【魔女と獣とふたり旅】時つ風と悠久の宿り木5/5【リプレイ】【完結済】
樹精
「………?」
「…かわ………い……?」
家と言えば、ただの樹であった彼女からすれば想像も出来ない事だろう。
GM
箒で風を受けて山の斜面を駆けあがっていく。やがて見える森の切れ目……君の家に、到着したようだ。
ーーー
スポット 『森の魔女の家』 (グランマジック
ーーー
シルヴィ
「とうちゃーーく!」
ふんわりと石畳のところへ降り立つ。家の外観が目に入るようにやや距離をとって。
「ようこそ、私の家へ!」
促して箒から降り、手を広げて家を示す。
「どう…かしら?」
樹精を振り返り問う。ふと、そういえばこの子…家の概念あるんだろうかと思いつつ。@
樹精
ぽけーーっと、立ち尽くす。興味が無さそう……と思われたが、新芽は荒ぶっていた。
シルヴィ
「……」
あまり気に入らなかったかと思ったが、新芽の動きが目に入る。たぶん、何か、激しく感情は動いているんだろう。
樹精
新芽は楽しそうに観察していた。そして枝にやって来た小鳥と大立ち回りを演じ始めた。
シルヴィ
「…んふっ」
思わず吹き出してしまう。微笑ましいが、本人(本芽?)にとっては大変そうだ。
「気になるの?でも今は離れてあげてね」
手をすっと差しだし、促す。指先に一羽が止まり、少しだけ手に嘴を寄せる。
「いい子ね…、大丈夫?」
数羽が促しに従い周辺の木に降り立つ。離れたことを確認し、樹精へ視線を戻す。
樹精
「………。」
良く視ると、瞳は動いている。
「………いい…棲み処」
一歩踏み出して、すれ違いざまに呟く。
「……おいしそう………」
シルヴィ
「おいし…あー、まぁ、そうかも…?」
色合いだろうか、フォルムだろうか?なんにせよ悪い印象ではないんだろう。
「一応言っておくけど、家自体は食べられないからね?」
言わずとも、とも思ったが、言っておいた方がいい気がした。
樹精 新芽が少し凹んだ
シルヴィ
「(言っておいてよかった…)」
かじられるところだった。歯が欠けてはいけないし、家が欠けたらもっといけない。
「まぁ、いいわ…入って?」
お腹がすいているがゆえのことだろうと判断し、中へ入るように言う。腹ペコさんに早く料理を食べさせてあげなくては。@
樹精
「……ん」
カランコロンと心地よいベルの音が響く。樹精はまるでそこが自分の家であるかのような雰囲気をまといつつ…
「……ほ~………」
中に入った。
シルヴィ
緊張感的なものは無いんだな、と思い。そういえば最初から無かったな、と思い直す。
「とりあえず、椅子に座って。準備するわ。」
初めてのお客人なのだ。もてなさなくては。とりあえず立たせておくわけにもいかないだろう。椅子をすすめてから、キッチンに取ってきた肉や果実をどさりと置く。ついでにレシピを描いたノートを取り出し、テーブルに置く。だいたいは頭に入っているが、せっかくなので一緒に選ぶ方がいいかと考えたのだ。
樹精
勧められた椅子には座らずキミの隣にピトッ……と寄り添ってキッチンに立つ。食材を共にじぃ…っと眺めた。
「…………。」
シルヴィ
「んん……?」
促したのは聞こえていたはずだが…何か主張してるな、と思い、本人の視線を追う。
「もしかして……一緒に作りたいの?」
樹精
「…ん」
心なしか、比較的早い速度で頷く。新芽は体全体を使って肯定を表現した。
シルヴィ
「えと……いいの?あなたはお客様だけど…」
もはや新芽に問う。
樹精
