【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第2期編②】
前回:
SHO+XENONです。
トウカイテイオーを主人公とした天才が成功を掴み取っていく物語、第2期。しかし天才トウカイテイオーの競技人生は、決して順風満帆なものではなかった……! そんなあらすじがぎゅっと詰まっているような第1話でしたがいかがでしたでしょうか?
第2話に予想されるのは、牙を剥く運命。第1期では第7話になって襲いかかってきた運命が、早くも襲いかかってくる……。そんな気がしませんか? そんな怒涛の物語を追いかけてみましょう。
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Ep.2-1 冒頭
トレーナーとトウカイテイオーは病院の診察室にいました。何ともないと言い張るトウカイテイオーですが、トレーナーは前回のラストで感じた脚の異常をどうしても見過ごせませんでした。早く菊花賞に向けてトレーニングを再開したいトウカイテイオーに、医者は現実を突きつけました。
「折れてます」
「レース復帰は来年になるでしょう」
「入院してください」
「ええええええええええええええ!!?」
トウカイテイオー渾身の顔芸。
やだやだやだやだ……!と騒ぐトウカイテイオーに、痛み止めの注射が打たれました。
そして、本シリーズ初のOP・『ユメヲカケル!』が。
Ep.2-2 諦めない
「今なんつった!?」
「だから、菊花賞出るってば!!」
トウカイテイオーは駄々をこねていました。全治6ヶ月、それでも夢を諦める気は毛頭ありません。その意思の強さは、単に現実を受け入れない子供染みたワガママでもあり、同時に自分の走る意味を賭けた壮絶な決意でもありました。
前期もそうでしたが、こういう時にトレーナーは弱いのです。トレーナーにとっては自分の意見や自分のやりたいことよりさらに、本人の希望が最優先なのです。そんなトレーナーは、最大限の努力でプランを練ることにしました。
街(渋谷?)では巨大なスクリーンに「トウカイテイオー骨折。全治6ヶ月、菊花賞は絶望的か?」とテロップが踊っていました。キタサンブラックが驚き、ながらで髪を切ってしまう美容師さんはそれを見て泣き出し、チームメイト達は不安な顔。街中で噂が聞こえる中、トレーナーは本屋で大量の本を買い込んでいました。それはリハビリ、栄養学、スポーツ科学、スポーツ医学…………。そういったトウカイテイオーの復帰に向けての参考書籍の数々でした。今は6月、菊花賞は11月。「全治6ヶ月」の壁を破るため、トレーナーの挑戦が始まりました。
そして、早くも復帰してきたトウカイテイオーに、トレーナーはとんでもない分厚さの復帰プランを示しました。あの本を読み込み、しっかり作ってくるあたり、このトレーナーはただテキトーなわけではありません。
「トレーナーさん、本気で言ってますの?」
メジロマックイーンが心配そうですが、トレーナーは本気だと言い切ります。
「テイオーが諦めない限り全力で支える、そう決めちまったからな」
「ボク諦めないよ!菊花賞でレースに復帰する!」
二人の決意は固いものでした。
そんなトレーナーも、トウカイテイオーに一つの約束をさせます。
「ギリギリまで粘る。だが、その時に医者に止められたら諦めるしかないからな」
そんなやりとりに感動し、涙を流しながらサポートを約束するゴールドシップ。夢を叶えて欲しいとスペシャルウィーク。
そこまで言われたら仕方ないとメジロマックイーン。「諦めたらそこで……」まで言いかけるダイワスカーレット、珍しく息が合わず割り込む形のウオッカ。早速、菊花賞への道が始まります。
スピカのメンバーが練習のために集まった学園内のレース場では、それを遠目にシンボリルドルフも見ていました。そこにグラスワンダーがやってきます。グラスワンダーも、第1期で描かれていたように、かつて大怪我を克服してレースに復帰した経験があります。
「これからは自分との戦いになるだろうな。お前がそうだったように」
シンボリルドルフもグラスワンダーも、トウカイテイオーの復帰を心から期待していました。
チームメイトが走る姿をじっと見つめるトウカイテイオー。「これはどういうトレーニングですの?」と訊ねるメジロマックイーンに、「イメージトレーニングだって」と答えるトウカイテイオー。
「復帰のイメージを持つことだ。
他の奴が走っているところを見て、自分ならどうするかを常に考えろ」
例えば相手がスペシャルウィークとゴールドシップなら……。トウカイテイオーは先行し、良いポジションを譲らない。二人共後で追い上げてくるので、その圧を感じながら、最後まで背中を見せ続ける……。そんな展開を思い描きます。
「なら、私の走る様も、しっかりご覧くださいませ。
イメージでも追いつけないと思いますが」
メジロマックイーンはそう言うと、自分の走る姿をトウカイテイオーに見せつけるべく向かっていきました。
ウオッカは自分のダンベルを、ダイワスカーレットはアロマ用の器具一式、ゴールドシップはセグウェイ「ゴルシちゃん号」をそれぞれ持ち寄ってきます。そしてスペシャルウィークは、「夜、お部屋に行っても良いですか?」と。何をするんでしょうか?
