【ケダモノオペラ】『小さな花嫁が来た話』【小説風TRPGリプレイ】【完結済】2/9
とある村娘
「…あんがとな、おいぼれっ」
そうして、おいぼれと村娘は出会い、別れる。
……それから少しの時が経った頃ーー………
ーーー
『場面01:口を滑らせた農夫』
概要:農夫との約束を取り付ける
舞台:“闇の森”に隣接する山間の農村
ーーー
アラタヨ。キミは、いくら待っても帰ってこない主を待ち続けたが故に、自身の持つ力が底を尽きかけていた。全ての物に飢え、意識を朦朧させながら、森を彷徨い歩いていた。
アラタヨ(擬似餌)
ぐ〜きゅるるるるるる…。何度と鳴ったか知れない腹の音。
「…うぅ……いなり…すし…」
俵形の雲を見上げ、指を咥えました。ぽんっ。言葉に呼応するように、人差し指が微かに光り、いなり寿司の「幻影」をつくりました。遥か未来の言葉でいう所の…ホログラムのようにフヨフヨと浮かんでいます。
「…ええい!」
地団駄を踏みながら、ホログラムを手で振り消しました。
絵に描いた餅で、自身を苦しめつつ、宛ても無く歩みを進める。そんな貴方の耳に、妙に懐かしい声が飛び込んできた。
とある農夫
「はぁ~………」
照りつける日差し。泣く子も黙る炎天下。
「あぁ…誰かがこのボーボーになっちまった畑をよぉ…ぜぇーんぶ耕してくれたらよぉ……」
鍬をポンっと手放して、両手を天に掲げて叫ぶ。
「おらのっ! 一番の宝物をやるのになぁー!!」
アラタヨ(擬似餌)
聞き覚えのある声がする。そして、えも云われぬ空きっ腹を刺激する香りも。
「…………」ギンッ
農夫の傍らにある笹の包みに目は釘付けになりました。あれが宝、きっとそうに違いない!
「…耕してやろうか、人の子や。」
絞り出すような声をあげ、フラフラと納付に近づきました。農夫の元に、地の底から響くような声がかかります。見れば、そこにはボサボサに髪が伸びた怪しい人影。
とある農夫
「…?! ひぃっ!?」
10mmほど飛び跳ねる。およそ人とは思えない、物凄くだらしない風貌をした人物に話しかけられ、かなり驚いたらしい。(1d10 mm (1D10) > 10)
「…?! ……? …………」
驚き、興味、そして呆れと表情が分かりやすく遷移する。
「……あんちゃん、そんなちょろっちい腕で…そんな不健康そうな顔でよぉ……寝言は寝ていいなぁ……」
アラタヨ(擬似餌)
「……むぅぅ〜…では、筋骨隆々と成れば、納得がいくか?」
笹の包みに熱い視線を注いだまま、事も投げに言ってのけた。
とある農夫
「……いや、そいつは時間がかかりすぎるだろうがよぉ…?」
(えぇぇ…?てんねんってやつか?)
「…ま、まぁ、力こぶが増えなくとも、耕せれば、それでいいんだや、あんちゃん。どうだい、手伝ってくれるかぁ?」
ーまっ ちっとも役に立たねぇだろうがなぁ~・・・
アラタヨ(擬似餌)
「……………」むぅ〜!
無言ですが、ものすごく物言いたげな視線を向けました。…残る力は僅かですが、背に腹はかえられません。全ては宝(笹の包み)を手に入れる為…。印を結ぶと、ひび割れた唇を開くのでした。
一番の宝物。ダシのなせる業か、それとも核酸物質の気まぐれか、貴方は笹に包まれた”宝”に釘付けです。貴方が残り少ないとはいえ、その強大な力を使うならば、この程度の土を掘り返すことなど、造作もない事なのです。
それでは〈試練:広大な畑を耕す〉を開始します。
ーーー
試練:広大な畑を耕す
・権能:【狡猾】
・難度:1
▼波乱予言
〈予言:畑はめちゃくちゃになりました〉
〈予言:慣れない仕事に、あなたは疲れ果てました〉
〈予言:ひどい嵐がやってきました〉
ーーー
PLつぎの いよいよですね!うぉ〜!ベースロールから参りますっ
マスター オナシャス!!!
アラタヨ 2d6 ベースロール (2D6) > 5[3,2] > 5
アラタヨ
特技予言ほしいっ!ので、使いますっ!《堕天の灯火》を使用。
マスター 了解!では振り足しをどうぞ!
アラタヨ ありがとうございます!ではっ
1d6 [特技C]使用(ナンバー1、2) (1D6) > 4
マスター ベースに2もありますねぇ! いい感じですねぇ!!
アラタヨ あっ、ホントだ…!では、「波乱」にします!
★〈波乱予言:ひどい嵐がやってきました〉を獲得。
マスター
では受難ポイント1を進呈!難易度1に達したので、受難の門に到達。試練は終了!では、描写をお願いしましょう…!存分にやっておしまいッ!
ーーー
アラタヨ(擬似餌)
農夫の背と、一面に広がる広大な畑を睥睨し、朗々と呪文を唱えました。
『いなりこんこん 田を起こせ』
『起こせ起きろと 目覚まし鳴らせ』
『足踏み鳴らせ 実りのはじまり』
すると、ひとりでに農夫の鍬が、意思持つように立ち上がり、幾重にも分身したではありませんか!
