【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第1期編⑩】
SHO+XENONです。
前回:
さて、前回で覚醒を果たしたスペシャルウィークとサイレンススズカ。さらにチーム・スピカとしてもこれまでより大きく、それでいて具体的な目標ができました。また同時により大きな相手が現れ、最後の勝負でぶつかることになるだろうことが予想されます。ここからは主人公たちによる快進撃が続くのでは? という予測ができますが、果たしてどうなることやら? それでは第10R見ていきましょう。
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第10R①・冒頭
覚醒を果たしたスペシャルウィークは、エルコンドルパサーの無念も胸に、完全復活を果たしていました。トレーニングでもウオッカも驚くパフォーマンスを見せます。いつもより走り、いつもより筋トレし、いつもより食べる。一回り身体も大きくなって、秋を占うGIIレース・京都大賞典に挑みます。
あれ?お腹出てる……?
この京都大賞典には、チーム・リギルからはテイエムオペラオーが出ていました(史実でも出ています)。テイエムオペラオーを撃破すれば、チーム・スピカのドリームトロフィー出場の夢も実現に向けて一歩近付きます。テイエムオペラオーはスペシャルウィークを徹底マークする戦術に打って出ます。
が、結果は7着惨敗。「マークする相手を間違えた」テイエムオペラオーが3着に入ったことでリギルに先着することも叶いませんでした。
第10R②・休養!
エルコンドルパサーが帰国します。チームメイト達に挨拶を済ませると、早速親友・スペシャルウィークを見つけて絡みに行きます。
「7着でも気を落とさないでね!」
「調子が悪い日は誰だってありマース!」
「ダメな時はダメデスネー!」
「あれ? 前より大きくなって……」
悪気のない言葉の刃がスペシャルウィークにザクザクと刺さります。「エル、スペちゃんをめった刺しにするのやめなさい」と、グラスワンダーに回収されていきました。
負けたことを気にしても仕方ありません。チーム・スピカのメンバー達もどうも気合が空回り気味。また、スペシャルウィークの敗因は「隠れてやっていたトレーニング」だと看破したトレーナーは、チームメンバー全員に休養を言い渡し、同時にスペシャルウィークを実家に帰します。
久しぶりの故郷。スペシャルウィークは列車を降ります。OP映像でも流れているこの列車はキハ40系というディーゼル駆動の気動車。スペシャルウィークが乗ってきた路線と思われる日高本線で現在も使用されています。
田高門別駅ではお母ちゃんが待っていました。現実における元ネタであろう日高門別駅と比べると、さらに田舎の小さな駅といった趣。
走ると言うスペシャルウィークを無理矢理助手席に乗せ、お母ちゃんはトラックを走らせます。「トレーナーとグル」なお母ちゃんに走るのを禁止され、スペシャルウィークは方言丸出しで子供のように駄々をこねます。親の前では一人の子供になってしまいますね。この純朴さが、スペシャルウィークの魅力の一つです。
メジロマックイーンは、メジロライアン、メジロドーベルと揃って優雅な食事を楽しんでいました。メジロ家が揃い踏みになるのは本当に久々のことのようです(この時点ではメジロパーマーが実装されていませんでしたので、第2期も終わった現在なら4人で揃い踏みとなることでしょうが)。
「コンディションを整えることは、案外難しいものです。
休養明けには、メジロ家とチーム・スピカの名に恥じないレースを……」
メジロマックイーンは言いかけて言葉を止めます。不思議そうな顔でメジロライアンとメジロドーベルが見ていたことに気付いたためです。
「マックイーン、変わったね」
「この前まで『騒々しくてかないませんわ』って言ってたのに」
そう言われたマックイーンは微笑んで答えます。
「変化が良い結果を産むことがあると、私は思い知らされましたから」
しかし、メジロドーベルに「ついでにスイーツのこととなると我を忘れるところ、変わればいいわね」とツッコまれて、顔を真っ赤にしてしまいました。仲が良いですね。