「…おいしいものが」
「…今から…ここで出来る…」
「…なら…ここにいるのは…」
「…必然……それが…最善……」
新芽は腕を組んで頷いていた。
シルヴィ
「……」
要は、待ってられないのだな、と。
「うーん…」
とはいえせっかくのお客様にやらせるのも…と、少し悩む。
「いい…のかなぁ」
お客様が望んでいるなら、それもおもてなしになるだろうと大まかに考えることにした。
「手伝ってくれるならありがたいわ。まずは何を作るか決めましょう。」
ノートを一緒に見れるようにぱらぱらとめくる。レシピには絵を描いてあるからどんなものができるかわかりやすいはずだ。
「お肉が好きなら、ミートパイ、ハンバーグ、チキンソテーのトマト煮込みなんかもいいわね」
「デザートはクッキー、パウンドケーキ、タルト…」
言いながら、ノートを指し示してそれぞれがどれに該当するかを教えていく。今までカラスの丸焼きばかり食べていたなら、こういった料理は見たことが無いだろう。
「どれか、気になるものはある?」
視線を隣に向ける。@
樹精
「……………」
ページが捲られるたびになる腹の音
「……………」
その度に聞こえるつばを飲み込む音
「…全部」
端的に、そう言った @
シルヴィ
「ぜんっ……」
樹精
「…全部」 繰り返した @
シルヴィ
「…わかった」
お腹がすいてるのはもう、ほんとわかった。
「そしたら全部片っ端から作っちゃいましょうか!」
余ったらなんとか保存しよう。
「そしたらまず髪をまとめて、手を洗って!エプロンも貸してあげる」
やったことないかも?と思い見本を示しつつ指示する。@
樹精
彼女は、手際よく準備するキミの姿をよくよく見る。速度はゆったりとしているものの無駄のない動きを見せ、追従した。
「……こう?」
オペを始めます…と言わんばかりの姿がそこにあった @
シルヴィ
「えと、うん、そう」
行動は合ってた。きちんと指示通りにできているのをみて、これなら大丈夫かな?と考え、調理を開始することにした。@
ーー
グランマジック!
>>もてなせ!腹ペコ樹精!<<
ーー
シナリオ値は2 故にグランマジックの難易度は2 となります。
また、グランマジックに付けることが出来る有利の数は
シナリオ値が2なので、通常の行動判定と変わりません。
今までに入手したアイテム、術式、全てを投入して判定を行う事が可能です!
それでは、2つの有利と使用するアイテムを宣言してください @
シルヴィ
有利1:自分でまとめたレシピノートにある料理
有利2:使い慣れたキッチン
GM 受理ッ!!
シルヴィ あざす!
使用アイテム:赤い木の実、赤い果実、とり肉
GM 受理ッ!
全て価値1のアイテムとなりますので、3つダイス追加です!
3+3(有利分)+3(アイテム分)=9ダイス
覚悟が決まったら9b6をどうぞ!@
シルヴィ
9d6 (9D6) > 27[2,6,6,1,6,2,1,2,1] > 27
GM
成功3 災い3 差し引きゼロ! まずい! どうする!
シルヴィ
(1D6) > 5
(1D6) > 1
(1D6) > 6
GM
5 永続的変異
1 忘却
6 スティグマ
シルヴィ 3つとも通します!
GM 了解!!w
一つ間違いに気づいた!
グランマジックの基本のダイスの数は、
魔力ゲージと同値なので今回は2だった!
が!もう過ぎた事なので、次気を付けます。
シルヴィ 了解いたしました!
GM では次に、ボーナス効果を決めましょう!