それは、今はアメリカにいる、それこそ(比喩ではなく)死ぬような大怪我から復帰した大先輩・サイレンススズカからのアドバイスを通話でもらうめでした。
「良かった、思ったより元気そうで」
サイレンススズカは、トウカイテイオーが落ち込んでいたり、怪我が想像以上の深刻さだったらどうしようかと思っていたようです。一方でサイレンススズカも少し痩せたようです。「もっとニンジン送りましょうか?」というスペシャルウィークにはすかさず「もう充分よ」と返していました。
「次は菊花賞? かなりキツいリハビリになると思うわ。覚悟はできてる?」
「一番大切なことは、無理しすぎないこと。焦って先に進もうとすると、別のところを傷めることになるわ」
「しっかり休むことも大切なリハビリよ。それに、休んでる間にできることもあるわ」
そうサイレンススズカに勧められたトウカイテイオーは、翌日から早速実践し始めました。
元気なトウカイテイオーからはあまりイメージできない、図書館で読書する姿を目の当たりにして驚くメジロマックイーンとゴールドシップ。休んでいる間にできることとは、レース場や走り方、様々なデータの研究・勉強でした。トウカイテイオーはこういうところは本当に真面目で、自分の才能に胡座をかくようなことはしません。その姿にゴールドシップも張り切り始めます。
一方、チーム・カノープスの部室では、ナイスネイチャが菊花賞への出走を希望していました。諦めないトウカイテイオーの姿に感化され、「無理かも知れないけど」と思いながらも、まだ手の届かないGIへの出走を目指すことにしたようです。
松葉杖を突きながら歩くトウカイテイオーの元に黒塗りの車が停まりました。そこに乗っていたのはメジロマックイーン。トウカイテイオーはそのまま車に乗せられ……。
「何? なになになになに…………何??」
目つきや顔つき的に、この中に寄生獣のパラサイトが混ざっていないか心配になります。
メジロマックイーンは、メジロ家お抱えの理学療法士、鍼灸師、シェフ、パティシエなどを総動員し、メジロマックイーンなりのサポートをしようとしているようです。さらに、
「主治医です」
何が起こったかさっぱりわからないまま、トウカイテイオーには本回2度目のお注射がブスリ。
Ep.2-3 菊花賞に指をかけて
メジロ家お抱えの主治医の治療が的確だったのか、早くもギプスが取れたトウカイテイオー。サポーターもすぐに取ると息巻きます。
走るチームメイトの横を、ゆっくりゆっくり歩くトウカイテイオー。トレーナーは走りたい欲望をエネルギーに変えろ、その脚に走るための脚だと思い出させろと檄を飛ばします。
それを心配そうに見つめるスペシャルウィークを、ゴールドシップが嗜め、メジロマックイーンが「私達にできることは、走る背中を見せ続けること」と諭します。そのやりとりでテンションが上がったのか、ダイワスカーレットが、つられてウオッカが、スパートをかけ始めます。
