、出血が多い、術後の痛みが強い、傷の感染などが多いという問題がありましたが、ロボット手術になり、これらはかなり減って身体への負担が少なくなりました。また、再発・転移に対する効果のある抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬が開発されたのも、大きな進歩だと思います。

 さらに今回のもう1つの主題である腎盂がん・尿管がんも未だに診断が難しいがんですが、結局は早期診断をして早期手術という基本に行き着きます。その手術はとても厳しく、問題のある尿管と共に腎臓も一緒に取る治療です。幸い、腎臓は2個ありますので1個を取ってしまっても多くの場合は生活に問題は起きません。しかし、膀胱がんと同様で、他のがんと比較すると、どうも進歩が遅い気がします。その中でも最終的なロボット手術で2022年4月から保険適用が認められたのは、これも朗報かもしれません。
 膀胱がんの場合には、「痛くもかゆくもないけど尿が赤くなった」のを契機に発見されることが多いのですが、痛くもかゆくもないので何もせず様子を見てしまう危険もあります。

 多くの場合、内視鏡で膀胱の中を見れば診断がつきます。以前は太くて硬い内視鏡でしたので、特に男性は痛い・辛い検査でしたが現在はかなり細い・柔らかい内視鏡なので一瞬の不快感程度ですみます。どんながんでも、早期発見・早期治療が病気を治す上での基本ですが、膀胱がんもそうです。目に見える血尿があれば迷わず泌尿器科を受診していただきたいです。

 尿管がんは、血尿を契機に診断されたり、健康診断などで尿の通りが悪いことがわかり、超音波検査で腎臓の腫れが指摘されて見つかったりします。

 現在はインターネットから多くの情報が得られる時代です。しかし、実際に血尿や膀胱がん・尿管がんの診断に至った時に、まとまった情報を得ることができるサイトが少ないと、私は感じています。また一般的な病気の情報だけではなく、実際の内視鏡手術はどのような手術で、手術後どのような状況になるかなどの情報は、なかなか手に入りません。さらに、実際に診断した後に患者さんに説明する際にも十分な時間がかけられず曖昧に終わってしまうこともあります。

 そこで、膀胱がんと尿管がんの全体をカバーし、特に最新の内視鏡手術やロボット手術を中心に解説するために、本書を上梓しました。

                 
大堀 理

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