難易度2で成功数が3なので 差し引き1コのボーナス効果を得られます
RPを鑑みて、後で決定することに決定。
それでは見せてもらおうか、料理の腕前を。
ーーー
シルヴィ
「さてと…」
ざっと下ごしらえをして。いよいよ、調理本番といったところだ。ゆっくり一つずつ手間をかけるのも好きだ。でも今回はちょっと急ぎたい。ならば、と、樹精に声をかける。
「少し離れてて」
一歩、キッチンから離れるように言う。
樹精
「……?」
髪の毛がふんわりと浮かび上がるのを見ると、何かを察したのか
「…ん。」
一歩、後ろに下がった @
シルヴィ
「ありがと」
下がってくれたのを見て、また材料に向き直る。一山の食材に手をそっと添えてイメージする。どうなってほしい?どうしたい?イメージが出来上がってくるにつれ、手元が淡く光る。光は流れるように食材へ移っていく。
樹精
「………ほー…………」
後ろから距離を開けて、観察する樹精 @
シルヴィ
食材に力がいきわたったのを見て、歌うように語り掛ける。
「自然に感謝を。」
「生命に尊重を。」
「私たちに力の源を。」
さぁ、美味しくなりましょう、素敵になりましょう。シルヴィの口から文言が出るたびに、ふわりと食材が浮き、組み合わさり、火が通り。レシピノートに描かれた通りの料理が出来上がっていく。
「ありがとう、ありがとう。」
「素敵なあなた達よ、ありがとうーーー」
そう言って、シルヴィが一息つくと食材に流れていた光が、また戻っていく。ふわふわするりと、空を流れる風のように。
「―――こんなところかしら」
光がもどりきり、髪も落ち着いたとき、樹精を振り返る。@
樹精
振り返るその途中で、ピトッ…と樹精が君の背中に張り付く。
シルヴィ
「んえっ?」@
樹精
「………ついてきて……」
「…正解……」
「……シル…ヴィ…食べなくて良かった………」
さらっと怖い事言う @
シルヴィ
「……」
本当にそう。呆れたようにため息を一つ。
「そうでしょ?」
気を取り直して、少し誇らしげに答える。
「あとは、彩りとか仕上げにちょっとスパイスがあってもいいわね…」
調理台から離れ、スパイスの棚を開ける。どれがいいだろうか。@
樹精
棚を物色するキミの肩を叩く
シルヴィ
「…ん?どうしたの?」@
樹精
「……彩り……って……色が必要……?」
首を傾げ
シルヴィ
「あ、そうそう。使った実が赤いから…例えば、緑とかね?お肉にはペッパーみたいなものでもいいけど」
知らないから気になったのかな?と思い答える。@
樹精
「……緑……ペッパー……」
呟きながら、棚の匂いを嗅ぐ
「……そう……なら……」
「…任せて……」
スタスタ…と机に向けて歩き出した。
シルヴィ
「えっ?えっ?」
任せる?何を?
樹精
ダイニングテーブルまで来たかと思うと、徐に上体を曲げ、スンスン…と木材の香を嗅ぐ。
「………んー……」
首を傾げ、視線は食器棚の木材へ。スタスタスタ…と歩き、またもや匂いを嗅ぐ。
シルヴィ
「……?」
なにをしているんだろう?
樹精
「………ん。」
ガバーっと食器棚を開き、取り出したのは、耐熱処理が施された木製のティーポット。それを、スト…っと机の上に置いた。
シルヴィ
「えっと…?」@
樹精
「……いい香りがする。」
「……この木……良い実を付ける…」
シルヴィ
「そうなんだ…?」@
樹精
ティーポットに手を乗せる。
「……んん……ん~…………」
少し力んだ。キミには見えなくとも感じることが出来る。
魔力を流しているのだろう、と。
シルヴィ
「……」
何をしようとしているのかはわからない。が、確実に意図があっての行動だろう。料理にどう結びつくんだろうか…。
「ねぇ、まさか…」
そういえばさっき、実、と言っていたか。@
樹精
君が若干の不安を覚えた頃、変化は訪れた。
「…………んんん~~~…………」
ティーポットの持ち手の外縁。緩やかなカーブを描いていた場所から
ピョコッ…と ”新芽”が生える。
「……んん………」
更に魔力を送り続ると、新芽の先につぼみが出来、花が咲き、枯れ、そして実が出来ていた。
シルヴィ
「わぁ」
木製とはいえ、ティーポットから…。
