深夜高速
SCRAPが完成し、MapのMVを撮る事になった。
その撮影の為のロケハンに監督やプロデューサーと
向かった深夜。
その車の中で2人にリリース前のSCRAPを聞いてもらった。
Years&Yearsから始まってOil。エレキが流れてskitの後にMapそして流したミシン。
この日車の中で聞いたミシンが一番よかった気がする。お世辞でも褒めてくれるプロデューサーの声が心地よかったし、冬が好きだから暖房をつけた車内でも感じる外の冷たい風が気持ちよかった。
ミシンを作って本当に良かったと思った。
実はこの曲は誰にも言ってないが望遠鏡の続きを作るつもりで書いた。
似たBPMに同じキー。同じ声の高さで僕は歌う。
だから本当なら同じような曲になるはずだったし
なって欲しかった。
でもならなかった。
それはきっとあの時の僕とは違うから。
君が最後の最後まで僕が僕でいれるように繋ぎ止めて縫い合わせてくれてたんだろう。
「もう僕ではないけど、そんな事君には言えない」
Orionを書いた時から感じてた。
こんな未来を危惧していた。
たくさん考えた。
僕は本当にたくさん考えた。
SCRAPは誰もいない砂漠に不時着してしまった飛行機を1人で修理するEPだ。
僕は鉄屑になってしまった飛行機を一人で修理しながらたくさん考える。
もしこの飛行機が直らなかったらどうしようか。
飛行機を直すまで僕は絶対に諦めてはならないのか。
僕はここで死ぬのか。
壊れた飛行機に無理やりオイルを注ぎ入れ煙をあげながら不恰好にも空を飛ぶべきなのか。
それとももしかすると本当のゴールとはこの壊れた飛行機を今ここに置いて僕は僕の目的地へと歩き去らなければなないのか…
たくさん考えた。
本当にたくさん考えた。
でもその答えはでないまま
SCRAPは完成してしまった。
そしてリリース日を迎え
僕のSCRAPツアーも幕を開ける。
初めての地で声を絞る。
短い期間でSCRAPを聴き込んで来てくれた
みんなの姿が目に入る。
僕は答えの出ないSCRAPをPilotまで歌い上げる。
ツアー中何度も喉をつぶした。
その度に死ぬ気で調整し次に挑んだ。
でも本当は飛行機はまだ直らないし諦めだってつかない。
僕はきっとそこまで優秀なパイロットではない。
それでもたくさんの初めて会うファンの人の目を見て
僕は自分がshosenseiなんだと思い知る。
そして次の地方に向かう。オイルを注ぎ入れて仲間のクリエイターにたくさん指示をしてツアーを動かす。
たまに友達に飲みに行こうと誘われたりする。
行くわけがない。僕の飛行機はまだ直ってない。
すぐに11月は終わり、12月に入る。
例年より暖かいとはいえ寒い日も段々増えてきた。
ツアーは本当にあっという間で遂に東京ツアーファイナルの日が訪れる。
去年の4月に同じ東京で初めてやったワンマンの約10倍の人が入る広い会場。
でも朝会場入りしてみると思ったよりは大きくない。
僕はそんな自分の現在地を噛み締める。
でも本当の意味では広さは関係ないから
僕は本気でやる。
それに飛行機の修理だって
もう答えを見つけなきゃならない。
これで最後なんだ。
ライブが始まる。
人が入るとさっきより広く感じる会場は生き物のようでお客さん一人一人と目が合う。
季節外れの汗が目に染みてたまに視界がぼやける。
ぼやけた世界の中で
僕は自分がshosenseiなんだと思い出す
SCRAPを作ってよかった。
世に出してよかった。
本当にプライベートな作品で思ったより難解な仕上がりになってしまったが僕は満足してる。
僕はおそらく器用ではないからこれからも曲をたくさん書かないと自分の事がわからない。
これからも僕の気持ちはshosenseiが教えてくれる。
そしてみんながステージに立つ僕をshosenseiにしてくれる。
ずっと分からなかった飛行機の修理の話。
答えはきっと出た。
僕が予想した答えの全てと結果は違っていた。
なぜなら僕はステージでたしかに見たんだ。
顔を歪めながら汗を流しその瞬間を切り取ろうとライトのついた携帯を片手に僕を照らす1000人もの人達を
飛行機の修理はやめた。
12月は僕の誕生日とかクリスマスとか年末とか色々あるんだけどその先の話を僕なりに言葉にしようと思った。
最後になるけどEP「SCRAP」を楽しみに待ってくれてありがとう。
聞いてくれてありがとう。
チケットを買ってツアーに来てくれてありがとう。
僕ももう少し頑張ろうと思います。
良いお年を。