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【最新】2024年度版ディスプレイ業界 上場企業の業績まとめPart2

本記事はディスプレイ業界に携わる方、及び周辺領域に関わるステークホルダー、また業界に就転職を目指す方に向けて、業界を代表する上場企業3社の経営指標の目安を提供するべく、各社が公開するIR資料の業績をまとめた記事の第2弾となっています。


第1弾の記事は↓のリンクよりご参照ください。



今回の記事の内容の説明

本記事の目的や概要は第1弾同様となるため省かせていただきます。
本記事では、第1弾ではご紹介出来なかったディスプレイ業界の上場企業の残り3社(ラックランド、TOW、セレスポ)各企業の売上高、営業利益、当期純利益の数字をベースに、グラフで分かりやすく可視化しました。また、各企業がIR資料内で区分けする商業領域ごとでもグラフ化をし、比較をしています。
現在業界にいる方であれば、どの会社がなににチカラを入れているのか、そしてこれからどの会社が伸びていくのか参考にいただき、ご自身の業務に活かしていただく資料に成れば幸いです。

各企業の業績の紹介


各社の5年ごとの売上高を比較したグラフがこちらになります。
(決算月は各社バラバラのため、おおよその年度でまとめています。)


ラックランド、TOW共にコロナ禍の影響を受けながらも徐々に回復しつつあるように見受けられます。第1弾で紹介した企業と同じ傾向です。
一方でセレスポに関しては他社とは違うグラフの動き方に見えます。
このあたりの分析も踏まえて下記より各社ごとの紹介・分析をしていきます。


TOW


会社紹介


株式会社TOWは、創業以来イベントに関する企画・制作・運営・演出・管理を手掛けてきました。過去にはウォークマンの発売キャンペーンや東京湾横断道路開通記念式典、FIFA 2002ワールドカップ抽選会など、話題性に富んだイベントを多数手がけ、多くの人々の記憶に残る実績を残しています。
近年ではこれまで培った体験デザイン力や企画提案力、実現力、チーム力を多様なフィールドに展開し、デジタルプラットフォーム時代においても「体験価値」をコアに成果を生み出すプロダクションへと進化しています。



売上の主な構成は4つを「リアルイベント」「オンラインイ ベント」「オンラインプロモーション」「その他」となっています。「その他」は官公庁・団体からの事務局業務の受注がメインとなっています。
リアルイベント事業を事業のコアとし、他社と比べても大手広告代理店の受注が6割を超える数字で案件を獲得しています。
博報堂などの大手広告代理店の案件を数多く手がけ、大規模で話題性の高いプロジェクトに携わっており、オンラインイベントやSNSプロモーション、デジタル制作、映像制作、PRなど、時代に即した多様な手法を組み合わせ、ただのイベント施工会社ではない強みが突出しています。
なにより注目するべき点は営業利益率が乃村工藝社や丹青社よりも高い点です。
リアルイベントを軸として、他事業でシナジーのあるビジネスモデルが、高い営業利益率を実現しているのでしょう。


ラックランド


会社紹介



1970年に業務用冷凍・冷蔵庫、ショーケースの販売、設備工事及びメンテナンス業務を主軸として創業され、設備・内装・建築・厨房・冷凍冷蔵設備といった幅広い分野で施工を手掛けるディスプレイ企業です。
創業当初から飲食店の空間づくりに強みがあり、クライアントにも(株)大戸屋や(株)すかいらーくなどのだれもが一度は訪れたことのある飲食店の多くを手掛けています。
近年では飲食店舗の空間づくりのノウハウを活かして、温泉施設、アミューズメント施設、ホテル・ブライダルなどの空間領域に展開を進めています。
グループ会社の体制も強く、事業領域を日本から海外に広げ、アジア圏を中心に、シンガポール、台湾、マレーシア、ベトナムなど海外グループを8社保有しており、他ディスプレイ企業とは違ったユニークなスタイルで幅広いマーケットに対応できる体制を組んでいます。