トウカイテイオーが歌って踊るカラオケ店の一室にシンボリルドルフが現れました。落ち込んでいるような文面のチャットが送られてきて心配になって来てみたようです。
まんまと乗せられた会長でしたが、トウカイテイオーはどうしてもシンボリルドルフに、頑張って覚えたシンボリルドルフの持ち曲「SEVEN」の成果を見てほしかったようです。まるで成長を喜ぶ父親の顔をした後、仕方なさそうに言います。「1曲だけだぞ。」なんだかんだで優しいですよね会長。そして、トウカイテイオーのことはやっぱり可愛くて仕方ないことが伺えます。
ショッピングモールにはウオッカとダイワスカーレットの姿が。
レース用の靴を見ているウオッカに、「私はお洒落な服が選びたいの」とダイワスカーレット。いつもどおり喧嘩が始まりそうになった時に、ふと何かが目に入ります。
そこにいたのは、ビワハヤヒデとナリタブライアンの姉妹でした(史実の二頭は母親が同じ異父兄弟)。どうやらナリタブライアンから誘ったようで、「いつか姉貴と走る時のことを考えておきたくて」「互いの手の内を知る相手に勝ってこそ、真の強者と言えるんじゃないか」と考えてのことだったようです。姉の靴選びを見ておこうと思ったのでしょうか。
ビワハヤヒデも「同感だ。今から未来の勝負のために準備をするのも、悪くない」と返します。それを「相変わらず頭でっかちな言い回しだな」と評すると、「誰の頭がでかいって!?」とビワハヤヒデは怒り出します(史実のビワハヤヒデは顔が長い馬で有名で、今後もしばしばこのネタが出てきます)。
このやりとりに感化されたダイワスカーレットとウオッカはお互いの顔を見やります。そして、恐らくは同じことを考え、「フン」とそっぽを向くと、それぞれがそれぞれの靴を選びました。なんだかんだでこの二人は、お互いのことをちゃんと理解し合えているように思えます。だからこそ余計に気に入らないのかも知れませんが(笑)。
休養を言い渡された後も、サイレンススズカは走っていました。そこに息を切らしてトレーナーが走ってきました。トレーナーが持ってきた情報は、「サイレンススズカの復帰レースが決まった」ことでした。その場にいたゴールドシップも大喜び。多くの人にとってサイレンススズカを最後に目にした沈黙の日曜日の、来るはずのなかったその次の日がやってくることになったのです。
まだ正式発表していないからと口止めするも、ゴールドシップは早速これを広めるために走っていってしまいました。それに呆れながらも、トレーナーもサイレンススズカも、レースに向けて気持ちを新たにするのでした。
その頃スペシャルウィークは、走らせて貰えなくて拗ねていました。
お母ちゃんはスペシャルウィークの大好物であるニンジンハンバーグを作ってくれていました。ニンジンハンバーグってなんだろうと思ったら、なんとも豪快!
呼んでも来ないスペシャルウィーク。探してみると、仏壇の前にいました。仏壇には大量の手紙とファイル。スペシャルウィークから届いた手紙は全てもうひとりのお母ちゃんと一緒に読んでいたのです。そしてファイルには、娘に関わるあらゆる記事がスクラップされていました。一つ残らず、全部。そして、送り出す時にお母ちゃんが手作りした、「めざせ日本一 スペシャルウィーク」のボードまで。
「あの時は子供だったけど、よく頑張ってきたね」
二人の母親のぬくもりを感じて機嫌を直したスペシャルウィークは、大好きな母の作った大好物を食べるために立ち上がりました。腰紐の存在をうっかり忘れたまま……。
第10R③・スピカ絶好調
スペシャルウィークの耳にもサイレンススズカ復帰の報が届きます。スペシャルウィークが出走するジャパンカップの前日、いよいよサイレンススズカが復帰するのです。すでにポスターもありますね。
トウカイテイオーも、ウオッカも、ダイワスカーレットも、メジロマックイーンも、そしてゴールドシップも、皆良い結果を残しています。この勢いに乗じてサイレンススズカも華麗な復活を遂げたいところです。スペシャルウィークも勝っていきたいですね。
ところで、余談ですがこの時の1カット。
……耳?