樹精
「………ん。」
シルヴィ
「……ん?」
樹精
ふう、と一息ついて、ティーポットから手を離す。ぶら下がる緑色の木の実をプチっともぎ取り
「………ん。」
差し出した。
シルヴィ
「…え?」
樹精と、その手にある緑の実を交互に見る。
「え……っと…」
彩り。緑。ペッパー。たぶん、話の流れもあるし、考えなくてもわかる。
樹精
「……おいしいもの……それを前にして……」
「……手は抜かない……」
シルヴィ
「なるほどね……」
美味しいものに対する意欲がすごい。木の実を受けとり、日にかざしてみてみる。綺麗な緑色だ。樹精の魔力の影響もあるのか、つやつやキラキラしている。
「(うーん……)」
得体のしれないものではある。でも、樹精の木に対しての力のすごさは身をもって知っている。
「(手伝ってくれるって言ってたのにほとんど私がやっちゃったしな…)」
最後の仕上げくらい、参加してもらったほうがいいだろうか。これだけこだわっているのだ、料理を台無しにするようなことにはならないだろう。
「そしたら、これを使いましょうか。」
「せっかくだから、あなたがやってくれる?」
小さめのペッパーミルを取り出して渡す。中に実を入れてひねればいいだけの簡単なものだ。
樹精
「…………?」
新たな器具に興味を示し、角度を付けて観察する
「………わかった……」
「……食人の…樹と…似てる……」
挽く歯車を見て、そう呟く。使い方は何となく理解しているようだ。
シルヴィ
「そっ…う、なの…」 例え方よ@
樹精
「……ん。」
コクリと一つ頷くと実をひょいっと中に入れ蓋をし、キッチンに向かう。料理の上に手を伸ばし、手を添えて息を呑んだ。
「……いく」
許可をくれ、と言わんばかりに顔だけを君に向けた。
シルヴィ
「ふふ、うん、お願い」
小さい子を見ているような心持ちになり、微笑んで頷く。
樹精
「……。」
頷いて、顔を正面に戻した。
「……………」
黙りこくって
カリガリカリ… カリカリ… 数度捻った。
「……でき……た………。」
また振り返った。
シルヴィ
「彩りが良くなって、美味しそうね!」
にこにこと答える。
樹精
新芽が大きく頷いた。
シルヴィ
「んふふ、さぁ、食べましょうか!」
新芽も立派なこの子の一部なんだなぁ。そんなことを考えながら、料理を運び、ナイフやフォーク、取り皿を用意する。
「座って座って!挨拶をしてから食べるのよ?」
礼儀としては逆だろうが、わかりやすくするためにまず自分が座り、向かいの椅子をすすめる。@
樹精
「………挨拶…?」
キョトンとハテナマークを浮かべつつ 手は付けずに、席に座った @
シルヴィ
「そう、挨拶。こうやってね…」
軽く胸の前あたりで手を組む。
樹精
「……。」
見様見真似で手を組んだ @
シルヴィ
「食材そのものとか、作ってくれた人に感謝の気持ちを祈るの。」
「遠い国の礼儀らしいんだけどね、私は好きよ。」
「それじゃぁ、―――いただきます。」@
樹精
「……いただきます…」
首を傾げつつ、呟いた
「…あってる…?」
シルヴィ
「大丈夫、合ってる。じゃぁ、食べて食べて!暖かいうちが一番美味しいんだから!」
頷き、促す。せっかくだから出来立てを熱いうちに食べてほしい。自分を食事に手を付ける。@
樹精
「…ん」
これまでで一番速い返答を繰り出し、慣れない手つきで、器具を使う。
「……」
「……! ………? ………!!」
表情は変わらない。だがしかし、食べるスピードが少しずつ上がっていく。
シルヴィ
食べ進めながら、ちらりと様子を伺い、肩の力を抜く。自信が無かったわけではないが、何せ人にふるまうなんて滅多にないことだ。『美味しいものを食べさせてあげる』なんて言ってしまったのだし、実は少し緊張していた。
樹精
しまいにはツタを操り、間を開けずに、口の中に次々と料理を入れていく。口は小さく開けているため、ガツガツと食べている風には見えないが、爆速だ。
シルヴィ
「(良かった…)」
この分なら大丈夫だったようだ。目は口ほどにというが、この場合は芽は口ほどにか。
樹精
新芽はもうぐるんぐるんに回っていた。風車の様に。