『いなりこんこん いなりこんこん』
アラタヨの掛け声に合わせて、リズムよく地面を耕し始めました。
「………」
満足気に一匹頷くと…ドロン!ボサボサの人影が煙に包まれ、それが晴れた時には…筋骨隆々の男が鍬を振るっていた。
とある農夫
「…!?あわ…!?あわわ…!!??こ、こいつぁ…!?一体!?」
手から離れる鍬。 そして、摩訶不思議な事が一つ、二つ、三つ、そしてトドメに四つ。農夫は腰を抜かして驚き、まんまるくなった目で貴方を見つめます。
「あんたは一体……はっ!?」
脳裏を掠める ”ケダモノ” という御伽噺の中の存在。草鞋を脱いで正座になり、額を地にめり込ませる。
「…ひっ!ひぃ!!わかったぁ!わかったぁあ!わ、分かりましたからぁあ!!お、おらを喰わねぇでくれぇ!!」 ブルブルブル
アラタヨ
震える男の前には、筋骨隆々の男…ではなく、一匹の巨大なキツネに似た生き物。
「…喰わぬわ、戯けっ!俺は主人さまの遣いなのだぞ。」
何ゆえ、貴様を喰らう道理があろう。フンと、すまし顔で鼻を鳴らすも一瞬の事。鍬がパタリ。すっかり耕された畑の上に倒れ、一つになると同時。ボサボサ髪の人は、地に足をつき、情けない声で懇願するのでした。
「………いなり、…ずし…」ぐ〜きゅるるるるる…
笹の包みを指差し、腹を鳴らしました。
とある農夫
「………!…こ…こんな……こんなもので良ければあぁああああ!!!!!」
脚を勢いよく伸ばし、華麗に宙を舞い、宙で無駄に1回転と1捻りを加えて、笹の元に着地する。
「ささっ!!さぁ!!まずはお食べなすってえぇぇ!!」
恭しく両手を添えて、笹に包まれた稲荷ずしを貴方に献上した。
アラタヨ(擬似餌)
「……」ガッ!しゅばっ!
礼も返事も空腹の前には無力です。奪い取るように受け取ると、ひょいひょいと口の中にいなり寿司を放り込み、貪るように咀嚼し…直後。
「うっ!?」ピシャーン!
雷に撃たれたように目を見開くと、笹の葉をポロリと手から落とします。
とある農夫
「…ギャヒッ!?」
仰け反って、両手で目を覆う
「な、なにか悪い事でもぉぉぉ!?!?!?いやぁあ! もしやお味がああ!?!?あッ!おらはぁ!!この何倍もまずいでやすよおお!!??」
アラタヨ(擬似餌)
「…あじ……」
おうむ返しに繰り返すと、肩を震わせた後、ガッと農夫の両肩をひっ掴んで
とある農夫
「ぎぃぃいいああぁああ!?!??!?」
もう仰け反る余地は無かった。しかしそんな農夫の反応など、意に介さず、アラタヨは叫びました。
アラタヨ(擬似餌)
「美味い…!美味いぞ…!なんだ!此れは…!!?誰が作ったのだ、さぁ…さぁさぁさぁ!申してみよ…!」
相変わらずぼろぼろの見窄らしい風貌ですが、前髪を翻した拍子に見えた素顔が、存外に整っていること。そして、無邪気に感動いっぱいに輝かせた表情が農夫の目に映るでしょう。
とある農夫
「!?!?!!??!?!?!?!? …!? ………?!」
何度も表情が移り変わる。 驚愕、疑念、そして
「………………」
最後の顔は、”心配”だった。そして、彼は「誰が?」との質問には答えなかった。
「……け、ケダモノ様は約束ごとに厳しいというのは聞いております。明日の朝一番、沢山のその『宝物』を…!橋の向こうに置いておくからよぉ...!ソレを受け取っていってくんろ…! …どうか。 …この通り...!」
アラタヨ(擬似餌)
「………」スン
(…元より喰らうつもりなど無いと言ってるだろうに。)
無意識に鼻をひくつかせた。嘘をついていない匂いだ…たぶん。そして彼は、黙って首を縦に振った。
「相、わかった。俺はひとまず美味いものが食えたのでな。明日でも構わぬ。」
アラタヨは他のケダモノほど、「貪欲」ではありませんでした。…だからこそ、餓死寸前になったとも言えるのだろう。
とある農夫
「…っ! ありがとうごぜぇやす……!!では…明日、朝イチで…!じゅ、じゅんびしてきやぁ!!」
ビューン!!と畑作業をすっ飛ばして、村へ駆けていくのであった。
アラタヨ(擬似餌)
「………?」
(はて…何かに苦悩するような表情を浮かべていたのは見間違いだろうか……?)
小首を傾げ、足元に落ちた笹の葉を拾い上げた。
「……一番の宝物、とな…」
にへら。と締まりなく目尻が下がります。半開きの口元からはヨダレ。
明日の朝、貰えるという「宝」に思いを馳せていたのです。頭の中は、俵形の寿司の山、山、山。
…この時の彼には、知る由もありませんでした。農夫のいう「宝」が、奇妙にも、幾年か前に結んだ縁と繋がっていただなんて…
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