それを見たトウカイテイオー、「ボクも思い切り走りたい!」という気持ちがどんどん大きくなっていきます。無情にも過ぎゆく日々に焦りつつも、一歩ずつ、トウカイテイオーは目標に向かって行きます。
食堂で一人カツ丼を頬張るトウカイテイオーの元に、「ここいい?」とナイスネイチャがやってきます。この二人の「違うクラスの友達」感は良いですね。
回復は順調に進んでいるとトウカイテイオー。一方のナイスネイチャは菊花賞に向けて怒涛の3連勝。きちんと有言実行するあたり、ナイスネイチャも只者ではありません。
そこに現れたカノープスの新メンバー・イクノディクタス。また面白い子が入ってきたようです。
ナイスネイチャは次にトライアルレースに出るようです。そして、菊花賞でトウカイテイオーと戦い、勝つ。それがナイスネイチャの目標でした。それを聞いてトウカイテイオーもますます闘志を燃やします。
トウカイテイオーが部室に戻ってくると、何やら揉めている様子。そこではチームメイト達がトウカイテイオーのためのスペシャルドリンクの材料を話し合っていました。
「牛乳はマストだろ?カルシウムが必要だ」というウオッカ。
「オレンジ!ビタミンC!」とダイワスカーレット。
「ハチミツも必要ですわ」とメジロマックイーン。
「ニンジン!ニンジン!!」とスペシャルウィーク。
「スタミナを上げるニンニクを……」とゴールドシップ。
「ボクの意見も聞いてよね」と不満そうなことを言いながらも、喜んだ様子のトウカイテイオー。このチームの友情は本当に素晴らしいですね。
余談なんですが、メジロマックイーンが「ハチミツ」をチョイスしているところがエモいなぁと思うのです。スイーツ好きという意味でのチョイスとも思えますが、トウカイテイオーのハチミツ好きをちゃんと知っていて、それを反映させようとしているようにも思えます。その辺が実にエモいです。
しかし、現実は非情でした。
どれだけ本人が努力しようと、どれだけ周囲がサポートしようと、全ての夢や努力が結実するわけではありません。一生懸命トレーニングをするナイスネイチャ(とイクノディクタス)の姿を、トウカイテイオーは寂しそうに見つめていました。
トウカイテイオーがとぼとぼとトレーナー室に向かうと、そこにはPCに向かい、栄養ドリンクで目をこじ開けながらも必死に打開策を探すトレーナーがいました。
自分のために必死になってくれるトレーナーの姿を見て、トウカイテイオーはいつもの調子を崩さないように努めながら、入室しました。
「約束、守らなきゃね」
それは、タイムリミットが来た、諦めを選択する時が来たことを示していました。ですが、今度はトレーナーの方が、それを拒絶していました。
「まだ諦めるのは早い!
何かきっと方法があるはずだ!
