■最高裁による逆転判決
昨日(平成27年4月9日),最高裁で,民事事件の逆転判決が出されました。
事件の概要は,小学生の子供がサッカーボールを蹴った結果,道路にボールが転がりだし,通行中の高齢者がそれを避けようとして転倒・負傷し,その後死亡したというものです。
そのため,高齢者のご遺族が原告となって,子供とそのご両親を被告として(※1),損害賠償請求(※2)を求めました。
そして,本件との関係で最も問題となった争点の1つは,ご両親が子供の監督義務を怠っていたのか(ご両親がちゃんと子供を監督していたと言えるか)という点でした。
本件について,大阪地裁(※3)と大阪高裁(※4)は,ご両親に対し,民法714条に基づく責任を認めていました。
しかし,最高裁は大阪高裁の判断は認めることができないとして,大阪高裁の判決を破棄した上,ご遺族の請求を棄却しました。つまり,最高裁は,ご両親には法律上の責任はないと判断しました。
拙稿は,今回の最高裁判決や,そもそもの法律の考え方について,簡単な解説を行うことを目的としています。
ちなみに,本件に関する大手新聞社の記事も,非常に大雑把な解説を行っていることが多く,誤解を招きやすそうな内容となっていますので,ご注意ください。
■今回の判決は親の監督責任に関する一般論を新たに全面的に示したものではないと考えられます
まず,1つ目のポイントはこれです。
確かに,上述のとおり,最高裁はご両親の責任を否定し,民法714条に基づく損害賠償請求を棄却しました。
ですが,判決文からすると,今回の最高裁判決は,民法714条に関する一般的な法律解釈を新たに全面的に示したわけでない(いわゆる法理判例を全く新たに示したわけではない)と考えられます。
あくまで,最高裁は,《今回の事件に関する》判断を基本に据えた判決を示したと考えられます(※5)。
専門用語で言うと,今回の判決は場合判例,または事例判例(※6)と思われます。
ですから,今回の判決について真摯な解説や言及をするのであれば,事件の詳細な事実関係をできる限り前提にする必要があります。ところが,大手新聞社の記事は,この点を見落としがちです。
また,そもそも,本件では子供は事件当時11歳1ヶ月で,責任能力がなかったということが前提となっています。つまり,最高裁は,未成年全般を対象とした一般的な判断を示した訳でもありません。
専門的な話になりますが,責任能力の有無は,子供によってそれぞれ異なると伝統的に考えられていますので(※7),同じ11歳1ヶ月であったとしても,子供に責任能力が認められることはあります。子供に責任能力が認められた場合は,民法714条ではなく,端的に民法709条の問題になります。
この点については,気力・体力・時間があれば(笑),簡単に説明したいと思います。
ここまでの文章を書いただけで疲れてきました……(笑)。
つづく……?