シルヴィ
「…そんなに?」
食べるスピードと新芽の動きにに気圧されつつも、こんなにわかりやすく喜んでくれると口元が緩んでしまう。この後はデザートもある。たくさん食べるのだし、食後のお茶はさわやかなものがいいだろう。あれこれと候補を浮かべながら、自分の料理を力いっぱい食べる姿を堪能した。
樹精
見守られている事などつゆ知らず、最速で食べまくっていく。そしてやがて…机に並べられた料理の全てが消えた。そして今、樹精は
「……ん………んん………」
ぽっこりと張り出した胃を擦っていた。
シルヴィ
「んふっ…ふふ、ふっ…」
こんなにもわかりやすく『食べました!』という姿なんて初めて見る。笑っては失礼かなと思いつつもこらえきれない。
「もう…あんなに勢いよく食べるから…」
「お茶でもどう?口の中も濃くなってしまったでしょうし、少しはお腹が落ち着くかも」@
樹精
「…? …いつも……オオガラスだから……早く食べきらないと……臭い……」
「……身に着けた…一番いい方法……」
「……お茶……? ……シルヴィが出すもの……おいしい……」
「…もらう……」
シルヴィ
「あのね、そんなことしなくても、保存が…」
直球で褒められると照れてしまう。照れ隠しのように料理が保存できることを説明しようとするが。今この状況でそれも野暮な話だな、と思い直す。
おいおい説明していこう。次の食事のときにでも。
「そしたら用意するわね。どれにしようかしら…」
出すものは美味しいと言われては、お茶もきちんとしたものを出したい。コーヒー、紅茶、ハーブティー…シナモンや蜂蜜で香り付けをしてもいい。もともとお茶は好きで種類もあるから迷ってしまう。悩みながら、提供先である樹精をちら、とみる。
「(…そうだ、あれがいいかも)」
樹精の長い髪を見ながら思う。爽やかで食べ過ぎた後にはちょうどいい。丁寧にお茶を淹れる。香りが飛びすぎないように、苦みが出ないように。
「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」
お気に入りのカップに注いで目の前に置く。自分の分も置いて、席についた。@
樹精
「……。」
コト…と置かれるカップを眺め、鼻をピクピクとひくつかせた
「……これは……何の匂い…?」
新芽は身を乗り出している @
シルヴィ
「ハーブよ。ミントってわかる?…この匂い、苦手だった?」@
樹精
ふるふると首を横に振る
「……良い匂い。 ……ぴったりの匂い……。」 @
ミントグリーンの髪が揺れた @
シルヴィ
「良かった。良い香りでしょ?」
気に入ってもらえたことに安堵しながら、揺れる髪を見る。陽の光が差して、揺れるたびにきらめく。眩しすぎず目に優しいのは、色味のせいだろうか。ミントは小さく可愛らしい葉だが、香りはさわやかで鮮烈だ。植えると爆発的に増えるという強さももつ。扱いやすいような、そうでないような。色だけじゃなくて、誰かさんみたいね、なんて思う。
「……そういえば」
「これから先、あなたと旅をするって言ったじゃない?」
家での食事はとりあえずの目的で、真の目的は終の棲家を一緒に見つけることだ。ふと、それを投げかける。
樹精
「……言った。」
「……終の棲家を探しに………。」
「…それが……?」
どうした?と首を傾げた。
シルヴィ
「そうよね、それで、きっと長い旅になると思うの」
カップに目を落とす。
「だからね、その…」
今更なんだと思われるかも、ともじもじしてしまう。
「私、あなたのこと、なんて呼べばいいのかしら…?」
あなた、なんて他人行儀のままはなんだか嫌だ。自分は名前を知ってもらったのに。名前、もしくは呼び名があるなら知りたかった。
樹精
「……名…ということ?」
シルヴィ
「うん、そう、名前。あなたの…」
少し、どきどきする。@
樹精
「…ない」
シルヴィ
「えっ…?」@
樹精
「…私達は…名を持たない存在」
「…全て同じ存在。 …識別する必要はない。」 @
シルヴィ
「あ…そ、そうなの…」
知らなかった。そういった存在…それは、理解できる。でも、それは。
「でも、じゃぁ、あなたは違うわ」
