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アイラ島 Islay island - 蒸留所を巡る旅(1)

ロンドンからバスとフェリーを乗り継いで20時間弱、ウイスキーの聖地と呼ばれるアイラ島に着いた。淡路島ほどの面積に約3500人が住み、8つの蒸溜所を持つ。アイラモルトは原料の麦芽を乾燥させる際にピートと呼ばれる泥炭を燻すため、他のウイスキーと比べ煙の香りが強く、味わい深い。

まずはフェリー乗り場から徒歩20分程のカリラ蒸溜所を訪れる。島内でしか流通していないexclusive editionを試飲する。非常にsmokyで味も強く、またカリフォルニアワインの樽を使用するため同時に甘みも広がる。個性の強い一杯で幸先の良いスタートとなった。

バスに乗り、島で一番大きい町のボウモアに向かう。深い入江を臨む牧草地の丘に、羊の群れと人里がまだらに広がる。

蒸溜所に行く前に、旅の1つの目的である牡蠣を嗜む。アイラ島では、人々は牡蠣にウイスキーをかけ、その調和を愉しむ。

クリーミーで潮の香りが強い濃厚な牡蠣と、ボウモア12年のピートの風味が絶妙に互いを引き立てあう。牡蠣の殻に残ったウイスキーをすすり、静かな海を眺める。

人生は何とも素晴らしいと思う。

「レストランで生牡蠣の皿といっしょにダブルのシングル・モルトを注文し、殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。うーん。いや、これがたまらなくうまい。牡蠣の潮くささと、アイラ・ウィスキーのあの個性的な、海霧のような煙っぽさが、口の中でとろりと和合するのだ。どちらが寄るのでもなく、そう、まるで伝説のトリスタンとイゾルデのように。それから僕は、殻の中に残った汁とウィスキーの混じったものを、ぐいと飲む。それを儀式のように、六回繰り返す。至福である。」                                   
村上春樹「もしも僕らの言葉がウイスキーであったなら」
      
「ここでとにかく一番に食べるべきは牡蠣である。アイラ島産の生牡蠣にシングルモルトを垂らして食べるのだ。本日は当然ボウモアをたらりたらり。生まれて初めての食べ方だが、いやはやそれがまたもや申し訳ないほどうまいのなんの。我が人生で今まで食べてきた生牡蠣の全てを、あらためてこのシングルモルトがけで食い直してみたい、と思うほどの衝撃的なうまさであった。」
椎名誠「シングルモルトウイスキーの旅」

(2017年9月)

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