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【魔女と獣とふたり旅】くさび石となまけた龍と溶岩湖(9/10)【TRPG/リプレイ/完結済】
紅き龍は差し出された魔石をまじまじと見つめる。美しくもあり、禍々しくもある、この世ならざる魔石の芸術品がそこにあった。
紅き龍
「…………なんと緻密な作りか……」
「……スフィよ」
口にせぬままキミに語り掛ける。
スフィ
「はい?何ですか?」
紅き龍
「…手伝っておいてなんだが…これは…莫大な魔力を内包している。」
龍の口元からよだれが垂れる。
「…そんな簡単に渡しても良いのか? ばりぼりと…行くだけだぞ、我は」
スフィ
「いや~食べるために造ったものですから...正直、龍さんが食べないなら危険すぎるので廃棄す―」
紅き龍
「うぉっほん!!!!何を言い出すかと思えば…ッ!」
大切そうに手で包み、小脇に抱えた。同じタイミングで大粒のよだれが地に落ちた。瞬間で蒸発している。
「捨てるなどと…ッ!…その欲の無さ!!ますます気に入ったぞ、スフィ!!では!!頂くとするぞ!!」
魔石を天に掲げ上を向き…
スフィ
「欲がない訳じゃないんですが...まぁいいや。どうぞ召し上がって下さい!」
笑顔で手を前に差し出すようなポーズをとる。
紅き龍
龍は君の言葉を聞き届ける。そして今、魔石が紅き龍の顎に…入った!!
バリッ
「………!!!!!」
ボリッ!
「これは…ッ!!爆発的な辛さの中に!!!」
龍の口の中で、小規模な爆発が立て続けに起きる。人間にとっては、とんでもない兵器となろうそれは、龍にとっては口当たりに変化をもたらす調味料となるッ!例えるならばッ!ねるねるねる〇!!
ガリッ!
「確かな旨みッ! そして!?ガッ!! なんだ…!?何だこれは!!」
ガキッ!
「何だこの!! 順々に押し寄せてくる旨みは!甘味はッ!!」
天を向いて、バリボリと噛みながら叫んでいる。お行儀という言葉を圧倒的に置きざりにしていた。
スフィ
「へぇ~そんな感じなんですねぇ。魔女が食べられる...そうだなぁ、飴みたいな魔石とか造ってみようかなぁ。火の魔力が多分辛みなんでしょうね。」
紅き龍
「美味いッ!!」ガリッ!
スフィ
「そうですか~。」ニコニコ
「思い切って青の、水の魔力を混ぜてみようと思ってですね、龍さんに炎を当てて貰ってたんです。前もって水を温めて置いたら火と反発する力が弱くなるかなって思って。」
紅き龍
「なるほどなッ!!青か!!それでこのッ!清涼感ッ!!」ガキッ!
スフィ
「反発を完全に抑えきれては無いので派手に爆発してるみたいですけど。ふふっ。すぐに引く辛さ?みたいになってるんですかね~。」
紅き龍
「ガハハ!!」 バッコーン!ガギギ!!
「偶然の産物かァ!!」 ボゴボゴッ!!
スフィ
「ベースにした緑と紫、森と夜は基礎の旨味になってると思います。たぶん。夜の森に龍さんが火を噴きながら飛んでいるところを想像して造ってみたんですけど、どうですかね?火によって豊かな土地が出来てます?」
味って何なんだろう。
紅き龍
大爆発が立て続けに起き続ける。ボゴボゴン!ボッカアアン!!
「ガハハッハハッ!!なるほどッ!おぬしなりの情景描写ッ!!お主には! こんなにも!!ど派手に映っておったかァッ!!」
スフィ
スフィはにこにこしている。
紅き龍
「なんと大袈裟なッ!!」
ガーッハッハッハ!と大笑いしつつ、常に大爆炎が放出されている。
スフィ
「満足されたみたいで良かったです~。」
スフィのモノクルに炎の紅い光が反射する。
GM
龍の爆発的な感情の昂りと同調するように、活火山全体の活動が盛んになっていく。そこかしこで爆発的な噴火が起き、パラパラ…と2人の頭に、屑が落ちてくる。
紅き龍
「ガーッハッハッ!!ここまで我が心が動いたのは久しいのう!棲み処が台無しだ!ガハハ!」
バサリッ。
背中から大きな翼が生える。一度羽ばたくと、噴火の熱波が吹き飛び、程よい気温になる。
「スフィよ」
右手を差し出した。
「征こうか、世界へ」
スフィ
「...!」
心臓が高鳴る。
(行けるんだ...この山の向こうに...)
「...はい!よろしくお願いします!ネルさん!」
龍の手をガシッと掴んだ。
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