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君がくれた鍵



俺は鍵をいつも腰につけて外に出歩くんだけどその人がくれた鍵は車の鍵みたいに大きくて重たかった。
僕の鍵とセットにした君の鍵は腰に付けるだけでずしりと重量感がありキーチェーンを付けるズボンのベルトループが千切れないか心配する程だった。

でもその重たさが僕にとっての安心感になっていた。
鍵が二つ付いてキーホルダーも着いて重たくてごちゃごちゃしてるその鍵が僕は結構好きだった。



何度か喧嘩をした。些細な事であるがあまり詳細は書きたくない。僕らの秘密。


「会いたくないならそうやって言ってよ」って思う事がたくさんあった。

見たくない部分もたくさん見たし、
俺も見せるべきでない部分をたくさん見せた。
それでも明日は仕事がある君は眠りについた。



僕は外の道路工事の音が気になって眠れない。



小さなショベルカーがずっと動いてる。

働く大人の人達の声がかすかに聞こえてくる。



僕らは何を一体言い合っていたのだろう。
僕は眠りにつく君を残してトイレに逃げた。





最後の日の夜、僕はその人と朝まで泣きながら話をした。2人とも泣いていてもう何話してたかはあんまり覚えてない。


朝方なにも出来ない僕は望遠鏡を流した。

「やめて。ずるい」って泣きながら怒ってた。
でも最初のイントロが始まった瞬間彼女は動きをピタッと止めてそのまま崩れ落ちた。

“ああ2年後だって今日みたいにくだらない話を
2日後には忘れてるような話を”


そしたその時小さな朝日がカーテンから僕らを差した

ずっと矛盾してる僕と彼女はその瞬間を耐えられなくてつい額を合わせて支え合って泣いていた。

何がダメだったんだろう。
僕も彼女もきっと悪くない。

僕らはこうなりたかったわけじゃない。
あのままじゃいられなかったのか。


望遠鏡が終わり君も僕も泣き止んだ。

静かな朝が訪れる。

僕は腰につけてるキーチェーンから重たい君の鍵を取り外して玄関に置いた。
取り外すのに少し手こずり最初貰った時も取り付けるのに少し手こずった事を思い出す。

軽くなった僕の鍵は今までの重たい鍵が一体どれだけ僕を安心させてくれていたか教えてくれた。

扉を閉める時少し不安そうな君の顔が見えた。
きっと俺も同じ顔をしていただろう。


軽くなったはずなのに重たくなった足で僕は家に帰った。



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