スペシャルウィークは一人、夜の山の草原に寝転びます。懐かしい完食に浸りながら、サイレンススズカの復帰を喜んでいました。そこにお母ちゃんがやってきて隣に座ります。
「あのね、お星様もキレイだけど、1着取った後に見えるペンライトの光も、とってもキレイなんだよ」
「じゃあ、また見られるように」
そう言ってお母ちゃんは木箱を差し出しました。木箱の中に入っていたのは、「目指せ日本一」と刻まれた蹄鉄。なんとお母ちゃんの手作りです。
「使ってくれるかい?」というお母ちゃんに、「絶対次の天皇賞で使う!」と返事。
「私嬉しい。嬉しいの。二人のお母ちゃんの子で」
「あたしもスペのお母ちゃんで嬉しいよ」
「私、この蹄鉄で日本一になる!」
「じゃあ、それで走っておいで」
夜の草原をスペシャルウィークは走っていきました。
さて、学園に帰ってきたスペシャルウィークですが、色々と初心に返ったよう。張り切りすぎてズッコケてしまいます。しかし良いリフレッシュの後はいよいよ天皇賞です。完璧に仕上げていくぞというトレーナーに、ズッコケた体勢のままながら、「はい!」と良い返事をしました。
坂道トレーニング、トウカイテイオーやメジロマックイーンとの並走トレーニング、ウオッカを乗せたタイヤを引いた筋肉トレーニング、ダイワスカーレットとのダッシュ……。これらをこなし、スペシャルウィークは徐々に良い顔になってきました。
夜、同室のサイレンススズカに、早速お母ちゃんの蹄鉄を打った靴を見せています。「目指せ日本一」、スペシャルウィークがチームに入ってきた時に掲げていた目標でした。
「あの時はただ、お母ちゃんを喜ばせたかっただけで」
「今は違うの?」
スペシャルウィークの言葉にサイレンススズカは不思議に思って聞き返します。
「今もお母ちゃんには喜んでもらいたいです!
そしてトレーナーさんにも、チームの皆にも喜んでもらいたいです。
でも何よりも……」
スペシャルウィークは向き直ってサイレンススズカに告げます。
「私はスズカさんに喜んでもらいたいです」
「スズカさんと勝負して、スズカさんに勝ちます」
「私はスズカさんの背中を見るだけじゃなくて、隣にいたいですから」
それを聞いたサイレンススズカも嬉しそうに返します。
「復帰戦に勝って、重賞レースにも勝って、今度こそアメリカに行く。諦めない。一度見た夢だから。世界中の人に夢を与えるウマ娘になる」
「私の夢が叶った時はスペちゃん、ライバルとして決着をつけましょう」
第10R④・天皇賞秋
天皇賞秋、東京レース場にて行われる、芝2,000mのGIレース。前年サイレンススズカに悲劇が起こったあのレースです。いよいよスペシャルウィークは出走します。競走相手となるのは、これまで何度も競い続けてきたセイウンスカイやキングヘイロー。
セイウンスカイがゲートインを嫌がっています。スペシャルウィークの体重はもうダービーの時と同じところまで戻していて、まさにベストな状況。
しかし、そこにサイレンススズカはいません。サイレンススズカが来ないのは「ライバルだから」です。
そして、いよいよスタート! 同時にサイレンススズカも走り出しました。別々のところで、ライバル同士がレースを始めたのです。
キングヘイローもセイウンスカイも、ライバルたちの様子を伺います。サイレンススズカも、その場に見えないライバルの動向を伺います。サイレンススズカの目には確かに、後ろから様子をうかがうスペシャルウィークの姿が見えました。
第4コーナーを回り、セイウンスカイ達もペースを上げていきます。スペシャルウィークは走りにくそうですが、スペシャルウィークにはお母ちゃんの蹄鉄と、そしてこの言葉があります。
「思い切り走っておいで」
「思いっきり、走る!」
やはりトップ3はこの3人。
スペシャルウィークには、ダービーで勝った記憶もありますが、皐月賞や菊花賞、ジャパンカップでの敗北の苦い思い出があります。サイレンススズカも挫けています。何度負けても、どれだけ挫けても、勝ちたい! その気持ちが、離れた所にいるサイレンススズカとスペシャルウィークの間でリンクしました。
そして、スペシャルウィークが先頭でゴールインしました。離れた場所で走るサイレンススズカも、昨年走りきれなかった2000mを走りきりました。
観客もスペシャルウィークを祝福しています。エルコンドルパサーもグラスワンダーも、「私達も負けてられませんね。」画面の向こうでお母ちゃんも、その頑張りを労っていました。
セイウンスカイはより強くなったスペシャルウィークに困惑していますが、キングヘイローは笑みを浮かべながらむしろ彼女が強くなったことを喜んでいました。「ライバルが強い方が私も強くなりますから」と。セイウンスカイも「その通り」と笑いました。
息を切らしたスペシャルウィークとサイレンススズカが一度ずつ映って、今回はここまで。
第10R・総評
前回に続き「覚醒」、そしてさらに強くなっての勝利を描いた回でした。ここまで見てきた視聴者もスカッとした回だったのではないでしょうか。これは次回のさらに大きな成功が楽しみになりますね。しかし、ブロワイエの存在は今回は出てきませんでした。次回以降彼女がどう出てくるのか、それも見ものですね。
以上、SHO+XENONでした。また次回お会いしましょう。