【ケダモノオペラ】『小さな花嫁が来た話』【小説風TRPGリプレイ】【完結済】5/9
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場面4 賢者の警告
・概要:知り合いのフギンムニンから警告を受ける
・舞台:闇の森の中、棲み処の付近
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結婚式を終えた夜、丑三つ時を少し過ぎた頃。
モルグ
「………。」
マスター
近くの木の枝に、大きなカラスが一羽、舞い降りました。よく見ると、古い知り合いのモルグであるようです。
彼はむっと黙り込んだまま、物言いたげに黒い翼であなたを手招きをする。よね子は、すうすうと眠っていて、簡単には目を覚ましそうにありません。
アラタヨ(擬似餌)
草木もも眠る丑三つ時。嫁の傍らで。愛しむようによね子の髪を撫で、その寝顔を眺めていました。
「来客か。」
独りごちて、緩慢に羽音のした方を見、手招きされた元に向かいました。
よね子
「……ニャ…。……あまぁ酒ぇ~………」 ムニャムニャ
モルグ
止まり木の麓。気配もなく現れる疑似餌が一人。
モノクルを掛け、体には大きな布を、適当に巻いだだけの恰好だ。夜にしては薄着だが、ニンゲンとしての感覚など意味をなさないのだろう。
「…貴様、一体、何のつもりだ。くだらん真似を始めたと思えば………。…いつ喰らうつもりだ、アラタヨ?」
アラタヨ(擬似餌)
「久方ぶりに会い見えたというのに、相も変わらず性急だなぁ、モルグや。」
表情の読めない微笑みを浮かべて、のほほんと宣ってみせました。言葉たらずには言葉濁しで。有耶無耶に【煙に巻きました】。
★〈特技予言: 煙に撒きました〉を「実現」します。
マスター 受理します!
モルグ
「……柄にもなく、私が待ってやっているというのに。」
可愛らしい寝息を立てるよね子を指さして言う。
「そこな人間。 肉は小さいが、随分と味のある魂を持っている。貴様の匂いが付いている故、馬鹿共も今は手を出していないが。……ここ数日、落ち着きがない。静かだった森も、一転して…………とにかく、五月蠅い」
アラタヨ(擬似餌)
「あゝ…」
ややあって小さく肩をすくめました。そういえば、この知り合いは、騒がしい雑音を嫌うケダモノであったと。
「…困ったものだなあ。主人(あるじ)さまをお待ちしている以上、俺はこの地から動く訳にもいかぬし…。…よね子を喰わせる気も毛頭ないなぁ」
人ごとのように、間延びした声を上げます。
モルグ
「……そうか」
のらりくらりとする貴方にモルグは痺れを切らし、毛を逆立てる。鈍く光るモノクルを掛け直すと
「…ここ一帯。無に帰すことも、私には容易だという事、忘れたか?」
かのケダモノは、知識、知恵の亡者。寝食を忘れて尚、数多を知り続けるこのケダモノには、天変地異を起こすなど、片手間に過ぎないのだろう。
アラタヨ(擬似餌)
「ほ〜う…穏健を好む其方にしては、穏やかな話ではないなぁ、知恵烏よ。」
たおやかに目を細めました。口調こそ変わっていませんが、眼光が僅かに鋭く光ります。
「知り合いのよしみで一つ…。 土地神の眷属の前で、余りそう言った発言はしない方が身のためだぞ」
チリッ! 刹那、アラタヨの指先から火花が散りました。
モルグ
「……………」
殺気をぶつけ合う事、しばらくの後、呼吸のリズムの外で、逆立った毛が、元に戻っていく。
「…誰が、”穏やかにしてやっている”と思って……。…貴様は、アレをどうするつもりだ?…まさか、アレが死に絶えるその時まで、共に暮らすなどとは、いうまいな?」
アラタヨ(擬似餌)
薄く、微笑む。
「さぁて、な? ………。」
よね子をチラリと見てから、遠くを見るような目をして、モルグの背後に昇る月を瞳に映しました。
「……いな…り…ぃ…たべすぎぃ………」ムニャムニャ
アラタヨ(擬似餌)
「…ふ、」
いじらしい寝言に、無意識に小さく笑い声を溢し
「ただ…そうだな……。…今は、誰かの名を、傍らで沢山呼びたい気分なのだ。…其れを邪魔立てする者には容赦はせぬ。何者にも奪わせぬよ。彼女は俺の嫁だからな」
淡々と言ってのけました。至極当然、といった声音で。
モルグ
「………。…そうか。暇潰しを、他者と共に行うなど、到底理解できんな。」
「…?……あぁ…あぁ。そうだな…だからこそ……」
数瞬考えたのちに、自身の言葉を撤回する。
「…興味が湧く。全く…思議出来ないというのは、一周回って愉快だ。…暫くの間であれば、魑魅魍魎の輩を黙らせてやる。貴様の為ではない、私の興味の的になった故にな」
アラタヨ(擬似餌)
ゆったりと首を上下させ、同じく口元を綻ばせました。
「そうか、そうか。其方の期待する興味深いモノ…が、見物できれば良いな。」
変わらず何処か他人事に宣い
「……礼を言う。モルグや」
動機はどうであれ、安穏を齎してくれるであろう「功労者」に労いの言葉をかけました。
モルグ
「………。」
くるりと振り返ると、夜の森へ足を進める。
「礼? それは、貴様らが滑稽に踊ってくれた時、受け取るとしよう」
疑似餌は、オオガラスの足に、手を掛ける。
「ヒトとケダモノが出会った先が、めでたしめでたし、で終わる道理など無い。」
バサリと、オオガラスが羽ばたく。
「では、良い ”暇潰し” を」
疑似餌もまた、フワリと浮かんだ。
アラタヨ(擬似餌)
「…賢鳥直々の『忠告』とな。」
遠ざかる背に挨拶を返します。
「痛み入る…だが、大団円で終わってはいけない、という道理も、また無い。其方の観測外の結末を紡いでやろうぞ。」
よね子
「…おとぅ…さぼったらだんめ……むこどのにぃ……わるい………なぁ…っ…むこ…どのぉ……」
アラタヨ(擬似餌)
フワリと音もなく跳躍し、よね子の傍らへ。くすくすと笑い声をあげると『来客』がやってくる前と同じように、愛おしさいっぱいの目で、ソッと髪を撫でるのでした。
『このまま時間が止まってしまえばいいのに!』
…遠い昔、顔も名も忘れた人の子が言っていた言葉。今なら、少しだけ…その意味がわかったような気がしました。
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ケダモノの貴方には、この予言を進呈致します。
〈予言:あなたとよね子のお話は、めでたし、めでたしでは終わりませんでした〉
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