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ただ好きなだけでいいじゃない

 雑誌「ブルータス」でコーヒー特集をやっていた。


 私自身、コーヒーは365日毎日飲んでいるくらい好きので、見ていて非常に楽しかった。でも、そういえば自分はコーヒーについて何も知らない。

 焙煎もできない、利きコーヒーもできないし、オシャレなカフェも知らない、コーヒーの歴史すらよく知らない。毎日飲んでるのに。

 ネット用語で「エアプ」という言葉があって、「知ったかぶり」「経験者のふりをする未経験者」といった意味である。
 さすがに「コーヒーエアプ」とまで言われる筋合いはないが、毎日飲んでる割には「エアプ」以下の知識量である。

 世の中には自分の上位互換というか、自分より知識がある人・詳しい人というのがたくさんいる。
 インターネットで情報を得るのは簡単になったし、発信するのも簡単になった。もはや情報通であることには価値はないのは言うまでもない。

 「あいつらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食っているんだ」というグルメ漫画の名言がある。
 むかしは「情報を食える」ようになるまでも経験と修行が必要だったろうが、いまや、情報を食えるようになる程度なら簡単だ。ネットの情報を漁ればいい。

 でもそれって必要なんだろうか?

 私はコーヒーのことは全然知らない、でも毎日飲む。それでいいんじゃないかなと思う。

 孤独のグルメの主人公・井之頭五郎さんの名言で「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」というくだりがある。

 これからは自分にとって、自分なりに、自分だけの世界というものを構築することが大事になってくると思うし、そういったものに静かに閉じこもる時間も重要じゃないかなと思う。

 何かが好きと言うとそれに詳しくないといけないみたいな風潮がある。もちろん、好きなことには詳しい方がいいに決まっている。でも、そうじゃなくてもいい。

 知識はないけどずっと好きで触れ続けているものがある生活も豊かさのひとつだろう。

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