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【ケダモノオペラ】『小さな花嫁が来た話』【小説風TRPGリプレイ】【完結済】3/9

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『場面2』
『受け渡されてしまったタカラモノ』
・概要:ケダモノとよね子の出会い
・舞台:“闇の森”の入り口
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 とある村人を助けて、約束を交わし、美しい満月が昇った夜が明けた、次の朝。目覚めた貴方は“闇の森”のケダモノたちが、なんとなくざわついているのを感じます。

魑魅魍魎の類
『……うるさい…………』
『…? …美味しそうな香りがするぞえ』
『どこだっ どこだっ 美味しい魂どこだっ』

アラタヨ(擬似餌)
 目を擦り、ひとりごちる。

「…人の子でも迷い込んだのか?…珍しいこともあるものよ。」

 乱雑に髪をかきあげると、匂いに誘われるように住処を出ました。何処か懐かしい匂い。少し前に、会ったことがあるような…。

マスター
 さて貴方は、小さな小さな、力を持たない魑魅魍魎共のざわつきを尻目に、「宝物」とやらを受け取りに向かう。 そして“闇の森”の入り口へとたどり着いた貴方の目前に、大きい籠がドスンッ…と不自然に置かれていた。

アラタヨ(擬似餌)
「?」

 こてんと首を傾げ、顎に手を添える。微かに昨日会った農夫の匂いがする。

「…かの者のいっていた『宝』か?人の身では此処まで運ぶのは、骨が折れたろうに…」

 伸び放題の前髪のせいで、視界は最悪だ。よくよく近づかなければものが見えません。

マスター
 貴方が欲している物は、大好物の稲荷ずしのてんこ盛り。しかしながら、貴方が求めるソレとは、不釣り合いな大きさだ。しかも、貴方の思考が奪われるほどの匂いがない。
 貴方は、一歩また一歩と近づき、蓋を結い留める紐を解く。

 その直後、蓋が勢いよく吹き飛んだ!

よね子
「ばぁあああああんッ!!」

 蓋がヒラリヒラリと宙を舞い、ファサッ…と地に落ちる。

「あなたさまがむこどのかッ!なにぃっ!? あんた木でねぇかッ!!あぁっ!なんてことーーっ!!」

 貴方に小さな後頭部を向けて、苦悩する村娘がいた。

アラタヨ(擬似餌)
「………!?」

 珍しく息を呑んで、目を見開く。蓋が弾け飛んだのにも、『婿』という奇天烈な単語にも、度肝を抜かれた。

「…………」じぃ…

 声を上げるのも忘れて、数秒固まります。見れば見るほどよく似ている。仕草も、表情も、声も…何もかも「あの方」とそっくりだ。

「……主人(あるじ)さま?」

 小さな声をあげ、慌てて首を振る。彼女が、農夫の『宝』ならば、辻褄が合わない。

「…おい。人の子や」

 目を白黒させながら、軽く肩を叩いた。

よね子
 まだ、彼女の目線は木に向いていた。

「ぬっ!? 木がァッ! ししょあべったああ?! ?! なにやつッ!?」

 少女はくるっと振り返り、ボサボサの人影をやっと見つける。

「おっ?!おおおぉお!!?お! ば! けぇ!!??」

 驚愕し、大袈裟に仰け反ったのは一瞬だった。ギュン!と上半身を貴方へと寄せ、肩をガシッと掴んで揺さぶった。これまでに見事な刷り込み効果は他にないだろう。

「っは!あんたむこどのをどこやったぁ!おばけぇ!!」

アラタヨ(擬似餌)
(お化け…?…はて…?)