テイオー、俺が絶対お前を、無敗の三冠ウマ娘にしてみせる」
それに対するトウカイテイオーの答えは、「もういい」でした。
全力で走れない今の状態で出走しても全力の皆とは戦えません。それは現実的にというだけでなく、きっとトウカイテイオーのランナーとしてのプライドもあったのでしょう。
弱々しくながら笑うトウカイテイオーと対照的に、悔しそうに「すまん……」とだけ漏らすトレーナーに、一つだけお願いをしました。
Ep.2-4 自分がいない菊の花の舞台
そのお願いとは、「菊花賞につれて行って欲しい」でした。寂しそうにターフを見つめるトウカイテイオーに気を利かせ、「なんか食うか?奢ってやるよ」とトレーナー。トウカイテイオーは無遠慮に色々頼みますが、トレーナーもその心中を慮ってか、一度は難色を示しつつも「待ってろ」と買いに行ってくれました。二人のお互いへの信頼感が伺えます。
その様子を見下ろすシンボリルドルフに、グラスワンダーが訊ねます。
「声、かけないんですか?」
「必要ない。テイオーはこんなところで止まるウマ娘じゃないさ」
そう言うシンボリルドルフですが、グラスワンダーはすでに心中を見抜いていました。
「本当は、掛ける言葉が見つからないのではありませんか?」
「手厳しいな」
そう笑いつつ、グラスワンダーの言葉を肯定しました。
「……そのとおりだ」
菊の舞台には、トライアルレースでも勝ち上がってきた4連勝中のナイスネイチャの姿もありました。
いよいよ、トウカイテイオー抜きの菊花賞が始まってしまいました。皆がそれを見ていました。
もし自分が出ていたら……。トウカイテイオーは中段につく。横にはリオナタール、後ろにはナイスネイチャ。そしてコーナーで先頭に立つ……。そんなイメージを浮かべるも、現実では自分はそこにはいない。トウカイテイオーの目からは涙が溢れます。それを見たシンボリルドルフは腕を強く組み、戻ってきたトレーナーも気を利かせて一旦離れます。
ですが、現実のレースもまた壮絶でした。誰もがトウカイテイオーの姿をそこに想像しているからこそ、出走者達もそれを払拭しようとしていました。
「言わせない言わせない言わせない言わせない!
テイオーが出ていればなんて、絶対に言わせない!」
トウカイテイオーの姿をどれだけ求められていようが、彼女達もまた勝利を目指して走っているのです。誰一人として負けるつもりでレースに挑んでなどいません。その走りを見て、その想いを感じて、観戦していたトウカイテイオーさえも思わず声援を送ってしまうほど。
そして菊花賞が終わりました。勝者はリオナタール。ナイスネイチャは4着。勝てなかった悔しさと、恐らくはトウカイテイオーと走りたかった無念から、泣きながら大声をあげます。全力で戦った者だけに許される想いなのかも知れません。
「ズルいよ皆、カッコよくなっちゃってさ」
ターフを見つめて呟くトウカイテイオーに、「遅くなってすまん」とトレーナーが声をかけます。トウカイテイオーもその気遣いを分かったのでしょう、「えへへ、ありがとっ!」と笑顔を見せます。
帰りの新幹線の車中。トウカイテイオーはまた前を向いていました。
「ボク、気付いたことがあるんだよね。
三冠は叶わなかった。でも、ボク負けてないんだ。
無敗のウマ娘にはなれる。でしょ?」
まだ折れるには早い。新しい目標を掲げ、トレーナーとトウカイテイオー、再び二人三脚で歩き出すことを誓います。そこでED曲『木漏れ日のエール』が流れてきて、今回はここまで。
Ep.2・総評
2話にしてトウカイテイオーをこんなボロボロ泣かすとか、原作者は何考えてるんだ!とクレームを入れたくなるような、壮絶な話でした。
いきなり夢が叶わない現実を突きつけられます。しかしトウカイテイオーは、多少の妥協を孕みながらも、また新しい夢を掲げます。夢が潰えない限り自分が折れない、そういう強い想いを感じさせます。
次の話ではまたきっと這い上がってきて、圧倒的な強さを見せつけてくれるのだろう、そんな期待が持てる第2話でした。
余談・鉄オタ談義
最後のシーンで二人が乗っているのは、ライトの位置から考えて、東海道新幹線N700系電車と思われます。
「N700」のロゴがない(描写上たぶんあるとそれはそれで問題)、先頭車のドアが足りない、窓が少々大きいなどの違いはありますが、それらはミスなどの類ではなく、描写上の問題だと思われます。
ちなみにこのN700系、最高時速300kmでの走行が可能なばかりでなく、日本の新幹線では異常とも言えるほどの、通勤電車に匹敵する猛烈な加速力と、最高速度を維持したままカーブを曲がれる性能を持った超高性能車両で、運転上の最高速度アップをしていないにもかかわらず、これらの性能を活かしたことで東京~新大阪駅間を3分縮めてしまったそうです。筆者の大好きな車両でもあります。
ではまた次回お会いしましょう。SHO+XENONでした。