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映像が浮かぶ言葉
その言葉を聞くと映像や世界が浮かび上がってくる、ということがありますよね。言葉の数が少なく、それでいて広がる世界の解像度が高いほど美しい。俳句なんかはまさしくそれを形式化した芸術なのだと思うわけですが、個人的に追っているのはヒップホップ。同じ言語を扱う芸術という括りの中でもヒップホップと俳句の違うところは、ヒップホップの方が創作の変数が多いところです。
言葉、日本語の一本勝負な俳句に対して、ヒップホップはビートがあって、声質があって、フロウがあって、それで言葉がある。言葉一本勝負の俳句が超高度なことは言うまでもないですが、変数の多さも一方で難しい。それぞれをひとつの世界観にピントを合わせないといけないわけなので。これは言葉を紡ぐ技術とはまた別の技術。
舐達麻のFLOATIN'はそのピントが完璧に合った状態で、キリキリに練り上げられた言葉が紡がれてますよね。語られ尽くされてる感もありますが、
「バール買いに行かせたイマフジ、仕事バックれたタカハシ、借りに行かせた武富士」
やっぱりこれはすごいですよね。埼玉県熊谷市を拠点とする彼らの生活が、いろんな切り口・シーンから浮かんでくる。郊外都市、クリーンでは無さそうな周りの人間関係、物騒な企て、そうした事象に対して冷静でいるスタンス。それらがポン、ポンと名詞を置いていくことで描かれている。
FLOATIN'では別の方法でも世界が描かれていて、
「やることを探す、揉め事をかわす、面倒を片す、ほとぼりを冷ます、気に入らないヤツはブチカマす」
この一節からもダウナーでややアウトローな郊外都市生活の中で、自分を律して淡々と生きる様が浮かんできますが、これは名詞ではなく動詞を置いていってますね。
この2つの手法って全く別物で、同じシーンを2人の映画監督が撮るようなものだと思うんですけど、違う手法でトンマナを揃えて両方を磨き上げたパンチラインにしてしまうBADSAIKUSHってすごいんだなあと思いました。