約束
俺が22歳になったばかりの頃。ほんとに毎日が苦しかったのを覚えている。音楽とどれだけ向き合って真剣に曲を作ってもろくな曲ができない。部屋は狭いしお金もギリギリだし。寝てなかった。
曲が作れないという事は僕の人生でもっとも苦しい事であり、死ぬ理由としては十分すぎる。
俺よりうまく行ってお金を稼いで、夢にどんどん近づく仲間や他のアーティストが心底羨ましかったし、俺にはもう出来ないと思った。
自分が自分に寄せた期待や、夢。
行ってきた努力がその時の僕を苦しめた。
その日の事は詳しく覚えてない。
とりあえず夜だった。
モヤモヤする気持ちや、叫びそうな心をどうにかしたくて外に飛び出した。
深夜自転車に跨って俺は無心で多摩川沿いを飛ばす。
色んな事を考えた。
実は僕は21歳の時に命を断とうとした事がある。
その時僕は約48時間意識を失い、
それでも僕は目を覚まし22歳になった。
自転車に乗っていた22歳のあの夜も”その日”の事をよく思い出していた。
「今の僕ではきっと死ねないんだ。」
「神様が僕を殺してくれない」と強く思った。
そしてその時誰かが言ってた言葉を思い出す。
「死神は意地悪だから死にたい人の命は奪わない。
生きたくて生きたくて、必死に生きる人の命を奪う」って。
ほんとに意地悪だと思った。同時に涙が溢れて止まらなかった。
だから僕は自転車で大師橋を越えた時、
神様に1つ約束をした。
“僕はこれから必死に生きます。生きていてよかったと思わせてください。
誰がなんと言おうと俺はよくやったと胸を張って言えるようにしてください。
必ず幸せにして自分の事を自分で誰よりも褒めちぎらせてください。生きたい。生きたいと思わせてください。そう思えたその瞬間に僕の命を奪ってくれてもかまいません。だから僕をそれまでそこで見ていてください。”
と。
2022年8月。WWWでワンマンをした。
チケットは即完で満員のお客さん。
この景色を僕と僕の仲間はいつか見れると信じていた。
「しょうたろうならやれる。」
そう仲間が言ってくれた。
俺ですら俺を信じれなかった日も仲間が俺を信じてくれていた。
でもその小さな憧れが現実になったその日、
ステージ裏にその仲間はいなかった。
俺は1人でスーツケースからNamachekoのズボンを取り出して履き替える。昔仲間からもらったジャケットを真っ白のTシャツの上に着た。
涙が溢れてきた。
ひどく寂しかった。
今思うとあの時が引き返せる最後だった。
あの時に僕が全てを投げ出して家に帰っていれば
全く違う日々が待っていただろう。
でも俺はステージに向かった。
だって神様に約束したから。
でもその時に思ったんだ。
心残りとかではなくただ、単純に思ったんだ。
「みんなは今どこにいるんだろう。」
「何をしているんだろう」
「また会えるのだろうか」
僕はそんな事を考えながらステージへ歩いた。
2022年10月30日にWWW Xでワンマンをした2日後の11月1日に僕は東京にきて初めての引っ越しをした。
ずっとお金を稼いだら引っ越しをしてスタジオを作りたかったからそれを行動に移したんだ。
東京にきて5年近く住んだ家を離れるのはすごく寂しくて引っ越した瞬間に今までで1番東京を感じたと言っても過言ではない。
新しい家。何もない部屋。
コンクリートが剥き出しの地下室。
俺は俺にとっての新しいスタートを切った。