カップを置き、でも手は添えたまま。顔を上げて、樹精をしっかりと見つめる。
樹精
「……?」 @
シルヴィ
「空から落ちた私を受け止めたのはあなたで、添え木で足を支えてくれたのも、箒を一緒に作ったのも、あなたで。」
「料理を手伝ってくれて、仕上げをしてくれて、一緒に食べて。…たくさん、食べてくれて。」
「こうしてお茶も一緒に飲んでくれて」
「あと…そうよ、一緒に旅に出るのも」
「全部、あなただわ」
「他の、『そういう存在』じゃない。」
「あなただけだもの。」
カップに添えた手に力がこもる。
「識別する必要、あるわ。」
眼をそらさず、言い切る。樹精が悪いのではないが、どうにも納得がいかなかった。
樹精
「……………。」
眠たげな瞳は、相変わらずそのままで。キミの眼差しを一身に受ける。
「………名付け…は」
ポツリと口を開いた。
「…個を識別する行為。…全から引き抜く…という事」
「……つまり…」
「……私はシルヴィの物になるという事」
眠たげな瞳でキミを見つめた。
「……シルヴィは私の物になるという事……」
「……それでも…いいなら」
手を差し出す。目が魔力で煌めく。
シルヴィ
「……」
自分は魔女で、樹精は魔獣と呼ばれる存在に近いのだろう。だからこれは、軽い気持ちで取ってはいけない手だ。
「私が…あなたに、名前をつける…ってこと、よね…」
わかってはいるが、一応確認のため問う。
樹精
「……。」
コクリ、と頷く。
「……私とシルヴィは…繋がる……縛られる……?」
適切な言葉を探すもわからないらしい。
シルヴィ
「そうね…繋がる、が近いかしらね?結びつきができるというか…」
樹精を縛り付けたくはないなぁと考える。ただ、感情はどうあれ、それがそれ相応に強い契約であることは理解している。この目の前の、手を差し出す魔獣は、そのあたりはわかっているんだろうか?
「わかってると思うけど…名前をつけたら…それは契約よ。存在を強め、個を確実にする。」
「それでも…」
「それでも、本当に…私が名前を付けて、いいの…?」
つい、伺うように見てしまう。つけたくないわけない。が、早計ではとも思ってしまう。
樹精
手を浮かせたまま、瞬きを一つ。
「…問題ない。 ……それに…」
「…唯々…永い生に」
「…新たな意味が加わるのも……悪くない。」
「……私に触れて…シルヴィの魔力を通して…」
「……名を”世界”に宣言すれば…それで終わり」
シルヴィ
「……」
ぽか、と呆気にとられてしまう。
「もう、そんな、あっさり…」
「ふふ、でもそうよね、それだけでいいのよね」
そうだ、それだけで終わる。相手はとっくに私を個として識別しているんだ。何をいまさら。
そっと、樹精の手をとる。思ったより暖かい。ゆっくりと魔力を流す。柔らかく。するすると。樹精に自分の魔力が流れていくのがわかる。
名前は、もう決めてある。樹勢をしっかりと見つめ。ちら、とお互いの間で水面を揺らすカップを見て。そしてまた、樹精をみつめる。
シルヴィは”世界”に宣言する。
「『ミント』…あなたの名前は、ミントよ」
”世界”がその名を受け取るまで、しっかりと魔力を流す。これから共にあることを誓って。@
ーーー「………」
ミント
「…………………。」
「……ミント。 ……それが…私の名」
彼女も宣言する。 瞳の煌めきが一瞬強くなったかと思うと、普段の眠たげな昏い色へ戻る。
「……ん。」
手を握り返し
「……良い名。」
「……これから……も……」
「…おいしいごはんを……」
「…期待している……」
「……よろしく」
「……シルヴィ」
シルヴィ
「ごはん…」
ぱち、と目を大きく開いて瞬きして。
「ふふっ…」
「あなたらしいわね」
「もちろん、期待してて」
「あなたのために、たくさん作るわ!」
「こちらこそ、これからよろしくね!」
「…ミント!」
GM
ーーこうして2人は出会い
樹精は、ミントという名を授かり
約束の名を冠する箒に跨る
2人の物語が始まるのであったーー
ーー~~~~~~ Fin.
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