 首を傾げる。元より身なりに無頓着なせいで…今の自分が、かなり怪しい…というか、みすぼらしい見目なのには気づかなかった。ゆらゆら揺さぶられつつ、マイペースに宣う。

「…どうどう。ひとまず落ち着け、人の子よ。俺は何処ぞに婿とやらを拐かしておらぬし、第一お化けではない。」

よね子
「……おばけはみんな、『おらおばけじゃねぇっ』って言うもんだっ!何かこれッ!という物がなければ信じれないぞ!」

 くるっと振り返って、木に言う。

「ほれ!木のむこどのは、おとうにあったんだろっ?おとうの特徴、3つか2ついうてみてつかーさいッ!」

ただの木
「…………」

 此処、闇の森では、木が生命を持ったように動き出す事もある。…が、この反応無さを見るに、ただの木のようだ。

アラタヨ(擬似餌)
「…むう」

 少し考えるように宙を見上げ、手を自身の肩の位置にかざします。

「背丈はこの位。日焼けた肌で引き締まった身体の割に、『誰か畑を耕してくれないか』と言っていたな。 大仰な身振りの激しい者だった、と記憶しているぞ。鍬は、右上に若干刃こぼれのあったような…」

 淀みなく並べ立て、口を閉じる。どうだ?と、声が聞こえてきそうな目線を向けた。

よね子
「…木のむこどのは黙して語らず……それもまたよし…ッ!」

 彼女はキュンッ!と振り返って、貴方が指し示した背丈を確認する。

「そうそうっ!そのぐらいだ、あたいより少しだけ大きいだけなんだっ!そっ!まさしく、働いている様に見せかけてるだけの健康的な肌、身体っ!そしてそのっ!だらしのないセリフっ!よく言う!」

 ウンウンと勢いよく頷く。

「…………。」

 そして訪れる静寂。冷や汗がタラリ…と滴り落ちる。

「…そ、そんなばかなぁ~……ハハ………。…もしかして……あたいのむこどのは………。……あなただったり……するのか?」

アラタヨ(擬似餌)
「……うーむ……。『婿』というのはさておき、昨日 農夫の畑を耕し、かの者の一番の『宝』を貰う約束を交わしたのは、俺だな。」

よね子
「…………」

 パチクリ。パチクリ。瞬きを2つ。

「くっ! 事ここに至ってはッ! 一子相伝っ!!」

 その大層な着物のどこに、そんな可動域があったのだろうか。彼女はバシュンッと後ろに飛躍し、グルグルと回転して、ひと捻りを加えて、そのままスチャッと着地した。

「す、すいませんでしたあああああッ!!!!」

 みつゆびを立てる余裕すらない少女は、掌をがっしり地に付け、頭を地にめり込ませた。

「は、はじめまして、け、ケダモノさまっ あたい、よね子って言います!おとうのやくそくのとおり、ケダモノさまのところへ、お嫁にきましたっ! おとうの宝物はあたいしかいませぬゆえっ」

 その様は、正に殿様を前にした悪代官だった。

「ふつつかなよめですが、どうか!よろす、しくおねがいししまます」

アラタヨ(擬似餌)
「…んな……!?」

 全くの想定外に、微かに目を見開き、目を泳がせる。『子は宝』という概念こそ知っていたけど…あの怠惰そうな男も、一人の親だったのか、と

「……………」

 『宝』とはなんであるのか、仔細に確認を取るべきだった…などと嘆いても後の祭り。

「…………」
(悪いが、この者には帰ってもらおう…)
「御手を上げい、人の子や。」

 心の中で一人頷き、声をかけました。

よね子
「は、はは、はい」

 噛みつつも、キリッとした表情は崩さず、手を前に伸ばしつつ上半身を上げる。まるで銃口を向けられたかのような、見事なハンズアップである。

アラタヨ(擬似餌)
「………」

 …ああ、やっぱり「彼の方」とよく似ている。愛らしい仕草に、罪悪感が湧いたが仕方ない。

「…遠路はるばる赴いた矢先に、すまないが……帰れ。」

 アラタヨは、にべもなく言い放つ。

「確かに、かの者の一番の宝は、其方なのだろう。……だが、此処は、そなたの様な童が、来て良い場所では無い。帰り道が分からぬなら、送り届けちゃろう。…俺が、近くまで案内してやろうぞ。」