店舗施設の制作事業が5割を占める割合で、事業の中心となっていますが、近年では他事業の割合を増加させることに注力しているのがわかります。
これは2008年のリーマンショック時には8割を占めていいた飲食店舗の改装が減少したことによる経験から、1つの事業に頼らない経営戦略を打ち立てたことによる効果といえるでしょう。
また、飲食業界もウィズコロナ・アフターコロナを経験し時代が変わりつつある状況をいち早く察知し、社会の変化に対応できる体制を整えています。
しかしながら、昨年一部の社員の見積書変造疑義から始まった一連の不正及び不適切な行為、並びに社長の不正が発覚したことにより経営状況が悪化しています。
詳しい調査報告内容は以下のURLを参照ください。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第156回】株式会社ラックランド「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年4月12日付)」 米澤 勝 – 税務・会計のWeb情報誌『プロフェッションジャーナル(Profession Journal)』|[PROnet|プロネット] (profession-net.com)
この記事ではあまり本件について詳しく触れるつもりはありませんが、上場企業の元請会社の経営が悪化することで社員含め協力会社への影響も想像を絶するほどのことだったのではないかと予想します。
当事者ではないのでこれ以上のことは何も語れませんが、業界内では衝撃が走ったことは紛れもない事実です。
ディスプレイ業界でも影響力の強い企業ですので、信用を取り戻し、業界の発展にこれまで以上に関わっていただきたいと強く願います。


セレスポ


会社紹介


セレスポは、全国規模の大型イベントからスポーツイベント、地域密着イベントまで多種多様なイベントを手掛けるイベント制作会社です。
社名にスポーツと入っているほど、スポーツイベントといえばセレスポと云っても過言ではありません。
1977年に地鎮祭などの建設式典と運動会などのスポーツイベントの企画、制作を行う企業として設立され、現在では全国26拠点を持ち、東京オリンピックをきっかけに、地方創生などのイベント企画企業としても注目を集めています。
しかし、2022年11月、東京地検特捜部と公正取引委員会から、東京2020五輪組織委員会が発注したテスト大会業務において入札談合した疑いがあるとして、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)違反の疑いで電通などと共に家宅捜索を受けたことでも有名です。
この影響は経営状況にも表れており、東京オリンピック以降売上は右肩下がりの状況が続いています。



事業の軸は3つで、基本事業(各営業拠点が担当する、
様々なイベント領域)、スポーツ事業(中央競技団体等が開催するスポーツ・競技に関するイベント領域)、競争事業(皇室ご臨席行事を中心とした全国持ち回りで開催されるイベント領域)となっています。
主要領域におけるイベント領域は、回復基調にありますが、売上高については、新型コロナウイルス感染症の対応案件の減少と、東京オリンピック・パラリンピックに関する独禁法違反容疑において、官公庁からの指名停止措置等の影響により、案件数及び単価が減少しています。
東京オリンピック・パラリンピックに関する独禁法違反容疑に関してセレスポ側は無罪を主張しています。詳しくは以下の記事を参照ください。
https://www.asahi.com/articles/ASRBK5V04RBHUTIL019.html
役員の生の声がYouTubeでも聴けるのでご興味のある方はご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=iRISKI9FZE0
スポーツイベント及びスポーツビジネスにおいてセレスポは大きな勢力であり、この先もスポーツ業界の空間作りを牽引していく存在であることは間違いないでしょう。
スポーツイベントは運営側も少数精鋭のチームで動いており、毎年開催されるような大会ではこれまでの経験も持つ人材・企業の方が現場が円滑に進むのは間違いありません。
スポーツイベント会場作りに長けたセレスポがいるからこそ、楽しいスポーツ観戦が出来、選手が自分の実力を出し切れる大会になっているのだと思います。

まとめ/総括

今回もディスプレイ業界を代表する企業の業績について分析してきました。今回取り上げた3社それぞれ強みと特徴を活かした事業展開をされており、イベントや店舗内装を生業とするディスプレイ業界には欠かせない企業です。その他未上場ではありますがもっと面白い企業がたくさんいます。
また別の機会に紹介させていただきたいと思います。
なお、今回の記事で作成した資料のパワポ版と元データExcelを500円で提供いたします。時間をかければ誰でも作成できるかと思いますが、皆さまの時間節約のためにご活用いただけましたらと存じます。


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