サブスクからとんねるずにハマった新参ワンフーが、日本武道館LIVEを観た話

多忙な現代社会 大量の過去の名曲も襲来

Spotify 嘘みたい iTunesだって嘘みたい びっくりどっきり技術の発明で進化は動き出す

いずれも、DOTAMAの『音楽ワルキューレ2』にある一節だ。2015年の曲だが、実に正鵠を射ていたとは思わないか。

サブスクライブという発明のおかげで、我々は先人の築いてきた財産に、いとも容易くアクセスできるようになった。
昭和も平成も令和も、プレイリストの中ではすべて平等。30年前? おじさん趣味? そんなの関係ない。フィーリングに合うなら、それでいいじゃないか。
ここ数年のシティポップの再興ぶりは、それを端的に示していると言っていいだろう。
サブスクは、温故知新を我々に与えてくれるタイムマシンなのだ。

そのサブスクのおかげで、数年前からとんねるずにハマっている。
自分が10代だったころには、後輩芸人の持ち寄るギャグを見守ったり、時には無茶ぶりをしたりと大御所しぐさが板についていた二人。
しかしその音楽活動は、単なるお笑い芸人のアイドル活動にとどまらないパワーがあったのだ。

流行りのジャンルやアーティストのパロディという遊びと、ダンディズムへの憧れ、そして哀愁がいい感じにミックスされた彼らの歌は、まさにディスク上で展開される笑いあり涙ありのコメディショーなのである。

そのとんねるずが29年ぶりに、企画ユニットではない2人きりのライブを決行した。過去の伝説だと思っていた、アーティストとしてのとんねるずが復活するーー。出来ることなら生で見届けたかったが、あいにく武道館のチケットは落選。流石に超一流芸能人ということで、どうやら凄まじい倍率だったらしい。
しかしフジテレビが2日目の模様をPPVで配信してくれていたので、ありがたく鑑賞させてもらった。
結論は……とんねるずは、やはり「おもしろカッコいい」!

『雨の西麻布』『嵐のマッチョマン』『ガラガラヘビがやってくる』『がじゃいも』……
本格派ではなくパロディだからこその、「エンタメってこんなに楽しいんだぜ!」と、テレビという名のファンタジーに我々を引き込ませる距離感の近さ。それはあたかも、アニメの世界とバラエティの文脈を出会わせたVtuberたちのようである。
そこに加えて、予定調和を許さないサービス精神のアドリブ。
テレビ番組の録画から引用されたアーカイブ映像を観るたび、彼らはまさに”エンターテイナー”を体現する存在だったのだと実感した。その時の感覚が最新版となって帰ってきたのだ。

そして『情けねえ』『大人になるな』『一番偉い人へ』……
正直言って職業面でも精神面でも不安定で、失敗することに怯えていた自分にとって、テレビというしがらみの多い世界で、「自分のやりたいこと」を追求するために闘ってきたであろう2人の歌がいかに励みになったことか。
単なる理想論、夢物語ではない、いろいろ苦しいことはあるけど、心にこれは忘れないでいようぜ、と呼び掛けてくれる。そんな歌だから、心に響いてくる。
伊集院静が伊達歩の名で作詞し、今回のライブでも追悼の意を込めて歌われた『どうにかなるさ』ラストの「どうにかなるさ~」はことあるごとにふと呟いている。

これらの魅力を、ストイックに奇をてらわず届けようという心意気が素晴らしかった。

貴さん(石橋貴明)は1日目で張り切り過ぎたらしく、初めの方は疲れがあからさまに出ているように見えたが、それでも会場のボルテージと比例して調子を取り戻していった辺りさすがだった。
終盤の再アンコール『ガラガラヘビがやってくる』で1日目は使わなかったノリダーヘルを装着して現れ、「これで1日目と映像がつながらなくなりました」と開き直って見せるノリさん(木梨憲武)のお茶目さ(開き直りに応えて配信映像ではノリダーヘルが出たり消えたりしている)も楽しかった。

自分の拙い表現力故、とんねるずの魅力をより広く伝えるにはいささかありきたりすぎる言葉になってしまったが、彼らの音楽はまだまだ再評価される余地が十分にあると思う。

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