よね子
 顔が引きつったのは一瞬。次の瞬間には、眉間にしわがピッと寄った。

「な、な、なんねーっ!おとうがっ!ケダモノさまとの約束はっ!大事なもんだっていっとったっ! あたいはだからかえれねっ!!」
 
「それにっ!」

 ハンズアップした手をそのまま、目の前の存在へビシっと向ける。俗にいう前ならえの状態だ。

「帰るにしてもっ『さとがえり』よりは後じゃねぇとっ!家にいれねぇって言われてるっ!
 それにそれにっ!!幼き女子を前にしてっ!喰わぬとは何事かっ!われ据え膳ぞっ!!
 それにそれにそれに!!!よわい九つにして、あんたはあたいにバツを一つつける気かぁっ!!!」

 ギャーギャーギャーギャー!!!

アラタヨ(擬似餌)
「……ぬう…」

 ほとほと困り果てたように、目を瞬かせました。

「…では、俺からも問おう。『嫁入り』が何を意味するのか、其方は承知した上で、此処に来た…というのだな?」

 伺うような目線を、よね子に注ぎました。人の成長は瞬くように早いので、確かな事はわかりませんでしたが…
 目の前の少女は、少なくとも成人していないはず……約束は絶対…とはいえ、幼い娘を寄越した農夫に対して、少し八つ当たりじみた気分が芽生えていたのです。

よね子
「しょうちもしょうち。しょうちすぎてしょうちだっ! ずばりっ! むこどのに、一生を捧げて、付き添うだっ!」ビシッ

 どや顔を決める。

「おとうは、あんなんだけど、ちゃんとしてるんだっ。おとうがいいっていうなら、いいにきまってるっ!」
 
アラタヨ(擬似餌)
「……………」

 だとしても、この宝は受け取れない。…そう斬り捨てるには、余りにも、他者との会話に飢えていました。

「…そうか。ならば、其方の気が済むまで、俺の元に居るといい。」

 人の生は短い。『主人さま』がお戻りになるまで、暇を潰すのも悪くないでしょう。そっけなく言うと、緩慢に踵を返し、住処の方へ歩き始めました。

よね子
「ふっふっふ!むこどのっ!よろしくなっ…あっ?!」

 彼女の脚は、ビリビリに痺れていた。ずっと正座していたのだから。

「ほあぁあああっ!!?」

 いきなり立とうとすれば、そりゃそうなる。

アラタヨ(擬似餌)
「…な、……!?」

 振り返ると、思わず駆け寄ってしまいました。よね子の身体を受け止めようと、サッと倒れる方に走りました。すると、よね子がスポっと腕に収まった。

「……っ!さすがっ!あたいのむこどのだーっ!!」キャイキャイ

 2人が闇の森で、やいのやいの話している間に、人間の魂の匂いに惹かれて集まり、遠巻きに見ていた他のケダモノたちが、じわじわと輪を縮めてきます。しかも、よね子の声は実によく通ります。

魑魅魍魎の類
「ギャッハッハッハ!こりゃぁ!傑作だァア!!」
「……あいつってそんな奴だったか?」
「……うるさい………」

 一部のケダモノは笑い転げ、一部のケダモノはドン引きしています。とりあえず、この珍妙な宝を持って、この場を離れた方がいいらしい。

アラタヨ(擬似餌)
「…………」 …不快だ。

 僅かに鼻に皺を寄せ、唇を噛みました。彼らが奇妙な服装だと蔑むキモノをはじめとして…。この森に住む者たちとは、元より『気が合わない』のです。

「…帰るぞ、人の子や。」

 先ほどのようにつまづかれては堪りません。よね子を颯爽と抱えて、声から逃げるように帰路を急ぎました。

よね子
「? ん!」

 一つ頷いて、身を任せるのであったーー


出会いの場所はこんな感じでした!


よね子さんの全身絵!

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